宮内庁調査官が明かす「896の聖域」 天皇陵の真実

2010/11/27
「卑弥呼の墓では」との説がある箸墓古墳も陵墓に指定されている(奈良県桜井市)=共同

――宮内庁が指定している陵墓の被葬者には、考古学などの研究成果をもとに「間違っているのでは」「指定を見直さないのか」などの声が多い。

「現在の指定を覆すに足るだけの確固たる資料は無いと考えています。確証となり得るのは、内容がきちんと合致する文献か、ピンポイントで天皇陵を示している古絵図。考古資料では墓誌です。100%確実な資料が現れた段階で検討します」

「現在は基本資料や過去の諸説を収集し、将来に備えている段階です。まだ時間が必要でしょう」

――古墳から墓誌が見つかる可能性は低い。考古資料では指定を見直さないのか。

「墓誌以外の考古資料で被葬者が特定できた例があるのでしょうか。考古学は状況証拠の積み重ねです。いくつも重ねることで絞り込むことはできますが、100%か、それに近い精度でないと、新資料が現れるたびにやりなおすことになります」

――牽牛子塚古墳や今城塚古墳(大阪府)などは陵墓ではないが、「真の天皇陵」との説が研究者の間では強い。新たに陵墓参考地に指定する可能性はないのか。

「参考地の指定は、陵墓とするのに備えて現状を保全しておくのが目的です。主な古墳はすでに史跡として保全されており、新たな指定は必要ないと考えています」

――宮内庁には「もし指定が誤っていても、祭祀を執り行っているところに御霊が移ってくる」との考え方があると聞く。本当か。

「そんな考え方はしていません。研究者が著した本にそう書いてあるため調べたことがありますが、本当にそんな発言があったのか、確認できませんでした」

――陵墓のあり方には多様な意見がある。静安と尊厳を保ちつつ、広く公開し活用する可能性を探る方が、国民の広い理解と追慕尊崇を得られるのではないか。

「様々な考え方があるからこそ、慎重にならざるを得ません。私たちの役目は陵墓を現状のまま保全し、後世に伝えていくことです。発掘は破壊でもあります。調査は管理に必要な範囲で行うことにしています」

▼陵墓 歴代天皇や皇后、皇族を葬った陵(みささぎ)と墓(ぼ)、被葬者は特定できないが陵墓の可能性がある陵墓参考地などで、古墳以外に石塔などもある。位置や被葬者は幕末~明治初期に文献や伝承を手掛かりに指定された。当初は新資料の発見で修正した例もあるが、天皇陵の見直しは1889年以降はない。
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