子どもが歩かなくなっている?遊ぶ時間なく運動不足

2010/10/27

暮らしの知恵

子供が歩かなくなっている。習い事で多忙なため遊ぶ時間がない、学校の統廃合が相次ぎ、学校まで車で行かざるを得ないなど、地域によって理由は様々だ。子供は歩かないと、体力の低下だけでなく、生活習慣の乱れ、学力の低下などの要因となることがわかってきた。子供を歩かせようとする試みを追った。
歩数計を身につけ毎日1万歩を目指す(東京都荒川区の第三峡田小学校)

東京都荒川区にある区立第三峡田小学校。2時間目の授業が終わり休み時間に入ると子供たちが校舎の外に飛び出してきた。子供たちはそれぞれ、腰や足首に歩数計を付けている。「僕は今2591歩」「私はもう3432歩!」「あいつの方がもっとすごいよ。家が遠いから、いっぱい歩いてる」

同校では昨年から、年に2~3回「ミリオンウォーク」期間を設け、1日1万歩以上歩くよう促している。歩数計を持たない子供には学校が貸し出す。どれだけ歩いたかが数字で分かる歩数計は子供たちの歩く意欲づくりに役立っているようだ。「友達の家に遊びに行くとき、少し下の階でエレベーターを降りて階段を上ると、歩数が増える」と5年生の女子生徒。帰宅後、母親と一緒にウオーキングを始めたという4年生の女子生徒もいる。

この小学校では、外で遊ぶのが苦手な子供も運動できるよう、廊下にエアウオーカーやスポーツバイクなどの運動器具を設置した。「休み時間に教室にこもりがちな子供も、体を動かすようになった。今は朝礼でふらつくこともなく、きちんと整列できる。1時間目の授業の始めにぼーっとしている子供も減った」と大橋昭彦校長は手応えを感じている。

地方の方が深刻

子供を歩かせようという取り組みが広がっている。数値目標を掲げたのは東京都。今年7月、子供の体力を高めるには1日1万5000歩相当の活動が必要とのガイドラインを公表した。東京都によれば30年前に1日約2万7000歩あった子供の歩数はここ30年で半減し、今や約1万3000歩まで減った。来年度には一部の学校で歩数の実態調査に乗り出す計画だ。

なぜ子供は歩かなくなったのか。千葉大学教育学部の明石要一教授は、都会と地方では要因が異なると分析する。「都会の子供は放課後も習い事で忙しく時間がない。公園に行っても友達がいないので家にこもってしまう。一方、少子化・過疎化が進む地方では小中学校の統廃合が進み、子供たちは車で学校に通う。活動量の少なさは都心の子供よりもむしろ深刻」と指摘する。

親が無関心というわけではない。子供に運動が必要なことはわかっていても悩みがある。まず、治安への漠然とした不安感。「子供だけで、公園に遊びに行かせるのは怖い」。小学4年の男児と同1年の女児を育てる千葉県船橋市在住の男性(37)は打ち明ける。「市内で変質者が出ると、すぐに情報が回る。自由に遊ばせると、親の責任を果たせていないのではと思ってしまう。本当は寄り道をしたり、好き勝手に遊ばせたりしたいが……」とジレンマを抱える。

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