くらし&ハウス

エコロ家のおきて

腹式呼吸が教えてくれること

2010/10/30

空気のよいところでゆっくり腹式呼吸。秋の澄んだ空気は心地よい。

やっと涼しくなって、長袖1枚で出掛けられるようになりました。秋は過ごしやすい季節ナンバーワンのように思いますが、2人の息子が小さいころは、この季節に喘息(ぜんそく)の発作を起こし、夜中に救急にかけこんだりしました。入院したり、吸入器を使ったりするほどひどくはありませんでしたが、ちょうど今くらいの季節になってゼコゼコした息をし始めると、今年もか……と気が重くなったものです。

喘息の発作を起こして病院のお世話になったとき、腹式呼吸がよいという話を聞きました。1歳半くらいから秋口と春先に発作を起こす時期が長く続いた長男は、お医者さん主催のケーナ教室に通っていました。

ケーナは南米の楽器で、尺八と同じように木をくりぬいただけの単純な作りの笛です。そのため、しっかりと息を吹き込まないと音が出ないといわれています。安定して音を出すためには、腹式で呼吸しながら息を吹き込まなければなりません。喘息気味の子どもたちが腹式呼吸を覚えるのにちょうどよいと、近所のお医者さんにケーナ教室を勧められたのです。しばらく通っているうちに、ケーナの成果があがったのか、はたまた本人の体力がついてきたのか、次第に発作は起こらなくなりました。

次男は歌を通して腹式呼吸をマスター。こちらも、発作を起こしたり、息が荒くなったりすることの多い小学生時代を無事乗り越えました。「苦しくなったらおなかから息をするとおさまるんだよ」と教えてくれたことがあります。喘息の時だけでなく、運動をして息があがってしまったときも、意識して腹式呼吸をすることで、ゼイゼイとあがった息をおさめることができるそうです。

一方、私は一向に腹式呼吸が会得できず、歌うときも、喉(のど)をめいっぱい使ってしまうので、子どもたちと歌を数曲歌うと、声がしゃがれてしまいます。今や息子たちは腹式呼吸の私の師匠。「喉で歌うから、お母さんの声は小さいし安定しないんだよ。下がっちゃったり、ぐらぐらしたりするでしょう」と厳しく指導されています。

先日、聖路加国際病院理事長の日野原重明先生の講演会にうかがいました。日野原先生も腹式呼吸の効果を話されており、歌を歌うこと、特に大きく通る声を出すために腹式呼吸をすることは、健康にも良いと強調なさっていました。先生によると、「生きる」という言葉は「息をする」からきているそうで、息をするとは、息をしっかり吐くことなのだそうです。歌で声を出すことは、息をしっかり吐くことですから、そういう意味で、歌はお勧めなのでしょう。

リズムは「吐いて、吐いて、吐いて、吸う」くらいがよいのだとか。しっかり時間をかけて息を吐き出し、短く深く息を吸うということなのでしょう。日野原先生はそう言いながら、実際にメロディーをつけて発声をしてくださったのですが、私などは到底まねができないほど長く声を出されたので、びっくりしてしまいました。自分の呼吸がいかに浅いかを実感した一瞬でした。

日野原先生の長い発声に感服して以来、1日に何回か、おなかに手をあてて腹式呼吸を練習中。実際には息を吸い込んでおなかが膨れるというよりは、吸いこむときにわざとおなかを膨らませているような状態で「できている」からは程遠い状態です。少しずつでも深い呼吸をマスターできればと、試行錯誤を繰り返しています。深い呼吸をマスターすることで、血の巡りがよくなって健康になり、さらに、歌も上達して「はずれてる」と笑われずに楽しめれば、言うことなしですもんね。

(ナチュラルライフ研究家 佐光紀子)

「シンプル家事」や季節感のある食卓など、子どもと一緒に体験したい暮らしの工夫や、親子のコミュニケーションについてつづります。

筆者紹介

佐光紀子(さこう・のりこ)=翻訳家・ナチュラルライフ研究家。日本の暮らしに合った、無理のないエコライフを提案している。著書に「男の掃除」(日経BP)「重曹大事典」(ブロンズ新社)など。1961年生まれ。メーカー、証券勤務を経て現職。東京在住。家族は大学生の長男と高校を卒業した次男、中学生の長女と夫。

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