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アナログなのにデジタル凌ぐ 「マン・レイ」の優美な魔法

2010/8/30 日本経済新聞 電子版

写真編集ソフトなどのデジタル技術がなかった時代に、なぜ、こんなにすごい写真を生み出せたのか――。東京・六本木の国立新美術館で開催中の「マン・レイ展」(9月13日まで、その後大阪に巡回)に足を踏み入れると、アナログ写真の魔術師、マン・レイの前衛的な世界に圧倒される。出品作は写真を中心に、絵画、彫刻、デッサンなど約400点。現代のデジタル写真を凌(しの)ぐ華麗なテクニックに焦点をあててみよう。


篠山紀信ら日本人にも強いインパクト

まずはこの魔術師の紹介から――。マン・レイ(1890~1976年)は、篠山紀信、杉本博司、森村泰昌といった日本の代表的な写真家、美術家にも強い影響を与えたモダンアートの先駆者。米国で盟友マルセル・デュシャンとともに前衛芸術運動を巻き起こした後、1920年代から若い芸術家たちで活気づくパリに舞台を移し、モード写真家、肖像写真家として一世を風靡(ふうび)した。今回の展覧会には、そのころ撮影したピカソ、コクトー、ヘミングウェー、ストラヴィンスキーらの肖像写真も出品されている。


彼は旺盛な好奇心から、実験的な写真作品を次々に生み出し、芸術写真家としても名声を勝ち得ていく。展覧会に並ぶ美しい作品の数々は、いずれも「どうやって撮ったの」「これが写真?」と驚きを誘う。次ページから、その一端をのぞいてみよう。

All Man Ray Works 2010(C)Man Ray Trust


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