2人はまず、両替の仕組みを調べようとみずほ銀行に出かけた。「両替では手数料をいただいています」と応対した水村裕治さん(34)は話す。「店までの輸送費や万一に備えた保険料などが必要だからです」。同行は外国のお金を18種類用意し両替に応じている。取引の半分は米ドルだ。
両替の時に手数料がかかるのはトラベレックスジャパン(東京・港)など両替専門店も同じだった。「最近は円高が進んでいるし、外国との貿易で大金を扱う会社はもっと大変じゃないかしら」
1円動くと170億円
自動車会社のホンダに足を運んだ2人に鈴木真志さん(47)が答えてくれた。「円以外のお金を使う商売は全体の8割。1円円高・ドル安に進めば、会社の本業のもうけ(営業利益)は年間で170億円なくなります」。トヨタ自動車なら300億円、コマツは30億円減ることも分かった。
円安だと逆に利益が増えることもあるが、最初から通貨が同じなら為替の動きに頭を悩ませることもなくなる。「両替の多いドルと円を一緒にするとか、いくつかの国で同じ通貨になれば、利点がたくさんありそうだわ」。明日香は京都大教授の翁邦雄さん(59)に疑問をぶつけた。
しかし翁さんの答えは違った。「共通の通貨にすると、それを使う国は独自に金利を変えるような政策をとれなくなります」。各国の間でお金の価値を守るために足並みをそろえる必要があるためだ。これで苦しんでいるのがユーロを導入しているギリシャだ。
ギリシャは独自の通貨ドラクマを捨て、ドイツやフランスなどが使うユーロに切り替えた。ドラクマがあった一昔前なら、自国の経済が苦しい時に金利を下げお金がたくさん出回るようにしたり、政策的にドラクマをほかの通貨より安くして輸出を増やしたりすることが自国の責任と判断で可能だった。
ユーロではそれができない。もし日本が外国と共通の通貨を採用したとしても同じ問題が起こる。「ユーロみたいな共通の通貨をもつのは例外的なのかな」