「熱海の捜査官」(テレビ朝日系)ゆるい展開、これもまた楽しい

星崎「まとめましたね?」

雑誌の企画でテレビドラマについての座談会に参加した。出席者は、20代のモデル・Mさん、30代のイラストレーター・Nさん、そして、私だ。Nさんはおいしいロールケーキを差しいれてくれて、なかなかの“ステキ女子”ぶりを発揮する。彼女は進行にも気を配る。「落としどころ探してるんですけど、大丈夫ですか」と編集担当さんにしばしば確認していた。

一番年上の私だが、テレビドラマの話だから好き勝手に話すぐらいでちょうどいいかも? と開き直り気味に話す。それでも、今になって思えば十分に話を広げられていたか不安になる。かえって、簡単に話にオチをつけてしまっていたのではないかという気もする。

「熱海の捜査官」が大胆なのは、ドラマのオチや話の結論をどんどん先延ばしにして進むところだ。広域捜査官の星崎剣三(オダギリジョー)と北島紗英(栗山千明)は、3年前に「永遠の森学園」の女生徒4人がスクールバスごと消えた事件を解決するため、南熱海警察署にやってくる。

たとえば、署員との挨拶(あいさつ)も簡単には終わらない。出迎えた署員の桂東光子(ふせえり)は、勇ましくバズーカ砲を構えている。それぞれ名乗った後、紗英が聞く。「なぜバズーカ砲を?」。答えるのは星崎だ。「頼れる助っ人感を出そうと思ったんですよね?」。光子はふてくされ気味に答える。「ああ、そうですぅ」。署長の拾坂(松重豊)がたしなめる。「見抜かれちゃダメだ」。そこまで聞いて、ようやく紗英が挨拶らしい挨拶をする。「よろしくお願いします」。ここで、星崎が一言。「おお、まとめましたね」。

見ていて、「まとめましたね、とはまとめましたね」と突っ込んでしまった。捜査の応援にやって来た2人にバズーカ砲を向ける。その違和感たっぷりの状況に突っ込むことで見えるものもある。紗英は素直で、光子はイタズラ好き、星崎は推理好きで、拾坂には状況から一歩ひいたところがあるなどなどだ。

昨今の連続ドラマには一話完結スタイルの犯罪捜査ものが多い。事件は50分足らずで解決する。一方、「熱海の捜査官」はストーリーの先を急がない「ゆるい」展開。事件の解決までにはまだまだ時間がかかる。どちらを楽しむかはお好み次第だろう。ただ、この両方のスタイルのドラマがあるところが楽しい。オチを急ぐ気持ちと、簡単にまとめないで欲しいと思う気持ち。日々の生活の中にも、その両方の気持ちがある。

みんな、まとめたりまとまったりすることに敏感になっているのかなぁ。

(日本大学教授 中町綾子)

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筆者紹介

中町綾子(なかまち・あやこ) 日本大学芸術学部放送学科教授。テレビドラマ評論家。専門はテレビドラマの表現分析。1971年石川県生まれ。日大芸術学部卒、同大大学院芸術学研究科修士課程修了。著書に「ニッポンのテレビドラマ 21の名セリフ」(弘文堂)。

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