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トイレの下水は「資源の宝庫」 金やリン鉱石など

2010/8/9 日本経済新聞 電子版

「トイレの下水が最近、有望な資源として注目されているって聞いたんだけど」。友人の一言に探偵の松田章司が反応した。「どんな活用策があるのかな。早速、調べてみよう」。探偵志望の小学生、伊野辺詩音を連れ、章司は調査に出た。

2人はまず、東京都下水道局に向かった。計画課の石黒雅樹さん(40)は「下水を処理した際に出る汚泥を蒸し焼きにして炭をつくり、火力発電所の燃料にしています」と説明してくれた。これまで都は汚泥を産業のごみとして処分していた。汚泥は炭の元になる炭素を多く含んでいるので燃料として役に立つのだ。

不足する廃棄場所

都は3年前に江東区に年間8700トンの燃料をつくる設備を造った。約90万人の人が1年に出す9万9000トンの汚泥を処理する能力がある。できた燃料で約4200人が1年間に使う電力量を賄えるという。

詩音は手提げかばんから電卓をさっと取り出し、計算した。「200人がトイレでおしっこや大便を流したり台所を使ったりすれば、1人分の電気が作れちゃうのね。びっくりだわ」

「関西でも燃料にしていると聞いたことがあるぞ」。2人は新幹線で神戸市に向かった。同市の下水道河川部の滝村豪さん(54)は「汚泥に含まれるメタンガスも貴重な資源です」と証言してくれた。市は汚泥からメタンガスを取り出して燃料として市バスや運送会社に販売している。

神戸市では下水処理場内でガス燃料をつくり、スタンド(手前)で販売する

1年間に延べ1万2500台がこの燃料を使い、約2500万円の売り上げがあるという。秋から大阪ガスにも供給し、都市ガスとして売ってもらう計画だ。こうした動きは全国に広がっている。日本下水道協会によると、汚泥を燃料に変える下水処理場は全国に約300カ所あった。

「どうして資源化の動きが高まっているんだろう」。詩音の疑問に下水道ビジネスに詳しい日本総合研究所の石田直美さん(37)は「汚泥の捨て場所が足りなくなっています。各自治体とも財政難で収入の足しにしたいという気持ちが強いのです」と教えてくれた。

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