「ホタルノヒカリ2」(日本テレビ系)突っ込んでもらって幸せ

高野「アホ宮……」

この夏の連続ドラマのヒロインたちは好き放題に突っ込まれている。

「GM~踊れドクター」(TBS系)の研修医・小向桃子(多部未華子)は、初対面の後藤英雄(東山紀之)に、風貌のことで唐突な突っ込みを入れられる。「キミ、目が腫れているよ、大丈夫?」。デリカシーのかけらもない。赴任した病院では、「奥二重桃子?」とか、「殴られたの」なんて口々に突っ込まれる。

「GOLD」(フジテレビ系)では、カリスマ社長・早乙女悠里(天海祐希)の秘書・新倉リカ(長澤まさみ)が、その話し方でバカにされている。無理難題を言われて、「そんなぁ」と嘆くと、悠里がいかにも甘ったれたふうな口調を強調して、オウム返しで突っ込みを入れる。果ては、「言ったな、その舌ったらずの口で!」と、これまた身体的特徴への厳しい突っ込みだ。

「ホタルノヒカリ2」(日本テレビ系)の雨宮蛍(綾瀬はるか)も例外ではない。というより、彼女こそ“突っ込まれヒロイン”の元祖と言えるかもしれない(パート1放送=2007年)。雨宮は通称「干物女」。恋愛するより、家でぐうたら寝ていたい。そんな彼女がひょんなことから、会社の上司・高野(藤木直人)と同居することになる。で、高野に干物女ぶりを知られることになり、彼女の突っ込まれ人生が始まる。

3年も経てば、彼女の突っ込まれ方にも年季が入って、二人は結婚を前提とした関係となる。それでも、雨宮の素行は変わらない。むしろ、彼女の奔放さはエスカレートしている。高野がイベリコ豚が好きと言うのを聞けば、賞品を獲得しようと、子どもたちにまじって商店街のちびっこ障害物競走に参加する。周囲の視線なんか眼中にない。そして、高野はそんな彼女をこう呼ぶ。「アホ宮……」

が、雨宮はそう呼ばれても懲りない。一瞬ひるんで見せても、だらしない生活が好きだし、自分の思いを大切にしたい。そして、そんな自分に突っ込んでもらうのが居心地よく、幸せ~と感じている。突っ込みもまた恋愛ドラマの王道で、この人は私のことわかってくれているという証でもある。

「ホタルノヒカリ」は女性脚本家(水橋文美江)が描く女の子の幸せのかたちのひとつと言える。他方、男性脚本家が描く「GM」(林宏司)や「GOLD」(野島伸司)は違う。どちらも女の子はたくましくコミカルという共通点はあるが、「GM」と「GOLD」には、ラブラブな感じはなく、かなりシニカルな雰囲気を漂わせている。その意味するところは何なのか。しばらく見守ってみたい。

(日本大学教授 中町綾子)

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筆者紹介

中町綾子(なかまち・あやこ) 日本大学芸術学部放送学科教授。テレビドラマ評論家。専門はテレビドラマの表現分析。1971年石川県生まれ。日大芸術学部卒、同大大学院芸術学研究科修士課程修了。著書に「ニッポンのテレビドラマ 21の名セリフ」(弘文堂)。

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