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家族による「経済的虐待」が増加 高齢者の年金・預金搾取

2010/6/14 日本経済新聞 電子版

 高齢者の預金や年金を使ってしまう、家族らによる「経済的虐待」が増えている。ただ、収入減などを理由に親世帯に家計を頼る子世帯は多く、虐待と判断しきれない例が少なくない。行政などはどこまで介入すべきか、悩みが尽きない。
地域のケアマネジャーなどから経済的虐待の通報が寄せられる(東京都北区の高齢者虐待防止センター)

 「お金がない」。2009年、東京都品川区で一人暮らしをする女性(80代)は介護に来たヘルパーに訴えた。女性は少し前から認知症の症状が出始めたため、別居する親せきの男性(50代)に通帳類の管理を任せ、買い物などに使う現金を定期的に届けてもらっていた。

 だが次第に届ける金額が減り、ついに持ってこなくなった。公共料金の引き落としができず、電気が止まってしまった。区が調べたところ、男性が約半年間、年金が入るたびに全額引き落としてギャンブルなどに使っていたと分かった。

 厚生労働省によると、家族らによる高齢者(65歳以上)虐待の件数は08年度、1万4889件と前の年度に比べて12%増えた。最も多いのは暴力をふるう身体的虐待だが、経済的虐待は3828件(複数回答)と25.7%を占め、その数は年々増えている。

 ほかの虐待に比べて、第三者が事実を確認しにくいのがやっかいだ。「介護施設の利用料を何カ月も滞納している」。東京都北区の高齢者虐待防止センターにはケアマネジャーらから、こんな手掛かりが寄せられる。

 「ヘルパーは身近といっても、預金額や家族とのお金のやり取りまで把握していない。本人に事情を聴いて初めて、家族が使い込んでいたために介護費用が払えないといった事実が分かる」と同センター長の高橋雅信さんは話す。通帳や印鑑、カードを家族が保管していることも多いので、彼らと話し合いながら対策を講じる。

 家族が虐待に及ぶ背景には、低所得や失業、借金が隠れている。東京都葛飾区で昨年度、経済的虐待をした14人のうち9人が無職だった。「『働きたいけど親の介護で無理』と訴える人もいる」(同区福祉部高齢者支援課)

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