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傘は“天下の回りもの” 広がるレンタル

2010/5/19 日本経済新聞 電子版

雨の日に無料で傘を貸し出すレンタル傘がじわり広がっている。突然の雨に見舞われても、傘を借りられればお財布にも環境にも優しい。忘れ物の再利用などのほか、家庭や職場にたまった不要な傘を活用するケースもでてきた。傘は“天下の回りもの”になるだろうか。

「自宅などにビニール傘ばかり十数本ある」と話すのは、フリーランスでアパレルデザイナーとして働くAさん(45)。必要なときに買い足すうちに、どんどん増えてしまった。

シブカサが配置されている店は徐々に増えている(東京都渋谷区)

そんなAさんが「使いたいときに使えるよう、もっと広がれば」というのは、東京の渋谷地域で無料で傘を貸し出す「シブカサ」だ。2007年12月に始まり、提携店は5カ所から42に広がった。提携店ならどこに返してもいいのが特長だ。

「1時間で20本」

シブカサをボランティアで運営する大塚潤さん(25)は「以前は地下街があまり発達しておらず、突然、雨が降ると多くの人が渋谷駅に集まって混雑した。必要な時だけ借りられれば便利なのにと思い立った」という。

08年に導入したショールーム「KDDIデザイニングスタジオ」(東京都渋谷区)では「突然雨が降ると、1時間で全部(20本)無くなる時もある」。

傘が急に必要になる局面は増えている。気象庁によると09年までの12年間で1時間の降水量が50ミリメートル以上だった豪雨の年平均回数は、1976~86年に比べ4割増。局地的に大雨が降るゲリラ豪雨は予測も難しい。

レンタルは各地に広がっている。金沢市は09年12月から21カ所で「置き傘プロジェクト」を開始。JR西日本金沢支社が忘れ物で、一定期間を経て持ち主不明となった傘の一部を提供している。東京都公園協会(東京都新宿区)も09年12月、23区内の都立公園30カ所に「ふれあい傘」を設置した。

不要傘を再活用してもらおうという個人や企業も少なくない。4月にシブカサに4、5本のビニール傘を提供したのは世田谷区在住の永田晶子さん(32)。事前に分かれば折り畳み傘を持ち外出するが、急に降り出した時に購入し増えた。「スペースも取るし、同じ傘は何本もいらない。でも捨てるには忍びない」

不要な傘は捨てるのも一手間。従来は不燃ごみとしてそのまま回収する自治体が多かったが、横浜市や埼玉県川口市、愛知県小牧市のように、傘の骨など金属類と布やビニール部分を分別回収するケースもある。

企業にとってはコストもかかる。「置く場所はタダじゃない」。大量の不要傘が発覚したのは三井化学。コスト削減の一環で、09年秋から本社などが入居するビルの賃貸スペースを8フロアから6.75フロアに減らすことにした。会議室など共通スペースを見直す中で、傘置き場が目立った。

所有権の放棄を明確にするため持ち主不明の傘を集め、自分の傘を引き取れる期間を1週間設けた。それでも社員1200~1300人に対し約500本が残り、「使いたい人はどうぞ」と欲しい傘を持ち帰れる期間も1週間とったところ、350本が残ったという。

「廃棄より、傘として再利用してほしい」。三井化学が傘をまとめて提供したのは、傘専門のリサイクルを手掛けるアバ(埼玉県深谷市)だ。同社は08年から企業や個人から不要な傘を集め、修理し販売している。「捨てたくないと、個人や企業から連絡がある」と社長の菊地伸一さん。今年は前年比1.5倍の7万2千本程度が集まる見通しという。ホテルのレンタル傘などに利用されている。

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