単身生活、日課決めリズムを 1人暮らしのベテランに聞くオムニス関西

慣れない一人暮らし、家族と離れる寂しさ――。この春、家族を残して関西に転勤してきた人も多いだろう。健康をどう維持するか、子どもとのきずなをどう保つかなど、単身赴任者には独身時代の一人暮らしとは違った気苦労や不安がある。自分に合った生活スタイルを築くには何に気をつければいいのか。単身生活を楽しんでいる「先輩」たちにコツを聞いた。

最寄り駅の一つ前で降り、妻と電話しながら出勤する橋本信彦さん(大阪府箕面市)

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「この年で関西に行くことになるとは」――。三井住友銀行箕面支店の支店長、橋本信彦さん(48)は2年前に辞令を受け取ったとき、一瞬ひるんだ。約20年間、東京で働き、初めての単身赴任。橋本さんの奮闘が始まった。

まずは健康管理。血圧が高めなので毎朝測ってカレンダーに書き込む。お酒は控えめにし、食事の際はなるべく多く野菜をとるように心がける。家族と一緒なら誰かが「顔色が悪いよ」と気遣ってくれたが、一人暮らしでは自分で体に注意を払うしかない。

「家に帰ったときにお客さん扱いはされたくない」と、家族とのコミュニケーションも絶やさない。健康維持との一石二鳥を狙い日課にしたのが、朝の奥さんとの電話だ。最寄り駅の一つ手前で降り、職場まで歩きながら携帯電話で話す。「内容はたいてい息子に関する報告や愚痴。ほぼ一方的に聞いている」

東京の家に帰るときは、家族と触れ合う時間を確保するために、あらかじめ「イベント」を決めておく。先日は大学生の息子と一緒にスーツを買いに行った。

一人で過ごす週末の過ごし方も大切だ。橋本さんは関西に来てから「家では恥ずかしくてできなかった」という水彩画を始めた。東京からはなかなか行きにくい京都や奈良に出かけ、旅先の風景を描いている。単身赴任をきっかけに新たな趣味を始めるのも、生活を充実させるのに役立つだろう。

新任地で希薄になりがちな人間関係を豊かにするにはどうすればいいのか。転勤の多い商社に長く勤め、現在も機械メーカーの加地テック社長として大阪に単身で勤務する小林士郎さん(61)は、職場の付き合いを足がかりに現地での人脈を広げるようにしている。

社内行事には積極的に顔を出し、社員と一緒に遊ぶ。現在の会社に来てからは、社内の草野球チームの試合を見に行き、ゲームに飛び入り参加したことも。まずは手近な付き合いから自分の「居場所」を探すといいようだ。小林さんは「気心の知れた同期入社の仲間との付き合いも大切にする」と話す。

「人間は集団の中で生きる動物。普通は家族といることで生活にリズムをつけている」。詩人・美術評論家でもある国立国際美術館館長の建畠晢さん(62)はこう語る。建畠さんも大阪で単身赴任生活を送る一人だ。

一人になっても、好きな場所を見つけたり、日課を作ったりして、生活に自分なりの「型」を作ることが大事。建畠さんの場合、お気に入りの喫茶店で過ごすことを日課の一つにしている。新聞を読んだり、エスプレッソを飲んだりするだけだが、周囲の客の話し声、食器のふれあう音など、ざわめきに包まれていると単身の寂しさが紛れるという。

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登場いただいた3人に単身生活で便利だと思った商品やサービスがあるか聞いてみた。3人がそろって答えたのが、家族間の通話が無料になる携帯電話のサービスと、新幹線の指定席を携帯やネットで予約できるサービスだ。

新幹線予約は利用に応じてポイントがたまるので、「4カ月に一度はグリーン車で帰れる」(橋本さん)。乗る直前でも予約や変更が可能。試してみてはどうだろう。

(大阪経済部 松林薫)

[日本経済新聞大阪夕刊オムニス関西4月19日付]

オムニス関西とは 大阪本社発行の夕刊で月曜から金曜まで展開するコーナーの名称です。オムニスはラテン語の「omnis(すべての)」という意味を込めました。暮らしに役立つワザや若者に人気のスポット紹介、歴史に埋もれた事実の発掘まで、表層をなぞっただけでは分からない関西の魅力を伝えます。
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