アート&レビュー

あのドラマこのセリフ

「世にも奇妙な物語」(フジテレビ系) ニュースおじさんの正体は…

2010/4/13 日本経済新聞 電子版

瑞希「私がそう呼んでるだけだけどね」

日々の生活の中、ふとしたことが気になってしょうがなくなる。他の人が気にも留めないようなこと。そして、それにとらわれるうちに不幸の扉を開けてしまう。

『世にも奇妙な物語20周年スペシャル・春 ~人気番組競演編~』(フジテレビ系、4月4日)の第一話「ニュースおじさん、ふたたび」には、この”ちょっとしたこと”の正体が垣間見えて怖かった。

朝倉瑞希(香里奈)は「ニュースおじさん」が気になってしょうがない。彼女の仕事はテレビ番組の報道スタッフだ。スクープを求めて事件現場にいち早く乗り込む。ところが、今度こそはと思っても、駆けつけた場所にはいつもすでに「おじさん」が来ている。どうにかして、ニュースおじさんに勝てないか。彼と組めばスクープをモノに出来るのではないか。彼女を駆り立てるのは、ライバル心か、功名心か……。

1991年、第2シリーズで放送された「ニュースおじさん」の主人公は主婦だった。むつみ(大竹しのぶ)はテレビのニュース画面に映る「おじさん」が気になって仕方なくなる。夫に話しても、まともに取り合ってくれない。彼女にはライバル心や功名心はない。あるのは、ちょっとした孤独だった。

今回の「ふたたび」では、瑞希がつぶやくセリフが印象的だ。「私がそう呼んでるだけだけどね」。彼女の「ニュースおじさん」は、彼女の抱える孤独の化身ではなかったか。

報道ウーマンであれ、主婦であれ、つまり仕事が何であれ、1991年であれ、2010年であれ、つまり時代が多少変わっても。彼女たちは、それぞれ他の人にはわかってもらえない孤独を抱えて生きている。たぶん、私も。

ドラマを中心に、テレビの話題をお届けします。気になるセリフに、ちょっと立ち止まってみませんか。

筆者紹介

中町綾子(なかまち・あやこ) 日本大学芸術学部放送学科教授。テレビドラマ評論家。専門はテレビドラマの表現分析。1971年石川県生まれ。日大芸術学部卒、同大大学院芸術学研究科修士課程修了。著書に「ニッポンのテレビドラマ 21の名セリフ」(弘文堂)。

アート&レビュー 新着記事

ALL CHANNEL