65歳は支えられる側か? 「高齢者」の見直し進む

一般的には65歳を超えると高齢者だと見なされる。ただ日本は世界有数の長寿国。70歳、80歳になっても心身ともに健康で老人扱いを嫌がる人も少なくない。「65歳以上=支えられる側」とする意識と社会構造を見直す機運も高まってきた。

市が高齢者の就業先を紹介

孫と同世代の子どもたちに英語を教える武藤さん(千葉県柏市)

 「みんな、この絵を見て。今、昼の12時だね。女の子は何をしているのかな。英語で答えてみて」。小学校3年生の子どもたちに武藤達雄さん(71)がやさしく問い掛ける。千葉県柏市にある学習塾ネクスファの授業のひとこまだ。

武藤さんは元化学会社のエンジニア。60歳で定年退職した後、シニアボランティアとしてマレーシアとペルーに滞在した。そして今年3月から週1回、英語を教えている。「海外ボランティアを続けたかったが、70歳になるとさすがに受け入れ先がない。でも隠居生活は退屈。子どもに教えるのは初めてだけど緊張感があって刺激的」と話す。

柏市は東京のベッドタウン。高度経済成長期に宅地開発が進み、都心に通う会社員がマイホームを買って大量に転入した。時を経て当時働き盛りだったサラリーマンも定年退職。高齢者人口の急増に悩んでいる。

市は2009年に東京大学、UR都市機構と研究会を発足。対策を検討し、健康な高齢者に地域の担い手になってもらおうと11年度に「高齢者のいきがい就労」プロジェクトをはじめた。武藤さんのように活力あふれるシニアを市が募集・登録し、就業先を紹介する。現在約80人がこの制度を使って働いている。

ポイントは就業先を子育てや介護、農業など地域の暮らしに不可欠だが、人手が足りない分野に限定したこと。現役世代の仕事を奪うことなく、地域の活性化も実現できる。市福祉政策室は「今後市内で毎年約4千人が定年退職し、会社から地域に戻ってくる。リタイア組を重荷ととらえず、発想を転換して知識と経験が豊富な社会的人材だととらえれば地域活性化の原動力になる。まだ試験段階だが、長寿社会のまちづくりのモデルケースをつくりたい」と説明する。

日本の「高齢化率」、世界中でトップ

社会の高齢化を測るとき、国際的に高齢化率が使われる。全人口に占める65歳以上人口の比率のことだ。いわば65歳以上を高齢者として扱っている格好だ。日本の高齢化率は10年度23%。世界の中でトップ。推計によれば2060年に39.9%となり、日本は人類史上例のない高齢社会を迎える。65歳未満の現役世代だけでそれだけの高齢者を支えきれるのか。そこで高齢者の定義の見直しがにわかに脚光を浴びている。

政府は7日に今後の高齢者施策の基本方針を示す高齢社会対策大綱を閣議決定した。その中で高齢者のとらえ方の意識改革を図ると明記。固定観念を見直し、意欲と能力のある65歳以上には社会を支える側に回ってもらう狙いだ。大綱をまとめた内閣府は「高齢者も健康や経済状況は多様。『65歳以上=支えられる人』という認識は、すでに実態とかけ離れている」と説明する。

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