「てんぷらにソース」は、西日本に固有の食文化
ソースでてんぷら(3)
私はいま、深い感慨とともに1枚の地図に見入っている。ついに「ソースでてんぷら」地図の速報版ができてきた。きれいだなあ、不思議だなあ。それが正直な感想である。
東日本型と西日本型の食文化の境界線といわれる糸魚川―静岡構造線(フォッサマグナ)をこの地図のうえに引いてみてほしい。
どうだろう、完全ではないがほぼその線を境に西は赤く、東は空白になっているではないか。つまり、てんぷらにソースをかけて食べる文化は都道府県ごとに濃淡はあっても西日本に固有の文化であることがわかる。
私たちはついにこれまで誰も描かなかったであろう地図を描こうとしている。やったー。まずは、地図をじっくり見てください。
和歌山が80%以上でトップ。事前の予想では大阪がくるかなと思っていた。メールの内容を見てからは奈良がトップかなと思い直した。でも集計してみると意外にも和歌山。
60~80%未満、つまり半数以上の人が「ソースでてんぷら」的人生を送っているらしいのは沖縄、高知、福井、鳥取、鹿児島、愛媛、奈良、徳島となった。
反対に福島、岩手、山形、山梨からの回答はすべて「てんぷらにソースなんてかけないよ」というものだった。反ソースでてんぷら地帯が東北を中心に広がっているのである。
ちなみに東京は10人に1人しかソース派はいなかった。
現在都道府県別の詳細情報を分析中で、その結果は「紅ショウガのてんぷら食ってる地域」とともに次回報告するが、この地図を見ていて新たな疑問が生まれた。
埼玉県民の皆さーん、教えてください。なんで皆さんは東日本で唯一ソースの人が多いんですか。40~60%未満、ということは2人に1人はソースということになるけれど、埼玉は関東の西日本? 西日本出身の人が異常に多い?
香川県民の皆さーん、皆さんは四国の隣県がみんなソース優勢地帯なのに、どうして横向いちゃっているんですか。香川は四国の東日本? それともソースなんかよりもっとうまいものをかけたりしてる?
沖縄県の皆さーん、ヤマトから遠く離れているのにちゃんと西日本の一員としてソースしてるのは、どうしてですか。いけないと言っているのではなくて、食文化の伝播という意味で大変興味深いのですよ。
もちろん都道府県別の回答数の多寡やなんかでこの数字が実態を正確に映しているとは言いきれないが、それでも一目瞭然の傾向が出た以上かなりの信憑性があると考えられる。ならば、やはり埼玉、香川、沖縄各県に在住の方のご意見をうかがってみたいのである(調査は終了しました)。
それにしてもきれいに分かれたものですね、西と東に。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。