たっぷりの塩、ぬかでじっくり漬け込むのが美味の秘訣
伝統の珍味・へしこの魅力を探る(3)
先日、福井県観光営業部ブランド営業課と東京の福井県産品アンテナショップ・ふくい南青山291の主催で「へしこの学校in福井」が開催された。へしこの漬け込みを体験するため、福井市の越廼(こしの)漁港を訪れた。
越廼漁港の特産品はイカのへしこ。越廼漁業協同組合女性部・ぬかちゃんグループの皆さんの指導で、イカの塩漬け、そしてぬか漬けを体験させていただいた。
まずはイカの下ごしらえ。
ゲソをひっぱってそこに指を入れ、身から内臓や骨を剥離する。プロはいとも簡単に引っ張り出すが、素人にはそうはいかない。無理に引っ張るとワタを破いてしまったり、最悪、墨袋を破ってしまい、それが顔にはねることも。
内臓だけでなく、目やとんびと呼ばれる口も取り、きれいに水洗いしたら、ゲソを身に戻す。
下ごしらえが終わったら、タライいっぱいの塩の中に、イカを入れ、よくなじませる。思っていた以上の塩の量に、へしこの塩辛さを肌身で感じる。
塩をたっぷり身にまとったイカは樽の中に重ねられ、その上から重しをして、寝かされる。今回は、事前に塩漬けが終わったイカが用意されていて、それでぬか漬けを体験させていただいた。
白く透き通るようだったイカの身は、塩漬けを経て、表面が赤く染まっている。塩の浸透圧作用で水分が抜け、樽の底には抜け出た水分が「塩水(すえ)」になっている。
これをやはり、たっぷり米ぬかが入ったバットの中で、よくなじませていく。ぬかを身にまとった塩イカは、塩漬けの時と同様、樽の中にきれいに並べられていく。樽の底いっぱいに並べたら、その上から細かく刻んだ鷹の爪をぱらり。
最後にイカの姿が見えなくなるまで糠を振りかけたら、もう一度そこに塩イカを並べていく。何層にも重なった塩イカとぬかで樽がいっぱいになったら、落としぶたをして、塩漬けの樽の底に残っていた塩水を注ぎ入れる。
塩イカとぬかでびっしりの樽なので、あわてて注ぐとあふれてしまう。ゆっくりと染み込むのを確認しながら注いで行く。
塩水がすべて樽の中に注がれたら漬け込み終了。あとは時間と気候の変化が、へしこ特有のうま味を樽の中で育ててくれる。
(渡辺智哉)
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