「二往復の言葉のキャッチボール」なら仕事も輝く
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普段の生活の中で私には、他人とかかわる機会が数多くあります。その際、会話があまり無くても支障がないかもしれませんが、「雑談」ができたら、もっと周りの人と親しくなれます。
大好きな人の興味を引く。かけがえの無い友人を見つける。上司や部下、お取引先、お客様など、仕事での人間関係が円滑になる。
雑談ができるかどうかで、仕事もプライベートも輝いてくる。人生の質そのものが、変わってきます。ですから、雑談を軽んじる、話しかけることを避けるのは、非常にもったいないことなのです。
あなたは上手に、話しかけていますか? 相手の雑談に、きちんと応じているでしょうか?
話しかけるのが苦手だ、どう言葉を返したらいいか分からないというのならば、克服する第一歩として「二往復の言葉のキャッチボール(雑談)」を、試みてみましょう。
「二往復の言葉のキャッチボール(雑談)」とは?
あなた「●●社が××社に売却されると聞いたけれど、知っている?」
相手「いいや、知らないです。噂レベルじゃないですか?」(質問で返す)
あなた「そうかもしれないな、前にもそういう噂があったと思うけれど」(一往復)
相手「そうですね。最近、△△社が○○社に合併吸収されるとか、業界再編の時期なんですかね?」(質問で話題が広がる)
あなた「確かに、このところそういう動きが多いね」(二往復)
こういう返答ができれば、会話が盛り上がる可能性が高まります。しかし話を膨らます、話題をふる。こうした返答はなかなか難しいものです。とっさに言葉にするテクニックは、すぐには身につきません。
現実には、次のような雑談を耳にしてはいませんか?
「一往復の雑談」では、拒否されていると思われかねない
あなた「最近、体幹トレーニングをしていますか?」
相手「もうやめました」
あなた「そうですか……」(一往復)
あなたは雑談をするために話しかけ、相手も正直に答えているのですが、「もうやめました」のひと言で、それ以上返す言葉が見つからず、話の広げ方も分からず会話が止まってしまいました。
相手が話し上手ならば、共通の話題を見つけたり、誰もが知るニュースから話を広げ雑談を展開してくれるかもしれません。しかし会話を引き出してくれる「話し上手な人」は、そう多くはありません。
人は興味のあることや自分に関することは話せても、相手から「聞き出す」=「話題を引き出す」ことができる人は、少ないものです。
仮にあなたが、先のような会話をされたらどう思うでしょうか?
「最近、体幹トレーニングしていますか?」の質問に対して、「もうやめました」のひと言しか返ってこなければ、多くの人は、会話を拒絶されていると感じるでしょう。「(私は)嫌われているかもしれない」と、思う人がいても不思議ではありません。
しらけた雑談を重ねていませんか?
コミュニケーションに苦手意識がある方に質問をすると、聞かれた事だけに答える傾向があることに、気づきます。
最悪なのは「○○は得意ですか」「△△に参加しませんか?」など、答えが「はい」「いいえ」の2つしか選べない質問をされた時でしょう。
話し上手な人ならば、
「得意ではありませんが、興味はあります。○○さんは、どうなんですか?」
「参加します。楽しみですね。△△さんも、いらっしゃいますでしょう」など。
会話を膨らませることもできますが、コミュニケーションが苦手な方では、「はい」「いいえ」と、一往復の言葉のキャッチボールで、強制的に会話が終了してしまう。続かない「しらけた雑談」を、重ねている人が多いのです。
こうした事態を回避するには、質問を活用するのがお勧めです。返事に困ったら、まず相手に質問してみるのです。質問攻めは嫌悪感を抱かれる可能性がありますが、二往復を成立させる。2回の質問ならば、気にすることはありません。
「質問」は、言葉のキャッチボールの要
雑談を続ける、もっとも簡単な方法は質問をすること。なかでも、天気や季節をキーワードに、相手のことを尋ねるのが、無理なく質問ができてお勧めです。
あなた「おはようございます、臼井さん」
相手「おはようございます、鈴木さん」
あなた「バケツをひっくり返したような雨ですね」(質問をする)
相手「本当、困りますね。ぬれませんでしたか?」(質問に答え質問で返す)
あなた「上着がびしょびしょですよ」(二往復)
例のように「ぬれませんでしたか?」と気遣いを示すと、会話が続くだけでなく相手もうれしい気持ちになります。好感を抱き、もっとこの人と話したいと思うものです。
さらに先の会話では、「おはようございます、臼井さん」と、相手の名前をあいさつに込めて伝えています。名前は相手を特定するだけでなく、親近感を演出する役割も果たします。
あなたが「おはようございます、臼井さん」といえば、相手も「おはようございます、鈴木さん」というように、互いに親近感を通わすこともできます。
天気や季節の話題で共感を呼ぶ
初対面の雑談でも、天気や天候のことならば、お互いに共有することができます。
晴れていたならば「いいお日和ですね」「快晴ですね」
雨ならば「雨が降っていますね」「すごい雨ですね」
曇りならば「雲行きが怪しくなってきましたね」「どんよりしていますね」
朝は「日の出ですね」「朝日がきれいですね」
夜は「星がきれいですね」「満月ですね」など。見たまま、そのままでいいのです。
「そんなの当たり前過ぎて、つまらない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、心配は無用です。
心を通わせるための会話に重要なのは、共感の言葉を投げかけることなのです。天気や季節は誰にとっても共通の話題。その天気を見て、あなたが思ったことをそのまま言葉にすれば、相手は共感します。
ちょっと進めて
「めっきり寒くなりましたね」
「もうすぐクリスマスですね」
「午後から雨になるみたいですよ」
「桜の開花宣言がでましたね」
どうでしょうか? こうして話しかけられた時の相手の反応を想像してみれば、納得できるはずです。間違いなく、「そうですね」と返してきます。
あなたも天気や季節をキーワードに「二往復の雑談」を心がければ、初対面はもとよりどんなシチュエーションでも、話題選びですべることはありません。
次回(4月27日更新)は、「話の長さと年収は反比例する」です。意味深なタイトルですが、これは事実。お楽しみに!
[2016年3月29日公開のBizCOLLEGEの記事を再構成]
1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。