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青山製作所の改善では何にでも挑戦した。

紛失したかんばんを増発してはいかん、出てくるまで探せと上から命じられました。徹底的に探した結果、ついに見つかりました。

トヨタ式で小ロット生産を可能にした(青山製作所の工場内)

トヨタ式で小ロット生産を可能にした(青山製作所の工場内)

箱に入れたボルトの上にかんばんを置いたため、ボルトの油が付着。そこに重ねた箱の底にかんばんが貼り付いて行方不明になったのです。箱の横にかんばんホルダーを付け、紛失対策をとることができました。

最初はむちゃな指示と思いましたが、徹底的に現地現物で原因追及することの大切さを教えられました。

かんばんで後工程が引き取る方式に切り替わったところで、次は小ロット化への挑戦です。出された指示は有無を言わさず「ロットサイズを半分にせよ」。これには参りました。設備を動かす必要がある時に正常に動く確率を示す"可動率"が極端に落ちるので生産が間に合いません。後工程であるお客様の生産ラインが欠品で止まる寸前まで追い込まれました。

そんな時でも内川晋さんは「痛みを伴いますが、後工程を止めたりはしませんからご安心を」と平然としたもの。青山製作所の青山利光社長も「思った通りにやって下さい」との答えです。「この2人、事態が分かっているのか」。一瞬疑いましたが、これも勉強でした。混乱に直面した時こそ、上に立つ者は絶対にうろたえてはダメなんです。

やったことがないといって尻込みするのは厳禁。

いよいよ私の出番です。(金型を切り替える)段取り替えの時間を短縮しないと生産が立ち行きません。段取り替えの作業を観察すると寸法出しに時間がかかっている。対策として、ネジで調整せずスペーサーを挟んで一発で寸法を出す方法を思いつきました。

ボルトの種類に合ったスペーサーの図面を書いていたら、鈴村喜久男さんが来て「この方法でいいが、スペーサーの製作を外注していたら間に合わんぞ」。私が「青山にはスペーサーを造る機械がありません」と反論すると、「倉庫の奥に古い旋盤がある。あれをオーバーホールして使え」。またやっかいな宿題です。

「旋盤のオーバーホールなんかやったことありません。やり方を教えてください」と食い下がると「そんな簡単なことが分からんか。外側の部品から外せ」。それだけ言い残して帰ってしまいました。

仕方なく部品を一点一点バラし、番号を付与して倉庫の空地に並べていきました。そして精度に影響する摩耗した部品を見付け出してトヨタに持ち帰ってつくり直し、見事目的は達成できました。

しかしながら、全面展開までには時間を要しました。綱渡りの状態は長期間続き、メドがついて帰任命令が出た時には1年が経過していました。

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