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社内の飲み会に行くか、プライベートを優先させるか 会社人生を決める7つの選択(2)

平康 慶浩 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント

2016/1/5

社内の飲み会を断ってもいいのか

 飲みニケーションの重要性が再評価されているらしい。実際に福利厚生の仕組みとして、部署ごとに毎月一定の飲み会予算を割り振る企業もたしかに存在する。部署で飲み会を開催する場合、1人あたり2000円まで補助しますよ、というような仕組みだ。

 そういう仕組みのありなしにかかわらず、上司が「今の仕事が一段落するから、来週あたりみんなで軽く飲みに行こうか」と誘ってくる場合がある。そんなときあなたはどう感じるだろう。

 酒好きな人や飲み屋の雰囲気が好きだという人であれば、あとはスケジュールの問題だけだ。実際のところ、毎晩酒を飲む人の割合はだいたい5人に1人の割合でこの10年ほどは大きく変化していない。それより前でも4人に1人くらいだ(厚生労働省「国民健康・栄養調査」、2012年)。

 しかし会社の飲み会が嫌だという人もいるし、そもそも酒を飲むなら家で親しい人たちと飲みたいという人もいる。

 また仕事が忙しい状況で、飲んでいるような場合じゃないということだってある。たしかに部署全体としては一段落しても、自分の仕事はちょうど明日が締切で今晩中にしあげなければいけない、というような状況だ。

 とはいえ上司の誘いだし、会社の飲み会というとなんとなく断りづらい雰囲気がある。そんな状況でも、そもそも酒が嫌い、スケジュールがあわない、会社の人と飲みに行くのが嫌、仕事が忙しくて行っていられない、という理由で断ってもいいのだろうか。

飲み会参加にはたしかにメリットがある。ただしそれは一次会まで

 結論としては、飲み会は断ってもなんら問題はない。人事評価の観点でも問題が起きることはない。たしかにロイヤリティ型の会社であれば一体感が重視される。昔気質の上司の誘いを断り続けると一時的には雰囲気も悪くなる。しかし「あの人は飲み会には来ない」という認識が生まれるまで断り続けていれば、それがあたりまえになる。昔気質の人たちの飲み会で酒の肴になるかもしれないが、それだけのことだ。

 環境適応型の会社であれば考え方が違う人たちもいる。だから一体感はそもそも失われている可能性があるので、あえて気の進まない飲み会に行く必要などない。

 自立型の会社であればなおさらだ。本当は行きたくないのに、プライベートを犠牲にしてまで飲みに行ったところで得るものはさほどないだろう。

 ただしもし飲み会そのものが嫌じゃないのであれば、飲み会でメリットを作り出すことはできる。たとえば仕事上でぶつかった相手が来るのであれば、飲み会で相手との関係を太くすることができる。ある案件で意見が違ったとしても、その違いを前提として別の話をしていくのだ。趣味の話でもいいし、家庭の話でもいい。あるいは会社の将来についての話だって構わない。要は反目している関係を、多数の関係性の一つにしてしまえればよいのだ。あることについては意見が違っても、同意できることとか共感できることが他にあれば、ビジネスとして良好なつながりにすることができる。

 あるいは直属上司よりもさらに上の上司が来る場合だ。普段話す場が少ないのなら、これを機会にどんどん顔を売り込むことができる。

 ただそれでも出席するのは一次会までで構わないだろう。二次会、三次会と付き合ったところで、ビジネスとして得るものはない。

居酒屋で仕事の指導や人事通達を行うとハラスメントになる

 逆にあなたが管理職の場合、飲み会に誘う際に気を付けるべき点はあるだろうか。

 パワーハラスメント、セクシャルハラスメントのように、誘うこと自体がいやがらせになってしまうのであればそれは論外だ。飲み会を開催するとすればそれはあくまでも懇親や慰労を目的としていなくてはならない。

 特に気を付けたいのは、普段の仕事ぶりについての指導や人事についての通達のために飲みや食事に誘うことだ。これはまったくお勧めしない。仮にロイヤリティ型の会社であったとしても。

 なぜなら指導や人事についての誘いであれば相手が拒否することができない。そして飲食を伴う場を共有すると関係性が深まりやすいが、それ自体がハラスメントになってしまう可能性が高いのだ。

 想像してみてほしい。上司に「ちょっと来期からのことについて話があるから明日の夜一緒にメシに行こう」と言われた場合の相手の感情を。あなたが役員に呼びつけられてそう言われたらどう思うだろう。

 たしかに昔であれば良い話でも厳しい話でも飲食を交えることは多かった。胸襟をひらいて話をすることが信頼関係を深めたし、わざわざ会社の外で時間をとってまで指導や通知をされることについて感謝する人もいた。

 しかし現在では、指導にしても人事通達にしても、定時内にすることが当然となっている。飲食を交えず、会社の会議室で淡々と話さなくてはならない。そうすることで互いにその話があくまでもビジネスについてのことであり、人間性やプライベートに関係していないことが理解できる。

 逆に飲食の場でしか話ができない上司であれば、これからの変化にはさらについていけないだろう。

休日や時間外の会社行事に参加しなくても大丈夫か

 飲み会については出席の必要は薄いのだけれど、会社行事となるとどうだろう。社長をはじめとする経営層も参加するような社員旅行やレクリエーションとしての運動会などだ。

 企業タイプを問わず、休日やあるいは平日であっても有給にして会社行事が開催されることがある。社員旅行や運動会などは減少傾向にはあるが、その効果を再評価している場合も多い。産労総合研究所の調査では社員旅行を実施する企業は46%だが、なんらかの社内レクリエーションを開催している企業の割合は82%にもなる(産労総合研究所「2014年 社内イベント・社内旅行に関する調査」、2014年6月)。その主な目的は社内コミュニケーションの促進にあるのだが、ではこれらの会社行事を断っても出世に響かないだろうか。

 人事の仕組みから言えば、飲み会と同様、会社行事を断っても出世には影響しない。ほとんどの会社では、会社行事に出席しないことをマイナスに評価する仕組みがないからだ。社員旅行に来ない、ゴルフをしたことがないからといってゴルフコンペに来ない、歓迎会の日は残業をしていて直前で欠席する、などの行動をとっていたからといって、まあそういう人、というくらいの評判が生まれるくらいだ。ほとんどの会社では人事評価に反映するような基準を持っていない。チームワークを阻害するという評価を受けるかもしれない、と思うかもしれないが、仕事をしっかりとしていればその可能性も低い。

行事参加が人事評価基準に含まれている会社も

 ただし例外はある。ある会社から会社行事の欠席をマイナスに評価する仕組みの提案を求められたことがあるのだ。具体的には次のような基準を設計し、運用する会社がある。

評価基準「社内コミュニケーション」 会社行事(社員旅行、忘年会、会社説明会など)に積極的に参加し、発言できている

 この会社はロイヤリティ型のオーナー企業だった。比較的若い二代目社長が従業員たちとのコミュニケーションを好んでいる。その社長の要望であえて設定した評価基準だ。会社行事をひんぱんに欠席するようだと、社内コミュニケーションがとれていないとして低い評価を受けることになる。

 しかしこの会社でもなお、会社行事を欠席したからといって直接出世に影響することはない。なぜならこの評価基準は8つある基準の一つにすぎないからだ。そしてこの基準で評価されるのは新入社員から入社3年目程度までの若手期間だけだ。最悪の場合そこで悪い評価を得たとしても、それ以外の点で挽回する機会はいくらでもある。そして係長や課長になった時点ではこの評価基準は適用されなくなるのでほとんど問題はない。

人事評価の指標は会社からのメッセージである

 ここであらためて人事評価というものを説明しておこう。

 人事評価には、行動や能力を評価する基準が設定されることが多い。それらの基準は

「リーダーシップ」「チームワーク」といったマネジメントに必須のものや、「コンプライアンス遵守」「思いやりと誠実さ」のような意識面を重要視したもの、あるいは「自己研鑽」や「業務改善への貢献」というような成長を意識したものなどだ。先ほどあげた「社内コミュニケーション」は意識面を重視したものになる。

 ではこれらの基準に反する行動をとると即座に評価が下がるのか、といえばそうではない。行動や能力の評価基準は、結果に対して〇×をつけるものではないからだ。それらは会社が重要視していることについてのメッセージとして発信される。そして評価期間においてそのメッセージに基づく行動をとるチャンスは何度もある。だから仮に指標に反する行動をとったとしても、そのあとで改善して次にそうしなければ大丈夫だ。重要なことは評価指標にあらわれているメッセージをちゃんと理解している姿勢を示せるかどうかだ。会社行事への出席が評価基準にあったとしてもなお、挽回するチャンスはいくらでもある。

 しかし飲み会はともかく、全社員が集まる会社行事に参加したくない、とあなたが強く思うのであれば、それは別の理由から出世にマイナスに働くだろう。参加しないことに問題があるのではない。参加したくない、と思っているあなたの気持ちが出世に響いてくるのだ。

なぜ出世する人には、会社行事に出席し続けた人が多いのか

 たしかに会社行事を欠席したところで評価には影響しない。しかし課長から部長、役員に昇進していった人たちには、会社行事に出席し続けた人が多い。

 理由は二つある。第一に、会社行事に出席すると社内コミュニケーションが促進される。社内に知り合いが増えるし、彼らとビジネス以外の話をすることで人間性もわかってくる。ネットワーク論で語られる弱いつながりがそこで生まれる。一緒に運動会で汗をかいたり、バスの中でカラオケを歌ったり、宴会で気を抜いた姿で語り合う経験はオフィシャルな場面では生まれない関係性を作る。たとえ宴会の場で大失敗したとしても、会社行事で有名になることができればそれだけでその後の社内コミュニケーションに大きな価値を生むだろう。そしてそれこそが、会社が行事を催す目的だ。

 もちろん社内の知り合いが増えたからといって全員が出世するわけではない。会社行事に力を入れたところで日々の成果がすぐに高まるわけでもない。それよりもむしろプライベートをゆっくり過ごすことで次の激務に備えたい、と思っても不思議ではない。

会社行事に出席したくない、と思う心が出世を阻んでいる

 重要なことは第二の理由にある。会社行事に積極的に出席しているということは、すでに会社の中にネットワークを持っているということだ。会社行事は、新しいつながりを作る効果よりも、今存在するつながりを再確認し強化する効果の方を強く持つのだ。

 初めて出席する会合に知り合いがいないとなれば、誰だって出席を躊躇する。あなたが会社の人たちとのコミュニケーションを不要と考えたり、あるいは軽視したりするということは、あなたがネットワークをまだ持っていないからではないだろうか。

 会社行事を重要視しないということは、あなたが会社でつながりを作れていない可能性がある。そしてつながりが少なければ、成果に対する評価はされたとしても、出世に必要な評判や推薦は得られない。専門性において孤高の存在になることはできるかもしれないが、専門性のみを評価するビジネスは皆無だ。

 つまり会社行事に出たくないあなたは、会社に対する気持ちが冷めているのだ。そして会社に対して冷めた感情を持っている人が出世することはありえない。

社内の飲み会に出たくないなら、社外の飲み会に出る

 あなたがコミュニケーションを苦手とするのであれば無理をすることはない。しかしそんな場合でも、社内で親しくする人たちはいるはずだ。会社行事を欠席するのであれば、親しくしているその人たちとのコミュニケーションを増やすことは考えよう。

 人事制度設計の背景にある経済学では、これらのつながりを、「企業特殊的人的資本」の一部として定義する。反対の定義は「一般的人的資本」という。簡単に言えば、企業特殊的人的資本とは、その会社でしか通用しないスキルやつながりだ。反対に一般的人的資本とは、転職しても起業しても使えるスキルやつながりのことだ。

 多くの日本企業では、企業特殊的人的資本が重要視されてきた。なぜなら多くの人たちは定年までその会社で働き続けるからだ。日本で働く人の平均転職回数は欧米や他のアジア諸国などに比べて少ない。ほとんどの人は最初に入った会社で勤め続けようとする。そこでうまくやるためには企業特殊的人的資本が必要になる。それは社内の知り合いであり、お互いに何ができるかを知りあっている人間関係だ。

 どうしてもこのつながりを作れないタイプの人がいる。実は私自身にもその傾向があった。そういうタイプの場合にはどうすればいいのだろう。

 答えは一般的人的資本を積むことだ。

 理想としては自分に肩書きがなかったとしてもつながれる人たちと知り合うことだが、なかなかそうもいかない。むしろ肩書きをうまく使いこなす方が良い結果が出る。たとえば自分が一流企業の営業課長であるとすれば、その肩書きで出られる集まりなどに顔を出す。名刺交換をした相手とその都度連絡をとりあい、情報交換をするなど、方法はいくらでも考えられる。社外で知り合いを増やす交流会に出席したり、社外研修に出席する、あるいは社会人大学院に通うという選択肢もある。

 そうして一般的人的資本を積んだあなたが、なんらかのきっかけで社内で出世したとしよう。そうなったとき、あなたの気持ちとして、会社行事に積極的に出ることがあたりまえになっているはずだ。

要約
どの型の企業であっても飲み会や会社行事と評価は関係しない
会社行事に参加したい/参加したくないという思いは、自分自身の会社への関わり方をあらわしている
出世した人は会社行事を自分のものとしてとらえている

◇   ◇   ◇

平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。著書に3万部超のヒットになった『出世する人は人事評価を気にしない』のほか、『7日で作る新・人事考課』『うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ』がある。

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[日経Bizアカデミー2016年1月5日付]

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