カツ・うどん…専門家推薦「発祥の店」 東西20店
トンカツにすきやき、きつねうどん――。新しいメニューを生み出したり、今も味を伝えたりしている名店が全国にはたくさんある。そんなメニューが実際に食べられる店で、ぜひ1度は訪れてみたいと思わせるお薦めの店を専門家に聞いた。
<東日本>
著名人に愛される洋食の先駆け
初代はエビやカキなど様々な素材のフライも試し、新メニューを次々と生み出した。「どれもおいしい。香ばしいラードと衣のサクサク感、肉のジューシーさと3拍子そろう」(森脇慶子さん)。日露戦争で調理人が不足し、付け合わせを温野菜からキャベツに変えたのも同店の発想だ。(1)ポークカツレツ1400円(2)日(3)03・3561・3882
一口メモ 昔から池波正太郎ら多くの著名人に愛され、今も若手の歌舞伎俳優などが訪れる
初代は徳川家の鷹匠
一口メモ 谷崎潤一郎や4代目古今亭志ん生らもひいきに
外国人との交流がきっかけに
一口メモ 「プリン・ア・ラ・モード」もここで生まれた
「個室で楽しむ味噌だれの絶品『牛鍋』」(真鍋孝彰さん)(電)045・261・0636
「日本ではおなじみの素材とイタリアンの見事な合体」(門上さん)(電)03・3770・8305
麦飯とテールスープの組み合わせ(電)022・225・4641
甘辛タレで焼くロース肉(電)0155・22・1974
大人も注文できる(電)03・3241・3831
箸で食べる「河金丼」(電)03・3873・5312
1880年開業当時のままの店(電)0133・62・3011
<西日本>
いなりずしをヒントに考案
主役の油揚げはじっくり3日間かけて炊いたやさしい甘さが持ち味。手もみの自家製麺はもちもちした口当たりで、だしはあっさりしていて全部飲み干せるほど。3代目の芳宏さんは「おやじの背中を見て覚えた味は、昔から変えていない」と話す。店内ののれんには初代と先代の名前の一部である「要」と「辰」をあしらう。(1)きつねうどん580円(2)日、祝(3)06・6251・3339
一口メモ 鉄鍋でうどんとご飯を一度に煮込む「おじやうどん」も人気
具材たっぷり料亭の味
一口メモ もとはそばが有名で、漫画「美味しんぼ」にはそばすきで登場した
安くてうまい 庶民の味方
一口メモ 店主の病気で一度は閉店が告げられた。だが、俳優の赤井英和さんらが支援し今では10数店を展開
「子どものための賄いから生まれたのがうれしい」(大野尚子さん)(電)06・6308・4625
「特製ソースがカツのうまみをひきたてる」(大川哲次さん)(電)0776・21・4681
「どれもAクラス」(小林さん)(電)083・223・7181
ふわふわ卵が特徴(電)06・6211・7829
西洋料理と中華料理から考案(電)092・531・0031
身欠きにしんの甘辛さとだしの妙(電)075・561・1451
屋台生まれでボリューム満点(電)082・221・5438
表の見方 数字は選者の評価を点数化。店名、料理名、カッコ内は所在地(1)メニュー名とその消費税込み価格(2)定休日(3)電話番号
■誕生秘話がスパイスに
新しいメニューが誕生した背景には、料理人の創意工夫はもちろんのこと、お客さんの体調を気遣う心や客人からの要望なども少なくない。そんな誕生秘話や老舗の物語を知って往時に思いをはせれば、店での食事をもっと楽しめそうだ。
東日本では、1位の煉瓦(れんが)亭や4位の太田なわのれんにみられるように、明治時代の文明開化期に日本に紹介された西洋料理やそのアレンジで生まれた料理が印象深い。一方で西日本では、うどんや串かつなど庶民に親しまれたものから生まれた料理が人気だった。
メニューをたどると、複数の店名が挙がる場合もある。今回ランキングに掲載された店だけでなく、いろいろな店の同じ料理を食べ比べてみるのもまた楽しそうだ。
◇ ◇ ◇
調査の方法 専門家の意見などをもとに全国で新しいメニューを生み出したり伝えたりしているといわれる店のリストを作成。専門家11人に、読者にも1度は訪れてもらいたいお薦めを10位まで選んでもらった。メニューは食事となるものに絞り、(1)味や店の雰囲気(2)メニューが生まれた時のストーリー性(3)その後の日本の食に与えた影響の大きさといった観点から選んでもらった。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)
大川哲次(日本旅のペンクラブ理事)▽大野尚子(旅行ジャーナリスト)▽門上武司(フードコラムニスト)▽菊地武顕(ライター「あのメニューが生まれた店」著者)▽江弘毅(編集出版集団140B編集責任者)▽小林しのぶ(旅行ジャーナリスト)▽小松めぐみ(フードライター)▽志水隆(文芸春秋カメラマン)▽増田剛己(オールアバウト散歩と食のガイド)▽真鍋孝彰(フードアナリスト)▽森脇慶子(フードライター)
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