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タクシーの謎……なぜ大手4社は「大日本帝国」?

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

東京都内のタクシー大手4社のことを、業界関係者は「大日本帝国」と呼んでいるそうだ。大手4社とは大和自動車交通、日本交通、帝都自動車交通、国際自動車の各グループのこと。頭文字である「大」「日本」「帝」「国」をつなげると「大日本帝国」になるというわけ。

でも、なぜ「大日本帝国」なのだろうか?

やはり、単なる偶然の一致にすぎないのだろうか?

そもそも、大手4社はいつごろ生まれたのか?

あれこれと考えているうちに、好奇心が湧いてきた。そこで業界関係者に取材してみることにした。すると、「大日本帝国」の謎の背後に歴史に埋もれた意外な秘話が隠されていることが分かった。今回はこうしたタクシー業界にまつわる様々なウンチクについて取り上げてみたい。まずは「大日本帝国」の謎について解き明かしたうえで、さらに東京におけるタクシー勢力図や「どうせ乗るならば、黒塗りのタクシーに乗った方が得」という実用情報などについても紹介する。

社名に隠された戦時下の秘話とは……

取材に応じてくれたのは、東京都千代田区にある一般社団法人、東京ハイヤー・タクシー協会(東タク協)の秋山利裕・広報委員長。秋山さんは、チェッカーキャブグループ(チェッカー無線)に加盟する山三交通(東京・江東)の社長も務める業界の事情通である。

最初に業界の基本情報についておさらいしておこう。

皆さんは、全国にハイヤー・タクシーが一体、何台あるかご存じだろうか?

「全国のハイヤー・タクシーの総台数は24万6322台。その約2割にあたる5万872台が都内で営業しています」と秋山さんは話す。都内大手4社で保有台数が最も多いのが日本交通(3264台)。次いで国際自動車(3029台)、大和自動車交通(2390台)、帝都自動車交通(939台)。4社の保有台数合計は9622台。つまり、都内のハイヤー・タクシーの総台数(5万872台)の約2割、都内の法人タクシー(3万1092台)の約3割を大手4社が占めている計算になる。これがざっくりとした状況だ。

軍・政府による統制策が影響?

いよいよ、気になっていた疑問をぶつけてみる。

「ところで東京のタクシー大手4社の頭文字をつなぐと、どうして『大日本帝国』になるのでしょうか? ただの偶然ですか? それとも何か理由があるのでしょうか?」

秋山さんは手元の資料を眺めながら、ゆっくりと口を開いた。

「実は、戦時下の軍・政府による統制策が大きく関係しているようです……」

どうやら、時計の針を「戦時下」に巻き戻す必要がありそうだ。

「大日本帝国」の謎の核心に迫る前に、日本でタクシーが誕生してからの業界の歴史について簡単に振り返っておこう。

日本で最初に法人タクシーが誕生したのは1912年(大正元年)のこと。東京・有楽町の数寄屋橋際に設立された「タクシー自働車株式会社」が、料金メーターを装着したT型フォード6台で営業を始めたのがその最初だとされる。当時、自動車がまだ珍しかったこともあり、タクシーはかなりの人気を博していたようだ。

だが第1次世界大戦が終わり、不景気が到来した1921年(大正10年)ごろになると、不景気対策として車体を黄色に塗った「流し」のタクシーが登場する。それまでの主体は「車庫待ち営業」だった。1927年(昭和2年)ごろになると、市内1円均一という「円タク」が姿を見せる。料金が70種類以上とバラバラで客からの苦情が絶えなかったためだ。

「タクシーは戦力」戦争末期に集約命令

タクシーの営業は、運転免許さえあれば誰でもできる届け出制が基本だった。このため、戦争に伴う不景気にもかかわらず、地方から上京した労働者が大量に流入してタクシー台数が急増。値引き競争や客の奪い合いが激しさを増し、悪質業者が横行した。やがて、戦争の長期化で物資が滞るようになると、個人タクシーの営業が難しくなる。

「大日本帝国」の謎が生まれたきっかけは1944年(昭和19年)11月4日のこと。

太平洋戦争の戦況が悪化するなかで、警視庁が都内のハイヤー・タクシー会社の代表を集め、陸海軍の将校の立ち会いのもとで「輸送力は重要な戦力であるから、都内4500台のハイヤー・タクシーを4社に集約し、1社1000台以上を確保するように一日も早く実現せよ」と命令を下したのだ。当時、都内には56社の事業者が営業していた。

軍・政府による戦意高揚の思惑も

これを受ける形で翌年の1月に大和自動車交通(16社合併)と帝都自動車交通(9社合併)、3月に国際自動車(12社合併)、12月に日本交通が相次いで誕生。

こうして大手4社体制が形成されたというわけ。

日本は本土決戦に備え、「一億玉砕」の覚悟で太平洋戦争に総力を注ぎ込んでいた。それだけに、戦意高揚のために「大日本帝国」という名前を採用したのではないかと考えられている。

戦争末期、大手4社の「大日本帝国」に集約されたタクシーは重要産業、軍、政府などに重点配備され、時には今の救急車の役目も果たしたようだ。ただ、米軍機による攻撃にさらされ、結局、終戦時には千数百台のタクシー車両しか残らなかった。

戦後になると、4社以外にも様々な新興グループが生まれて離合集散を繰り返す。東京無線協同組合、チェッカーキャブ(チェッカー無線)、東都自動車、日の丸自動車、グリーンキャブ、共同無線タクシーなどは今でも都内でよく見かけるおなじみの社名。一方、大手4社も存続し、こうして現在の業界の構図が出来上がった。

「タクシー業界は、景気や行政の政策に大きく影響を受けてきた」と秋山さんは言う。

東京の法人タクシー台数は、2002年(平成14年)にタクシーの数量規制が廃止されたために大幅に増加し、08年(平成20年)にピークを迎える。だが、08年には一転して政府が供給抑制策にカジを切り、減少に転じた。東京の法人タクシーの輸送人員数は、景気動向の影響から07年以降は減少傾向にあるようだ。

山手線内は大手4社、西は東京無線、東はチェッカー……

では最後に、あまり知られていない業界のウンチクを披露しよう。

まず都内のタクシー会社の勢力図について。

業界関係者によると、(1)大手4社は企業の本社や繁華街などが集中する中央区、千代田区、港区、新宿区などJR山手線の内側に多い(2)東京無線は新宿や池袋よりも西側に多い(3)チェッカー無線は東京や上野よりも東側の地域に多い――という傾向があるという。つまり、山手線内では大手4社、東京西部では東京無線、東京東部ではチェッカー無線にお目にかかる確率が高いらしい。

特定地域に強いタクシー会社もある。例えば、コンドルタクシーは杉並、練馬、板橋、中野区などが地盤、荏原交通は城南エリア(品川、世田谷、目黒、大田区など)が地盤。地域密着が強みになっているわけだ。利用する場所によってタクシー会社の"密度"の濃淡が体感できるので、機会があれば検証してみると面白いだろう。

「黒塗り」に乗った方が得なワケ?

もう一つ豆知識。

「どうせ乗るのなら、黒塗りのタクシーを選んだ方が得」という"法則"があるのをご存じだろうか?

実は、黒塗りのタクシーは内装やサスペンション、タイヤなど車両の質が相対的に高く、優秀な運転手を乗務させる会社が多いという。「ハイヤーの代用として使いたいという要望が利用者から多いため」(秋山さん)らしい。

会社によって細かな規定は異なるが、黒塗りのタクシーだと通常よりも高級車種を使い、特別の試験をパスした運転手でないと乗務させないというケースが多いようだ。

ちなみに、秋山さんが経営する山三交通でも「黒塗りのタクシーは全体の4割強程度だが、車両の乗り心地は明らかに良いし、接客に慣れていない運転手を乗務させることはまずない」という。

もちろん例外もあるようだが、頭の片隅に入れておくと便利かもしれない。

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