常備用の缶詰 おいしくアレンジ 20の自慢レシピ
震災などに備え、非常食として缶詰をいくつも常備しているものの、実際に何通りもの調理法は知らないという人は多いのではないか。使い慣れてこそ、非常時に役立てられるというもの。缶詰をよりおいしく食べるための自慢レシピを読者に聞き、専門家に評価してもらった。
<素材の味を生かして>
サバの水煮を酢飯の上に載せた丼。「サバと酢飯の相性の良さを生かした」(池田陽子さん)。しょうゆをたらした大根おろしがサバ独特の臭みを抑えて、さっぱりした味わい。火を使わずに調理できる(=順位下にマーク)。
▼作り方 (1)サバ水煮の汁を除き、ネギやショウガ汁をサバに加える(2)ご飯1膳に、酢小さじ1、かりゅう状のだしのもと1つまみ、大葉の千切り、ゴマを入れて混ぜる(3)酢飯の上に(1)と大根おろしをのせ、しょうゆを少々かける <もうひと工夫>「時間がなければ、すし酢をご飯に混ぜてもよい」(小竹貴子さん)、「ミョウガやネギなど薬味で香り豊かに」(黒川勇人さん)
サケ缶を汁ごと使った煮物。「白菜とサケは相性がよい。魚の煮物があっという間にできて、主婦にはうれしい一品」(小竹さん)
▼作り方 (1)小鍋にサケ缶を汁ごと入れ、ざく切りの白菜と材料が隠れる程度の水を加える(2)しょうゆ小さじ1、酒大さじ1、砂糖小さじ1/2を(1)に入れる(3)適宜、春雨などを入れる <もうひと工夫>「オイスターソースを加えると味に深みが出る」(谷島せい子さん)
衣を付けず多めの油で焼く、サケ缶を使ったコロッケ。「揚げないのでカロリーが気になる人におすすめ」(池上正子さん)
▼作り方 (1)サケ缶は汁を切り、マッシュポテトと混ぜる。塩やこしょう、ネギや大葉の千切りを加えて小さく丸める(2)フライパンで焦げないように焼く <もうひと工夫>「マッシュポテトに、お湯や水を加えるだけでできる市販品を使えばさらに簡単」(町田えり子さん)
イワシの変わり手巻きずし。チップスの食感が面白い。
▼作り方 (1)サニーレタスの上にご飯やオイルサーディン、砕いたトルティーヤチップスを載せる(2)マヨネーズと黒コショウを加えて巻く <もうひと工夫>「レモンを搾るとさわやかに」(奥田和子さん)
ホタテ缶の汁をだし汁にした茶わん蒸し。
▼作り方 (1)茶わん蒸しの卵液にホタテ缶を汁ごと入れて蒸す(2)仕上げにゴマ油にしょうゆを少々加えたものをたらし、小口切りのネギを散らす <もうひと工夫>「ゴマ油をゆずこしょうに代えて和風に」(町田さん)
「豆腐との組み合わせでカニ缶の優しいうまみが生きる」(池田さん)
▼作り方 刻んだネギ、おろしショウガをいため、カニ缶を汁ごととさいの目に切った豆腐を加え、しょうゆで味付けする。
「多くの家庭で常備しているツナ缶と塩昆布で簡単にできる」(小竹さん)
▼作り方 炊飯器にツナ缶を汁ごとと塩昆布大さじ1、しょうゆ少々を入れて炊く。「キノコを加えても」(加納栄子さん)
焼いたオイルサーディンの香りが食欲をそそる。
▼作り方 オイルサーディン缶をフライパンにあけ、火を通してしょうゆを少したらす。ご飯の上に載せ、刻みネギ、七味、レモン汁をかける。
サバと香味野菜のセロリの組み合わせが絶妙。
▼作り方 サバ水煮缶の汁を切り、薄切りのセロリを加えマヨネーズであえる。「香り付けにシナモンパウダーを入れても」(タカイチカさん)
ホタテとダイコンをオリーブ油であえたさっぱりとしたサラダ。
▼作り方 ホタテ缶と千切りしたダイコンを皿に入れ、オリーブ油、レモン汁、塩、コショウをかける。
<野菜缶でヘルシーに>
大豆缶とちくわをヨーグルトであえた。
▼作り方 大豆の水煮缶は水を切り、約1センチ幅に切ったちくわを混ぜ、マヨネーズ大さじ1、ヨーグルト大さじ5、塩少々で味付けし、アオノリをふる。「ヨーグルトを水切りするとよい」(黒川さん)、「粉チーズやガーリックパウダーをたっぷりかけると風味豊かに」(町田さん)
風味の良いサラダ。
▼作り方 ミックス豆を水切りしたヨーグルトとあえ、クミンやカレー粉を加える。塩とコショウで味を整える。「ハーブを足すとよりエスニック」(池田さん)
ホワイトアスパラ缶で作ったスープ。
▼作り方 ホワイトアスパラ缶の中身をミキサーにかければ出来上がり。缶を事前に冷やしておけば簡単に冷製スープを作れる。
「トマト缶を調味料として使う好例」(黒川さん)
▼作り方 牛肉のこま切れと玉ねぎをいためて、トマト缶をつぶして絡める。カレー粉を味付けに入れて軽く火を通す。
「上級な地中海料理」(谷島さん)
▼作り方 ひよこ豆、キュウリ、トマト、セロリ、タコの足を細切りにし、オリーブ油、バルサミコ酢、粒マスタード、ハーブ、塩とコショウで味付け。
<おつまみ缶 もう一手間>
淡泊な豆腐と合わせることで、「味付けが濃い傾向にあるひじき煮缶をうまく使いこなしたよいレシピ」(池田さん)。「手間がかかりそうに見える和食料理が簡単に作れる」(タカイさん)
▼作り方 水切りした豆腐1丁にひじき煮缶を汁ごと入れて、混ぜ合わせる。「白ごまを散らすとさらにおいしい」(湯原一憲さん)、「ギンナンの缶詰を入れると手作り感が高まる」(加納さん)。
味の濃いサバみそ煮缶は長芋のとろろと一緒に食べるとほどよい甘辛さでのどごしもよい。
▼作り方 サバみそ煮を汁ごと器に入れ、長芋のトロロをのせ、小口ねぎをそえる。「焼きのりや練りワサビを加えるとアクセントになる」(監物南美さん)
塩味焼き鳥缶を具にした洋風サラダ。
▼作り方 ざく切りしたキャベツ、キュウリ、トマトにオリーブ油大さじ2、酢小さじ2、塩少々を加えて混ぜ、最後に塩味焼き鳥缶を加える。
食感が楽しいサラダ。
▼作り方 (1)レタス、食べやすいサイズに切った鶏の照り焼き、砕いたポテトチップスを混ぜる(2)オリーブ油を(1)全体にかけ、好みでレモン汁、塩、コショウをふる
イワシかば焼きと野菜多めのサラダ。
▼作り方 イワシかば焼きとスライスした玉ねぎ、ショウガの千切り、大葉を混ぜてぽん酢をかける。「イワシをさっと焼くと香ばしい」(町田さん)
表の見方 料理名。作り方は1~2人前の量。調理に火を使わないものは順位下にマーク。料理はレシピをもとに町田えり子さんが試作。
■塩分濃い品は一工夫して
ツナやサバなど素材の味を生かしたもの、サバみそ煮など調理済みのおつまみ缶、大豆の水煮などの野菜缶に分けてランキングにした。
注意したいのはおつまみ缶。長期保存できるように味付けが濃いものが多いため、葉物野菜と混ぜたり卵でとじたりと食べやすくするひと工夫が必要だ。また、非常時こそ普段から食べ慣れている味で乗りきりたい。家庭の味に近い缶詰を選んでおこう。
最近は高真空状態で蒸し上げたドライパック製法の缶詰も増えている。下準備に手間のかかる豆類などは手軽に使えて便利だ。
日ごろの食卓で缶詰を上手に取り入れ、使い慣れておこう。紙面ではいざというときを想定し、火を使わずに調理できるものにはマークを付けた。慌てずに済むレシピとして一度、試してもらいたい。
◇ ◇ ◇
調査の方法 8月上旬、日経新聞の読者で構成する「日経生活モニター」を対象に缶詰をアレンジしたレシピを募集。食材として使える「素材缶」、調味料で味付けをした「おつまみ缶」、野菜を詰めた「野菜缶」の3分野で聞いた。集まった119のレシピのうち、工夫がありおいしそうなレシピを専門家ら11人に選んでもらい、点数化して順位を付けた。選者は以下の通り(敬称略)
池上正子(料理研究家)▽池田陽子(薬膳アテンダント)▽奥田和子(甲南女子大学名誉教授)▽加納栄子(缶詰料理研究家)▽黒川勇人(缶詰博士)▽監物南美(栄養と料理編集長)▽小竹貴子(フードエディター)▽タカイチカ(缶詰料理研究家)▽谷島せい子(料理研究家)▽町田えり子(料理研究家)▽湯原一憲(きょうの料理テキスト編集長)
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