カキ、牛タン… 「ご当地レトルトカレー」ベスト10
地域の特産品を具にするなど、郷土色が豊かな「ご当地レトルトカレー」が人気を呼んでいる。定評のあるカレーを専門家に試食してもらい、ランキングした。
瀬戸内海産のぷりぷりの広島カキが丸ごと入ったぜいたくなカレー。大粒を1つずつ丁寧に冷凍することで形を保ち、ゆでたものをそのままルーに入れて密封している。研究を重ねて出来上がった中辛ルーは、いためたタマネギ、牛乳、バター、ココナツを入れたまろやかな味で、カキが持つ独特の臭みを抑えている。
「ふっくらしたカキの食感が心地良い」(小野員裕さん)、「カキのうまみと野菜の甘さがうまく融合している」(八巻宏さん)、「名物を余すところなく味わってもらおうという心意気を感じる逸品」(福地寧子さん)。
(1)200グラム(2)525円(3)0120・06・2565
牛タン焼き発祥の地、仙台の専門店で食べられる軟らかい牛タンがごろんと入っている。牛タンにルーの味がしっかり染み込み、口に入れるととろけるよう。ルーはフォンドボー(子牛からとっただし汁)をベースに、こだわりのスパイス、すりつぶしたトマトやリンゴ、バナナを加えている。
「牛タンが軟らかく抜群においしい」(香取薫さん)、「果実の隠し味がきいている」(町田えり子さん)、「完成度が高く価格が高いとは思わない」(渡辺玲さん)。
(1)180グラム(2)788円(3)0120・19・2498
ワイン造りで残ったブドウの搾りかすを飼料にして育てた「甲州ワインビーフ」のカレー。ルーにワインは入れていないが、封を切るとほのかにワインのような香りがする。しっかり煮込んだ肉は軟らかく、舌になじむ。ルーにも牛肉の脂を入れてコクを出し、リンゴペーストなどで甘みを出している。
「フルーティーな甘みとスパイスのバランスが絶妙」(笹木理恵さん)、「肉の下味がうまくついている」(飯塚敦さん)。
(1)200グラム(2)630円(3)055・277・0502
高級ブランド牛、飛騨牛がたっぷり入っている。カレー専用に牛を仕入れ、モモを中心に上質な部位を具にしており、口に入れた肉は自然とほぐれる軟らかさ。3年前に商品を刷新し肉のおいしさが前面に出るようにしたという。
「お米と食べたときに肉のおいしさがふわっと広がるように計算された絶品カレー」(町田さん)、「ルーの完成度が高く、このままホテルで出せそう」(香取さん)。
(1)220グラム(2)680円(3)0120・118614
大分名産の干しシイタケを丸ごと具にした和風カレー。傘が開ききる前に収穫した「どんこ」と呼ぶ肉厚のシイタケを使う。干しシイタケを戻して、肉や野菜と一緒にじっくり煮込んだルーにはシイタケの風味が溶け出し、シイタケにもルーの味がしっかり染み込んでいる。
「大きなシイタケがカレーに合って、コストパフォーマンスも良い」(小野健さん)、「シイタケのうまみをしっかり味わえる」(坪井元さん)。
(1)180グラム(2)315円(3)097・532・9142
熊本名産の辛子れんこんをイメージして作った黄色のカレー。具はシャリシャリ感を残した大きなスライスレンコン。ルーにもすり下ろしたレンコンを入れ、鶏のひき肉のほか、熊本人吉産の秋ウコンなどスパイスを重ねてインド風カレーに仕上げている。
「あっさりしたルーだが、レンコンの食感が生きている」(金谷拓磨さん)、「アジアカレーの入り口になるような本格カレー」(香取さん)。
(1)180グラム(2)630円(3)096・227・2222
北海道の人気店「マジックスパイス」が監修した札幌発祥のスープカレー。野菜と魚介のうまみが出たスープには特製スパイスが入り、鶏もも肉、チキンミートボール、うずら卵、キャベツやニンジンなど具が豊富に入っている。別添えのペーストと香辛料で辛みを調整できる。
(1)307グラム(2)420円(3)0120・041082
名古屋コーチン、薩摩地鶏に並ぶ日本三大美味鶏の一つともいわれる有名な比内地鶏を使ったカレー。心地よい歯ごたえの鶏肉とプルプルの皮を具で味わえる。なじみのある味のルーには地鶏のコクが出ている。「鶏のうまさが際立つスパイスの使い方が良い」(飯塚さん)
(1)200グラム(2)525円(3)018・870・6200
日本海で取れたイカをふんだんに入れた香り豊かなカレー。スパイスの効いたルーでイカをあえているような感じで、食べ応えがある。「イカの香りも良く、また食べたい味」(小野健さん)、「パンにのせてもおいしそう」(笹木さん)
(1)210グラム(2)630円(3)0778・51・6515
糖度が高く香りが良い淡路島のタマネギを使っている。ブランド牛の淡路牛が入り、まろやかな仕上がり。形がほぼなくなるまで煮込んだタマネギがルーに甘みを与えている。「たっぷり入ったタマネギがルーを滑らかにしている」(沢田けんじさん)
(1)200グラム(2)525円(3)0799・52・3005
全国に2000種、果物入りも人気
「ご当地レトルトカレーは全国に2000種類以上ある」。こう話すのは、カレー商品の開発などを手がけるカレー総合研究所(東京・渋谷)の所長、井上岳久さん。特産品の宣伝のために作られることが多く「その地域のレストランで同じようなカレーを食べられるとは限らない」(井上さん)という。
ご当地カレーを多く扱うスーパー「北野エース」を全国で展開するエース(兵庫県尼崎市)のバイヤー、小野健さんによると「最近はイチゴなど地域の果物を入れたカレーがよく売れている」
レトルトカレーは、白米以外のご飯と合わせてもいい。料理研究家の町田えり子さんは「ルーの風味を生かすには米2合にターメリック小さじ5分の1と塩2つまみ程度入れて炊く」と話す。
インド料理研究家の渡辺玲さんは「コリアンダーやクミンなどの香辛料やココナツなどが入っているルーはエスニック風で、塩とバターを加えたターメリックライスが特に合う」と説明する。五穀米や玄米などで試してもいいだろう。
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表の見方 数字は選者の評価を得点に換算。商品名、販売・製造者、特産物や有名店がある都道府県名の順。(1)1袋当たりの量(2)税込み価格(3)販売・製造者の問い合わせ先。ランキングの商品は販売・製造元のサイトや大手通販サイトなどを通じて購入できる。
調査の方法 ご当地レトルトカレーに詳しい専門家12人におすすめの商品をあげてもらい、2人以上の推薦があった18商品を専門家が試食。味、価格、ユニークさの3点を重視し、おすすめのものを順位をつけて選んでもらった。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
飯塚敦(カレーライター)▽小野員裕(フードライター)▽小野健(エース商品事業部グロッサリー部門東日本バイヤー課長)▽香取薫(インド・スパイス料理研究家)▽金谷拓磨(ご当地カレー通販サイト「地カレー家」主宰)▽笹木理恵(フードライター)▽沢田けんじ(料理研究家)▽坪井元(成城石井営業本部商品部グロサリー課主任)▽福地寧子(フードアナリスト)▽町田えり子(料理研究家)▽八巻宏(カレー総合研究所研究員レトルト担当)▽渡辺玲(インド料理研究家)
写真の調理は町田えり子さんにお願いした。
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