セルフチェックで分かる タイプ別腰痛体操
日経ヘルス
長時間パソコンに向かっていたら腰が痛くなった、荷物を持ち上げて激しい腰痛に襲われた。そんな経験がある人は多いだろう。
腰痛の引き金になるのは姿勢の悪さ。腰痛持ちは男女ともに多く、厚生労働省の国民生活基礎調査(2010年)では男性が訴える症状の1位、女性では肩こりに次ぐ2位が腰痛だ。
なぜこんなに多いのか。「実は腰痛の8割以上は原因が特定できない。しかし姿勢が悪かったり、長時間同じ姿勢でいたり、体を緊張させたりすることが腰痛の引き金になっているのは確かだろう」と、竹谷内医院(東京都中央区)の竹谷内康修院長はいう。
腰は上半身を支え、姿勢のバランスを保つ「肝心要」の場所だ。上半身の中心を通る背骨(脊椎)は小さな骨(椎骨)が連なってできていて、横から見ると緩やかなS字カーブを描いている。腰(腰椎)の部分では前方に自然なカーブを描いている「前弯(ぜんわん)状態」が、重い頭を支えたり、姿勢を保ったりするのに最適な形だ。
ところが座り姿勢が猫背になると、この前弯状態が崩れて腰が後方に曲がってしまう。このような悪い姿勢をとり続けると上半身の重さをうまく支えられず、腰椎や椎間板、関節、筋肉などへの負担が増えて腰痛が起こりやすくなる。運動不足で筋力が弱くなったり、加齢に伴って椎間板などの弾力性が低下したりすることも腰痛を引きおこす原因になる。
痛みによって違う3つのタイプ
腰痛の種類はいろいろあるが、どの姿勢で痛みが出るかによって大きく3つに分けられる。日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)脊椎整形外科の久野木順一部長によると「前屈すると痛くなる腰痛と、後屈すると痛くなる腰痛がある。椎間板ヘルニアは前者、脊柱管狭窄(きょうさく)症は後者に当てはまる」。
椎間板は背骨を構成する骨と骨の間でクッションの役割をしている軟骨。この一部が飛び出し神経を刺激するのが椎間板ヘルニア。神経の通り道である脊柱管が加齢などで狭くなり痛みを伴うのが脊柱管狭窄症だ。これに加えて急性の激しい腰痛である「ぎっくり腰(急性腰痛発作)」がある。ただし「実際には病名がつかない普通の『腰痛症』が圧倒的に多い」と久野木部長は指摘する。
あなたの腰痛はどのタイプだろうか。上の図のように、前かがみと後ろ反りを無理のない程度にやって痛みの状態を確認しよう。
前屈で痛むなら「壁押し」
腰痛対策の鉄則は実はとてもシンプル。「痛くなる動作を避ける、楽になる動作をする」(久野木部長)。これに尽きる。
例えば前屈で痛くなるなら、その動作を止めて腰を反らす動作をする。「うつぶせ反り体操」や「壁押し体操」がそれに当たる。逆に後ろに反って痛い人は、前に曲げる動作を行う。腰を効果的に前屈できるのが「ひざかかえ体操」だ。「痛みがひどいときも、これらの運動で楽になるのなら、やった方がいい。ゆっくりと痛みが出ないようにやるのがコツ」(竹谷内院長)
予防には姿勢の改善、「心因性」の場合も
痛みが過ぎ去っても、これらの体操は続けるとよい。「腰痛は繰り返す。それを防ぐためにも腰痛体操は有効。日常生活の中で腰に負担をかけない動作や姿勢を心がけることが大事」と久野木部長はいう。
荷物を持つときはいったん膝をついて腰を曲げないよう注意する、長時間座るときは腰が後方に曲がらないようにクッションや腰当てを使う、腰をひねった体勢のまま前後に強く曲げる動作を避ける、腰回りを支える腹筋や背筋を鍛える、といった注意点を常に頭の隅に置き、実践することだ。
痛みが長引く、何をやってもよくならないという腰痛の場合、不安やストレス、抑うつといった心の問題が背景にあることも考えられる。腰痛と心との関係は深く、原因不明の慢性腰痛の中には「心因性腰痛」がかなり含まれるといわれる。自分でケアしても改善の兆しがない、さらに悪化するといったときは医師に相談をしよう。ほかの病気が隠れている可能性もある。
西洋では「魔女の一撃」とも呼ばれる急性の激しい腰痛が「ぎっくり腰」。重い荷物を持ち上げた、呼ばれて振り返った、くしゃみをしたなど、ちょっとした動作をきっかけに発症する。「ぎっくり腰は『腰のねんざ』のようなもの。前かがみで腰をひねったときに起こるのがほとんど」(久野木部長)
動けないほど痛い場合は、楽な姿勢でしばらく安静にするといいが、少しでも動けるなら「壁押し体操」などを試してみよう。腰を反らす動作で痛みが緩和する可能性が大きい。ぎっくり腰は毎日の生活で少しずつ腰に負担がかかっていた結果の一撃。良い姿勢を心がける、腰痛対策の体操やストレッチを行うことが、予防につながる。
(日経ヘルス編集部)
[日経プラスワン2012年1月12日掲載]
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