通が選ぶ「取り寄せあんみつ」ランキング
汗ばむ季節に恋しくなるのがさっぱりとした和菓子、あんみつだ。インターネットや電話で取り寄せができる商品のうち、おすすめはどれか。和洋菓子に詳しい専門家に実際に食べてもらってランキングすると、個性豊かなあんみつが上位に並んだ。
豆菓子専門店のあんみつ。皮ごと潰して風味を引き出したつぶしあんの備中大納言をはじめ、虎豆や紫花豆、花白豆、赤エンドウ豆と、あんみつに使われている豆は全部で5種類。黒蜜は黒糖をメーンに和三盆糖、三温糖、ハチミツ、水あめ、ザラメの6種類を使ったさっぱりした味わい。寒天は国産テングサ100%。ぎゅうひは白玉粉と餅粉を練り合わせて蒸し上げた。発送は本州のみ。
「しっかりと存在感のあるつぶしあんに、栗や豆がぜいたく。やわらかいぎゅうひもバランスがいい」(神谷千佳代さん)「豆はゴロゴロ、フルーツもたくさんで、夏のおやつにぴったり」(松井一恵さん)
(1)1個472円(2)2日(3)03・3572・0013(本店)
くず餅の老舗。もっちりしたくず餅入りで、こしあんにはクコの実が2つ並ぶ。寒天は伊豆七島産など数種類のテングサを混ぜたもの。黒蜜はくず餅用の秘伝のもので、舟形の容器に好きなだけ使えるように、たっぷり入っている。沖縄産の黒糖の風味が濃厚で寒天にトロリとよく絡む。北海道、九州は発送日に制限がある。
「くず餅入りでちょっとお得感がある。寒天もおいしく、豆の塩味も加減がよい」(太田美代さん)「なめらかでツヤのある濃いこしあんとのバランスがいい。黒蜜の味もしっかりし、最後まで薄まることなくいただける」(平岩理緒さん)
(1)1個420円(2)3日(3)www.funabashiya.co.jp
ところてん専門店。あんみつに入っている角切りのところてんは、伊豆稲取の海女が手摘みでとったテングサを、富士山の伏流水である柿田川の湧水を使い、煮溶かして作る。独特の食感を楽しみながら、北海道産小豆による粒あんと沖縄産黒糖をたっぷり使った黒蜜でシンプルに味わう。酸っぱさを感じさせないリンゴ酸の保存液に浸したところてんは、日持ちも長い。
「ところてんのツルツル感やコシがとてもいい」(村山らむねさん)「海藻の香りが強く、コリコリとした歯触りのところてんに力強い黒蜜の香りが映える。素材の持ち味が生かされた潔い味」(下井美奈子さん)
(1)1個378円(2)30日(3)www.tokoroten.co.jp
茶葉を使ったスイーツの製造販売を手掛けている店。あんみつに使う抹茶は石臼ひきで、茶道で使うものと同じ。抹茶きな粉をまとったもっちりとした食感のわらびもちは存在感がある。北海道と九州は航空便で別料金がかかるほか、発送日に制限も。「抹茶を飲みながらあんみつを食べているよう」(鳥越美希さん)「抹茶の風味がしっかりしたゼリーはインパクトがある。あずきもふっくらしておいしい」(町田えり子さん)
(1)2個1050円(2)2日(3)www.kyo-hayashiya.com
お汁粉なども扱う甘味処。大きめにカットしたところてんからは、ほのかに磯の香りがする。ぎゅうひは白玉粉を銅鍋で練り上げ、あんは黒蜜をかけることを考えて甘さ控えめに仕上げた。丸2日かけてつくった赤エンドウ豆がアクセント。まん丸の煮あんずもさわやか。発送から丸2日かかる地域は除く。「大きめの寒天は食べ応えがあり、テングサの風味がしっかりしている」(町田さん)「懐かしくて、ほっとするやさしい味」(松井さん)
(1)6個2400円(2)3日(3)www.kawagoesansaku.com/akariya
京都で抹茶スイーツを扱う店。あんは丹波大納言の粒あん。石臼ひきの宇治抹茶をふんだんに使い、人気の抹茶ゼリーがたっぷり。濃厚な抹茶蜜が、もちっとした食感の白玉や癖のない寒天を引き立てる。発送は北海道や北東北、九州の一部は除く。月曜着は不可。「抹茶の風味がよく、苦みもほどよい。抹茶を楽しむデザートとして完成された味」(下井さん)「抹茶味が好きな人に喜ばれそう」(太田さん)
(1)2個1470円(2)3日(3)www.itohkyuemon.co.jp
東京・上野に本店を構える甘味処。さらっとしたこしあんは北海道十勝産の小豆を銅釜でじっくり煮て作る。沖縄県八重山産の黒糖で時間をかけて作る蜜はさらりとしている。発送は沖縄を除く。「豆の塩加減がやや強く、ホクっとして存在感がある。なめらかでツヤのあるこしあんとバランスがいい」(平岩さん)「黒糖だけの黒蜜とは違う、淡い蜜が絶品。正統派のあんみつ」(原亜樹子さん)
(1)6個2720円(2)3日(3)www.mihashi.co.jp
生寒天専門店。静岡県の伊豆地域の4種類のテングサをブレンドして作る寒天は、コリコリとした食感と磯の香りが楽しめる。ぎゅうひは餅粉100%。5人分のセット商品は保存液に浸した状態で届き、賞味期限が1カ月と長い。「シンプルながら、バランスがよい。寒天のおいしさが際立っている」(原さん)
(1)1個420円(2)6日(3)www.sanukiya.co.jp
東京・浅草の雷門近くの甘味処。寒天はテングサ100%を原料とし、コリコリとした食感で、パステルカラーのぎゅうひが涼やか。こしあんはなめらかで黒蜜との調和がとれている。割れないように炊き上げた十勝産の赤エンドウ豆が好評。北海道や九州などへの発送は応相談。「塩豆がたくさん入っていて、豆好きにはおすすめ」(平岩さん)
(1)1個480円(2)2日(3)www.asakusa-izumi.co.jp
生麩(ふ)餅が自慢の京都の和菓子店。白玉の代わりにヨモギとショウガ風味の生麩餅を入れたところ、あんみつが人気商品に。寒天は生菓子にも使う丹波寒天を使用。沖縄産の黒糖を使った黒蜜をかける。「生麩がもちもちでとてもおいしい」(鳥越さん)「小豆の粒の具合がほどよく、蜜とも相性がいい。寒天ののどごしもいい」(神谷さん)
(1)1個399円(2)4日(3)www.sanshodo-ogura.co.jp
食感、彩り 個性あふれる
あんみつは東京・銀座発祥の「東京ご当地スイーツ」だ。1930年ごろ、つるんとした角切り寒天と塩気の利いた豆が主体の「みつ豆」にあんをのせたのが原形。あんみつ人気は各地に広がり、アイスクリームや抹茶、フルーツなど、組み合わせ自由な和スイーツになった。
1位と2位はそれぞれ老舗の看板となる具材が入っている。1位の「鹿乃子あんみつ」は豆菓子専門店の銀座鹿乃子ならでは。ほっくりとした5種類の豆を入れ、異なる風味が楽しめる。2位の船橋屋「特製くず餅入りあんみつ」は、濃厚な黒蜜をたっぷりとかけてくず餅とともに味わう。
ところてんや寒天の食感にもこだわりたい。ところてんは、海藻のテングサを煮出して抽出した成分を固めたもの。あんみつに使う寒天は一般に、ところてんを凍結、乾燥させたものを煮溶かして固めて作ったものだ。
テングサに由来するコリコリとした歯応えや磯の風味が楽しめるのは、3位の心太の伊豆河童、5位の甘味処川越あかりや、8位の寒天工房讃岐屋。伊豆河童とあかりやはところてんをそのまま使う。寒天専門店の讃岐屋は、季節や温度によって産地の異なる4種類のテングサから作る寒天を入れ、風味を豊かにしている。
東京の甘味処の正統派あんみつが並ぶなかで、独特な彩りや味を楽しめるのが抹茶や生麩(ふ)を使う京都のあんみつ。4位の京はやしや、6位の伊藤久右衛門は、茶道で使う石臼ひきの抹茶を使う。口いっぱいに抹茶の清涼感が広がり、目にも涼しい。
短い期限、受取日時 指定して
取り寄せあんみつは、カフェや喫茶で食べる商品を持ち帰り容器に詰め、発送するようになったものが多い。ほぼそのままの味を保つため、保存料などは使わず、製造日からの日持ちが短い。各店とも注文の際に商品の受取日時を確認し、受け取りに2日以上かかる地域の注文は受け付けないことが多い。
航空便が少ない曜日もあり、受取日の指定にも制限がある。離島や北海道、東北、九州などの一部地域は確認しよう。
伊豆河童と讃岐屋の5人分の商品は、食感や味を損なわない保存液を使い、日持ちが1カ月と長い。
冷蔵便を使うため、送料は高め。数個まとめて注文したほうがお得だ。
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表の見方 数字は選者の評価を点数化。商品名とブランド名または店名、本社・本店の所在地(1)注文できる最小単位と価格(箱代と送料別)(2)製造からの日持ち(未開封)(3)本社・本店のホームページ(http://は省略)や電話番号
調査の方法 ネットなどで取り寄せできるあんみつのうち、和洋菓子に詳しい複数の専門家の意見や発送可能な数量を考慮して23品目を選出。試食をして「取り寄せをおすすめしたい順位」をそれぞれに付けてもらい、全体の順位を決めた。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。
太田美代(和菓子雑誌編集者)▽神谷千佳代(「スイートネットワーク」代表)▽清水好夫(日本スイーツコンシェルジュ協会代表)▽下井美奈子(スイーツコーディネーター)▽鳥越美希(日本茶インストラクター)▽原亜樹子(菓子研究家)▽平岩理緒(「幸せのケーキ共和国」主宰)▽町田えり子(料理研究家)▽松井一恵(フードアナリスト)▽村山らむね(通販評論家)
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