ライフコラム

臼井流最高の話し方

怒りとどう向き合う? 感情を爆発させない3つの方法

2017/5/17

怒りの感情をストレートにぶつけると、いさかいが深まりがちだ PIXTA

 人は感情の生き物です。常に冷静沈着で、平常心を保っているように見える人であっても、心の中では「喜怒哀楽」の感情が渦巻いているはずです。私自身、めったなことでは怒りませんし、人前で涙を流すことはしません。怒りや悲しみの感情を外に吐き出せば、自分の気持ちは晴れるかもしれませんが、人の心を暗く悩ませるからです。

 ですから、喜びや楽しみなど人の心を明るくさせる感情は表に出しても、怒りや悲しみなどマイナスの感情は、できる限り見せないと決めています。だからといって、私は始終我慢をしているわけではありません。ルール違反で許せないことや道理に合わないことをされたら、怒ります。

 ただし、感情のおもむくままに、怒りを相手にぶつけることはしません。そんなことをすれば、収拾できない事態が生じかねないだけでなく、自分も許せないことをしている「相手」と同じレベルの人間になってしまうと思うからです。

 友人に向けて怒りを覚えたら、口にはしないが、心の中で「こらしめてやれ」「失敗すればいい」などと唱えるという人がいます。冗談半分の話だとは受け取っていますが、それは怒りをしずめポジテイブな気持ちに導く方法だとは思えません。私の経験則ですが、人が耳にして不愉快になるようなことを考えると、後から自分も嫌な気持ちになります。相手のミスや不運をわずかでも願うと、それが現実になったり自分にもよくないことが起きたりするものです。

■怒りをコントロールし、意思を正確に伝える3つの方法

 38歳のときです。私が提案する商品にことごとくだめ出しをする、通信販売のバイヤーさんがいました。相手の求めに応じて手直しをすると、以前のスタイルのほうがよいと言う。そこで前のものを出すと、やはり新しいものがいいと言う。

 デザインや色、大きさを変更し、パッケージや価格を見直していけば、お客様に喜んでいただける商品になるのは理解していますが、「お天気屋さん」ともいえる対応に業を煮やした私は「無理につきあっていただかなくても構いません」と切り出しました。開発費にも限界があります。

 すると、「無理につきあってはいない。ただピンとこないだけ」。私も若かったのですね、その言葉にあきれて「お取引していただかなくても結構です」と退席をしました。「あんな人、どこかに飛ばされればいいのよ」と念じながら。そして半月後、実際にその人は遠隔地の営業所に左遷されたのです。

 偶然かもしれませんし、別の問題が影響しての異動かもしれません。でも、後味の悪さといったらありません。罪悪感が広がる一方でした。

上司や先輩が怒る場合は言葉や態度に細やかな配慮が欠かせない PIXTA

 この件があってから、「怒りとどう向き合うか?」を真剣に考えるようになりました。試行錯誤しながら20年余りがたちましたが、今では次の3つのポイントに気を配りながら伝えています。

怒りはためず、そのつど相手を追い込まないような言い方で伝える
正論を伝えてから、やんわりと自覚を促す
怒りを伝えたあとの「フォロー」を怠らない

 この3つを意識すると、怒りをコントロールしやすくなるうえ、相手も聞く耳を持ってくれます。

■腹立ちまぎれの怒声は逆効果 ソフトに自覚を促す

 「何年、うちで仕事しているの!」「君には失望したよ」では、相手を追い込むだけで反省や分析につながりません。やる気を鼓舞することはできませんが、「どうしたの? ●●さんらしくないな」「わからないことがあるのならば、いつでも相談してね」と伝えれば、自分も相手も冷静になって事態の収拾に取り組みやすくなるでしょう。

 「常識がないね」「毎回遅刻するなんて、何様だと思っているの?」と伝えれば、自分はすっきりするかもしれませんが、角が立ちます。仕事ができる人に遅刻常習者は少ないと思いますが、肝心なときになぜか遅刻するという人はいます。

 そういう人は自覚しているはずですから、先のように言われたら自尊心を傷つけられ、かえって逆効果になってしまいます。そこで、「ルールだから、守らないとね」「約束は守るのは当たり前。できないと、それだけで誤解されてしまいますよ」と正論を伝えて、「遅刻する」ということが本人の評価をどれほど下げるかについて、さりげなく相手にプレッシャーを与えながら、自覚を促す法を私は選んでいます。「それだけで誤解されてしまいますよ」の効き目は、大きいものです。

 怒りたいだけ怒って、乱暴に言い放ち、そのまま放置していては、相手は立ち直れません。禁句は「もうこれ以上言わせないで」「これ以上、私を怒らせないで」です。

 相手が部下ならば期待しているから厳しくする。能力を見込んでいるからこそ、怒りもするという姿勢を示すといいでしょう。「少し厳しく言い過ぎたね」「●●さんに期待しているからこそ、厳しい物言いになるんだよ」。そんなふうに伝えたら、期待に応えようと奮起するはずです。

 怒ったあとは、やさしい言葉を添えましょう。俗に「アメとムチ」と言いますが、厳しい人がときに優しく接してくれると、感激するという経験は誰しもあると思います。上司や先輩がそんな人ならば、信頼できると思うに違いありません。「アメとムチ」は、怒りを伝える場合だけでなく、人が人を管理するときに、使われる方法。なお、怒った後に追いうちをかけるような発言をすれば、今や「パワーハラスメント」として問題になることもありますから、気を配りましょう。

 次回は相手の心のエネルギーを高める「ほめ方」です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は5月24日の予定です。

臼井由妃
 ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(php文庫) 公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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