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サバ缶、郷土料理や旬の味に 水煮は隠れた万能食材?

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NIKKEI STYLE

5月下旬になると我が家最寄りのスーパーマーケットの野菜売り場にはサバの水煮の缶詰が山積みとなる。それを見ると「ああ、初夏になったんだなぁ」と感じる。

「は? 何いってんの、この人。缶詰に季節感なんてないでしょ」

「ってか、なんで缶詰が野菜売り場?」

そう思った人も多いかもしれない。私が住む信州では、この季節になると「根曲竹(ねまがりたけ)」という細いタケノコが採れるのだが、これの一般的な食べ方が「根曲竹とサバ缶の味噌汁」。だから、スーパーでは根曲竹の横にサバ缶がセットになって置かれることも多い。

いまでこそサバ缶に季節感を味わっている私だが、信州に移住して最初にこの味噌汁の存在を知ったときには、かなりのカルチャーショックを受けたものだ。関東出身の私にとっては味噌汁に入っている魚といえば、カツオやイリコなどだしとして使うもの。魚の中でも生臭いといわれる青魚の「身」が具として入っていることも驚きだったが、味噌汁、郷土料理というジャンルに「缶詰」が使われていることも大きな衝撃だった。

だが、長野県の地形を考えるとそれも納得。

山に囲まれた「海なし県」信州では海の魚はぜいたく品。戦前はサバ缶も特別な日に食べる「ごちそう」だった。この根曲竹の味噌汁も戦前は川魚や身欠きニシンなどで作られていたが、戦後、安く手に入るようになってサバ缶を入れるようになったという。長野県の木曽地方ではウドの味噌汁にサバ缶を入れた郷土料理「ウド汁」もあり、そこには長野県民の強い海への憧れ、海の魚への愛が見てとれる。

信州生まれ信州育ちの友人たちにサバ缶について聞いてみると、熱い「サバ缶トーク」が始まった。

「根曲竹のシーズン以外でも、うちは1年じゅうサバ缶常備してるよ」

「うちもそう。それも『サバの味噌煮缶』でなく『水煮缶』ね」

「そうそう、それだけでもおかずになるし、汁ごと入れればだしになるし、応用きくのがいいんだよね」

「そうそう、カツオ節でダシをとらないでも缶汁入れればすむのが便利」

「味噌煮だとそれできないしね。うちはサバ缶に大根おろし乗せてしょうゆかけるのが好き」

「あ~、それおいしいよね。あと、サバ缶のオジヤもおいしい」

「げっ、うちはオジヤにサバ缶入れないよ」

「えっ、入れないの? それってうちだけ?」

「わからないけど。ま、ご飯にはのせるね。あ、私こんな本持ってる。『サバ缶ダイエット』!」

って、どんだけサバ缶好きなんかーいっ! 千葉県出身の私にとっては備蓄する魚の缶詰といえば「ツナ缶」であり、途中で「ツナ缶」派として反撃を試みようとしたが、話を聞くにつけ、なるほどサバの水煮缶は優秀だと思うように。

ツナのオイル漬け缶詰はサラダにはなるが、味噌汁にはならない。その点、サバの水煮缶はサラダにも味噌汁にもなる。洋食にも和食にも合う。これがサバの味噌煮やサンマの蒲焼きの缶詰だと洋食にアレンジするのはちょっと難しい。そして、なにより安い!

ちなみに「サバ缶ダイエット」(2013年 主婦と生活社)とは、俗にいう「やせるホルモン」が豊富なサバ缶を使ってのダイエットを提案した本。サバの塩焼きだと成分を多く含む脂が下に落ちてしまうため、脂まで余すことなく食べられるサバ缶がダイエットに向いているのだとか。

移住当初は驚いたサバ缶を使った郷土料理だったが、実はほかの地域にも存在していることも分かった。

たとえば、山形県で食べられる「ひっぱりうどん」(地域によっては「ひっつりうどん」)もそう。ゆでたうどんをサバ缶と納豆を入れたつゆにつけて食べるものだ。山形県も海に面した庄内地方を除き、山深く、かつては海の魚が貴重品だった。これもやはり海がない地域ゆえの海の魚への渇望といえそうだ。

山形市(内陸部)出身の友人は「サバ缶愛なら山形県民も負けていませんよ。うどんだけでなく、そうめんを食べるときにもつゆにサバ缶と納豆を入れます。もちろん我が家は1年を通してサバ缶を備蓄してます」という。サバ缶入りそうめんは食欲が落ちる夏でもきちんと動物性たんぱく質を摂取するための先人の知恵なのだろう。

興味深いことに彼女の住む地域ではこのシーズン「根曲竹とサバ缶の味噌煮」を食べるという。長野県と山形県、汁ものと煮物の違いはあれど、素材はまるで一緒。場所が隔たっていても「海なし」地域同士、「根曲竹」と「サバ」と「味噌」が合うと思う感性が同じだということに驚く。

さて、海なし地域に偏愛されるサバ缶だが「海あり地域」でも郷土料理に使われ、大量消費されていることをご存じだろうか。

京都府の丹後地方である。ここには「ばらずし」という郷土料理があり、サバ缶を甘辛味に炒った「おぼろ」が具に使われる(家庭によりしょうゆ味のサバ缶が使われることも)。正月やお祭り、誕生日など人が集まるときにふるまわれるので、この地域だけビッグサイズのサバ缶が売られているという。

なぜ日本海に面したこの地域でわざわざサバ缶が使われるのか? もともとばらずしのおぼろは生のサバを焼いて作られていた。が、昭和30年代に近海のサバの漁獲高が極端に減ってしまい、以来、代用品としてサバ缶が使われるようになったという。

サバ缶は値段、料理の汎用性、健康の面で優れているだけではない。年間を通して安定供給できるという側面でも優れたアイテムだったのだ。

サバ缶は郷土料理の危機をも救う。サバ缶でサバイブだ!

そして、サバイブといえば、昨今防災の面から注目されている「ローリングストック法」をご存じだろうか。缶詰や乾物などを多めにストックしておき、賞味期限の早いものから消費し、使ったら新しいものを買い足していくという食料備蓄方法だ。

「いざ食べようと思ったら賞味期限切れ」ということをなくし、ローリングストック食品の食事づくりが非常時の調理の予行演習にもなるというもの。すべての面において優秀なサバ缶、ぜひご家庭にストックしてはときに調理し、サバイバルな局面に備えていただきたい。

(ライター 柏木珠希)

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