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私の課長時代

一筋縄でいかない経営統合、「良い方に統一」にならず りそなホールディングス社長 東和浩氏(下)

2017/5/14

■1991年に東京の日本橋支店に配属。バブルが崩壊し、不良債権問題の影が忍び寄っていた。

 日本橋支店では中小企業取引の経験を積みました。当時、大変だったのは審査部門から「撤退」の指示を受けたことです。取引先の課題を踏まえ融資の縮小を求めたのですが厳しい交渉になりました。

 93~98年は本社の総合企画部に在籍しました。関連ノンバンクなどの不良債権処理が重いテーマになった時期です。それまで銀行は赤字計上に強い抵抗感がありましたが、赤字覚悟で処理が必要だと認識を改めました。

 不良債権問題の核心は銀行の体力を上回る融資や特定の大口先への集中です。りそなが個人や中小企業取引に照準を絞っているのは「小口分散」の必要性を強く感じたからです。大口融資は一見効率的ですが、小口でコツコツ取り組むほうが収益も安定し、地域密着にもつながります。

■不良債権処理で体力をすり減らした銀行は大再編時代に突入する。

ひがし・かずひろ 1982年(昭57年)上智大経卒、旧埼玉銀行(現りそなHD)入行。2003年執行役、09年副社長、13年4月から現職。福岡県出身。

 91年の埼玉銀行と協和銀行の合併には関わっていません。合併後に発足したあさひ銀行と東海銀行(現三菱東京UFJ銀行)の統合交渉で財務関連の実務を担いました。この話は実現しませんでしたが、銀行再編の大きな流れにはあらがえず、あさひ銀行は2002年に大和銀ホールディングスと経営統合してりそなグループが発足しました。

 銀行の統合で大変なのはシステムの問題です。コンピューターを接続するだけと思われがちですが、事務もすべて変わり、何万人もの従業員の日常業務に影響します。単純に「良い方に統一しよう」とはならないんです。

 統合では論理的に物事を進めることが最も大切だと学びました。企業には理屈に合わないことが「文化」として残っていることもありますが、これを守ろうとするほど再編は進みません。一人ひとりの腹に落ちるように話を進めることが肝心です。統合相手には敬意を示し、強みを生かすことも重要だと思います。

■りそなは03年の実質国有化と同時に改革の推進役としてJR東日本出身の細谷英二氏(故人)を会長に迎えた。

 細谷さんは決めたことは絶対に譲らない人でした。銀行窓口の「待ち時間ゼロ運動」を始めるときのことです。私は「できないことを宣言しても現場が混乱する」と反対しましたが、細谷さんに「そんな発想だからダメなんだ」と烈火のごとく怒られました。

 目標を立てて外部に発信し、自らを追い込まないと物事は変わりません。「待ち時間ゼロ」も方向感さえ定めれば、実現に何が必要か考え、突き進むことができます。改善ではなく改革を進めるための細谷さんの手法を、「24時間365日のサービス」を掲げる私も引き継いでいます。

<あのころ>
 自己資本不足に陥ったりそなグループは2003年5月、公的資金の注入を申請。実質的に国有化され、「りそなショック」と呼ばれた。経営再建に向け、営業時間拡大などサービスの向上と事務コストの削減を追求して収益力を回復。一時3兆円強あった公的資金を15年6月に完済した。

[日本経済新聞朝刊2016年7月12日付]

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