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アスパラガス、緑か白か ソフトな缶詰、懐かしい食感

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NIKKEI STYLE

「ねえ、アスパラ何本くらい食べる?」

若かりし頃、友人の家に泊まった翌朝、朝食を作りながら彼女が尋ねてきた。キッチンからはバターのいい香り。ははん、朝からアスパラバターを出してくれるつもりだな。アスパラガスは大好きだし、アスパラバターは大好物だ。私はウキウキと「何本でも食べられるよ~。あるだけ出しちゃって」と答えた。

ほどなく「お待ちどうさま」と運ばれた皿を見て仰天した。え? 白い?

なんと彼女がバターで炒めていたのは、缶詰のホワイトアスパラだったのだ。しまった、最初に確認すればよかった。グリーンアスパラなら何本でもイケるが、缶詰のホワイトアスパラは大の苦手。私は山盛りのホワイトアスパラを前に、すっかり途方に暮れてしまった。

幼い頃、私はとても好き嫌いの激しい子供だったそうだ。朝ごはんに出されたものが、昼になってもまだ飲み込めずに食卓で泣いていたと、母親はよくこぼしていた。

成長するにつれ嫌いなものがひとつずつなくなり、気づくとなんでも食べるよいこになっていた。いくつか残った嫌いなものは、ベチャベチャのご飯や、甘すぎる煮魚など、調理に由来するものがほとんど。それとて食べられないほど嫌い、という訳ではない。ただ缶詰のホワイトアスパラだけは、どうしても飲み込めなかったのだ。

昭和の洋食屋のマストアイテムに、缶詰のホワイトアスパラがあったことを覚えておられるだろうか。単品のミックスサラダに、はたまた肉料理の付け合わせに、それはいつもうやうやしく鎮座していた。生まれたときからグリーンアスパラを食べてきた若い方には実感が沸かないかもしれないが、そもそもホワイトが先にあったのだ。いやホワイトしかないという時代があったのだ。

大正11年に始まったホワイトアスパラ栽培と比べ、グリーンアスパラの歴史は意外に新しい。栽培が増えてきたのは1970年代、ホワイトとグリーンが逆転するのは実に80年代も終わりになってからだ。しかし今では、流通量の大半がグリーンアスパラである。

ちなみに、グリーンとホワイトは基本的に同じ品種で、芽が出た後、土を盛って日光に当てずに育てると白くなる。缶詰は、ホワイトアスパラを水煮にした物だ。

面白いことに、古くからアスパラガスを食べてきたヨーロッパでは今でもホワイトが主流。アスパラガス専用鍋や専用トング、目玉焼きをソース代わりに食べる定番料理「ミラノ風」の専用皿まであり、アスパラガスがいかに愛されているかがうかがえる。春の収穫を心待ちにし、出回り始めたらそれっとばかりに大量に詰め込むその様子は、日本のサンマや、イカナゴをめぐる狂想曲のごとくである。

一方、比較的最近になってアスパラガスを栽培し始めたアメリカやメキシコなどの「アスパラ新興国」は、グリーンが主力。ただし全世界でならすと、グリーン vs ホワイトはほぼ拮抗している。

日本でのアスパラガス産地といえば、昔から北海道、そして長野が有名だ。ところが今メキメキと生産量を上げているのが、佐賀県である。全体の生産量もすでに長野を抜いて2位、単位面積当たりの量は北海道の10倍近くにもなり、もちろん日本一である。

収穫量がびっくりするほど多い秘密は、長期どりにある。北海道のように年に一度だけ収穫する露地栽培と違い、ハウスで育てることにより春から秋まで何度も収穫し続けることが可能となる。もともと単価が高く「稼げる野菜」だったアスパラガスは、長期どりによって「スーパー稼げる野菜」となり、佐賀県以外でも路地からハウスへ転向する農家も多い。

長野にある実家の隣はアスパラガス畑だった。そこから根が伸びたか、タネが飛んできたものかはわからないが、うちの庭にもアスパラガスがモサモサと生えている。アスパラガスはいったん根づいて株が充実してしまえば、何もしなくても次々と生えてくる野菜。季節になると毎日のように収穫できるため、帰省時は朝ごはんの前にまずアスパラガスを収穫するのが、嫁である私の仕事だ。

鍋を火にかけてから庭へ降り、程よい長さのをちょいちょいと10本ほど採って戻れば、ちょうどお湯が沸いている。皮をむくのももどかしく、ぽいぽいとお湯の中へ。贅沢な朝ごはんだとは思わないか。

採れたてだからもちろんうまいに決まっているのだが、さらにおいしく茹でる秘訣がある。それは、硬いからとカットした根元の部分や、むいた皮も一緒に茹でること。こうすることで、アスパラガスの香りがより強くなる。

おっと、茹で汁も捨ててはいけない。アスパラガスの茹で汁は旨味たっぷりで、皮などを濾せばスープや味噌汁にそのまま使えるのだ。義母などこの茹で汁を使ってご飯を炊くこともある。アスパラガスの旨味と香りが米に染み込んだ、贅沢なアスパラ飯が出来上がる。ぜひ試してみてほしい。

さて「どうしても飲み込めない」ほど険悪だった缶詰ホワイトアスパラとの仲は、その後どうなったか。

それが実にあっさりと雪解けを迎えてしまったのである。大人になってだいぶたったある日、ふと思い立って食べてみた缶詰ホワイトアスパラは、するりとおいしく飲み込めた。そう、あれはおいしいものだったのだ。そうでなければ世界中でせっせと生産している意味がないではないか。

今は日本でもフレッシュのホワイトアスパラが多く流通するようになり、イタリアンやドイツ料理店などで本場のおいしさに触れる機会も増えた。私と同じように、子供のころ缶詰ホワイトアスパラを嫌いだった人は、まずフレッシュから食べてみるといいだろう。グリーンとはまた違うおいしさのトリコになるだろう。

そしてフレッシュが気に入ったら、思い切って缶詰も試してみて欲しい。好き嫌いが多かった、自分幼年期の終わりを知ることができるかもしれない。

(食ライター じろまるいずみ)

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