桜えび、GWが旬ど真ん中 漬け丼に、希少な生食も
旬の味、桜えび。3月に始まり6月には終わる春の漁は、ゴールデンウイークの時期が最盛期。まさに今が旬だ。
桜えびは非常にデリケートで、最近でこそ輸送手段もできつつあるが、いけすなどで生きたまま運ぶことはほぼ不可能だ。傷みも早いため、生は獲れたその日のうちがほぼ「消費期限」。そのため、一般には冷凍したり、干したりして流通している。
冷凍は、解凍して刺し身やかき揚げなどで、干しえびはお好み焼きややきそばに入れて食べたりする。全国で食べられているが、実は桜えび、ほぼ静岡県産だ。駿河湾のほか東京湾や相模灘にも生息するものの、静岡県だけが漁業の営業許可を認めているので、お店や飲食店で手に入れることができる桜えびは、静岡県産のものということになる。
そんな駿河湾の桜えび漁の一大拠点が静岡市の由比漁港だ。駅前を通る旧東海道には、桜えびのオブジェがのったゲートも設置されるなど、桜えびのまちとして全国的知名度を誇る。
JR東海道線由比駅を下りて線路沿いに数100メートル歩き、海側へ出ると、そこは由比漁協の直売所だ。ここで、由比産の桜えびが買えるとともに、直営の食堂「浜のかきあげや」で桜えび料理を食べることもできる。
地元おすすめの桜えび料理を聞いたところ「基本はかき揚げ」とのこと。
生桜えびがたっぷり入ったかき揚げがフライヤーの油の中で、ぱちぱちとおいしそうな音を立てている。「浜のかきあげや」のメニューの中でも、まず食べてほしいのがかき揚げ丼なのだそうだ。
殻の香ばしさが食欲をそそる。
実は一番人気は「由比どんぶり」。桜えびとしらすの釜揚げをふんだんに使ったコラボ丼だ。わさびじょうゆで、桜えびとしらすのそのままの味を堪能できる。ひげや頭のかりっとした歯触りの良さと身の甘さ、特に身の味わいは干しえびでは体験することのできない美味だ。
単品で750円だが、かき揚げと味噌汁がついたセットにすると1000円。単品で、かき揚げが300円、味噌汁が100円なので、セットなら150円お得というわけだ。
特においしかったのが味噌汁。
普段、桜えびはあまり味噌汁の具にはしないが、さすがは桜えびの地元だけあって、味噌汁にも贅沢に桜えびが入っている。これが実にいい風味なのだ。かき揚げ丼や釜揚げ丼は地元でなくても食べられるが、この味噌汁が、いかにも「地元ならではの味」なのがうれしい。
そしてもう一つの人気商品が「漁師の沖漬け丼」。生桜えびを、独自のたれに漬け込んだものをのせたどんぶりメシだ。テーブルには昆布だしのつゆが用意されていて、そのまま食べてもいいし、つゆをかけてお茶漬け風にしてもおいしく食べられる。
生は、食堂に隣接する直売所で買うことができる。ただし、その日のうちに食べてほしいとのこと。
しかし、日によっては不漁もある。取材当日も午前11時ごろに直売所を訪れたが、とれたての生の桜えびはすでに売り切れだった。
直売所のほかに、旧東海道沿いにも生の桜えびを売る、食べられる店もある。「どうしてもとれたての生を」と言うことであれば、早起きと事前の情報収集が不可欠だ。
毎年5月3日には、由比漁港で「由比桜えびまつり」が行われる。広い漁港の敷地に多くの桜えび料理を提供するテントが並ぶ。かき揚げの油がずらりと並ぶ風景も圧巻だ。また、桜えび干し体験などのアトラクションも用意されている。開催は朝8時から午後2時まで。
毎年人気は桜えびとしらすの無料配布。1日それぞれ2回、各回先着500人限定で配られる。例年、たいへんな人出で、交通規制もあるため、主催者が発信する詳しい情報をチェックしてから出かけてほしい。会場は由比駅から徒歩数分なので、電車での来場がいいだろう。
また、イベント当日3日は、スタッフが会場にかり出されるため「浜のかきあげや」はお休みになるが、4日から7日の間は通常通り営業する。あえて混雑する「由比桜えびまつり」を外して、連休後半の都合のつく日にを訪れるのもいいだろう。
6月までの漁期中いっぱいは旬が続く桜えび。生でなければ、由比に行かなくても味わえる。店のメニューで見かけたら、ぜひ食べておこう。
(渡辺智哉)
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