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シェリー酒、日本酒好きならお試しあれ 意外な共通点

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NIKKEI STYLE

日本酒好きの間で今、シェリー酒がちょっとしたブームになっている。特に、燗酒や熟成酒を好む酒飲みは、シェリー酒にハマってしまうようだ。

芳醇な純米酒が大好きな女性カメラマンをシェリーバーに一度連れていったら、その多様で深みのあるうまさに目覚めてしまい、なんと知り合いのバーの定休日に店を借りて、シェリーバーを開いてしまった。また、純米酒の燗を売り物にしている居酒屋の女将は、定休日にシェリーバーを訪問することを楽しみにしている。

シェリー酒と熟成した日本酒には意外にも共通点が多い。それが日本酒好きをシェリー酒に引き付けているのだろう。

シェリー酒の魅力とはいったい何か? まずは、シェリー酒について簡単におさらいをしておこう。

シェリー酒は、スペイン南部のへレスという小さな町周辺のごく限られた地域で生産される。フランスのシャンパンと同じように、原産地呼称法によってシェリー酒と名乗れる製造法や産地など条件が決められていて、たとえば同じ製法で造ったとしても、ほかの地域で造ったものはシェリー酒と名乗ることはできない。

そんなこともあり、日本ではこれまでシェリー酒の認知度は低かったと思う。せいぜい「すっきりした食前酒」程度のイメージだったのではないか。でも、実際には食前酒にとどまらず、いろいろな料理に合う食中酒でもあり、食後のデザートでも楽しめる。

シェリー酒はTPOを問わないお酒の万能選手なのだ。

一方、一部の自称ワイン通は、ワインの劣化した香りを「シェリー様(よう)」と呼んだりして、格下に見る傾向もある。しかし、これも大いなる誤解。

シェリー酒は、18世紀ごろから英国貴族の間で大流行し、18世紀末にはボルドーの最上級ワイン、シャトー・オーブリオンの2倍近い価格で取引された記録もある。シェークスピア劇にも度々登場する、高貴で歴史ある酒だ。シェリー酒がワインより格下であるわけがない。

日本のシェリー酒の第一人者であり、「シェリー・ミュージアム」(東京・五反田)というスペインバルを経営する中瀬航也氏にも聞いてみると、「気楽に飲める。どの料理にも合い、翌日残らない。コルク抜きが不要で、ボトル全部を一度に飲む必要がない。欧州の様々な戦争などを背景として、歴史があり、知的に飲める」とシェリー酒の魅力を次々と挙げてくれた。

シェリー酒は、主にパロミノ種という白ブドウを原料として発酵させるのだが、それに酒精(アルコール)としてブランデーを加えるところに特徴があって、ポルトガルのポルト酒やマデイラ酒と並ぶ世界3大酒精強化ワインの一つとされている。

シェリー酒の醸造では、ブドウの発酵後にソブレタブラと呼ばれる樽に移す。満タンにはせず、3分の2から5分の4の量で空気に触れる状態にして貯蔵する。この酸化熟成状態で2週間から3年間の間にブランデーをどのように加えるかによって、いろいろなタイプのシェリー酒になるのだ。

まず、スッキリ系のフィノとマンサニージャ。これらは、熟成開始時に酵母が造った白い膜ができていれば、劣化防止のためにブランデーを、アルコール濃度が15%になるまで添加するもの。酵母が空気と発酵液を分離することで劣化と褐色化を防止して、透明に近いスッキリ系のシェリー酒ができあがる。中瀬氏によれば、風呂上りの一杯に、テレビでも見ながら気軽に楽しめるタイプという。

コク系のオロロソは、熟成開始時に酵母が生成されていないもので、この場合はブランデーを18%になるまで添加して熟成を進める。発酵液が空気に触れて酸化熟成されることによって、褐色でコクのあるシェリー酒になる。「オロロソは、カレーライスや煮込み料理、中華料理に合わせるのがおススメです」と中瀬氏。

アモンティリャードは、酵母が生成されている発酵液にブランデーを17%まで加え、途中で酵母が消失する状態にしたもの。この2段階の熟成によって複雑な味が増し、香りが高くコクとキレのバランスがほどよい味わいとなる。酵母が2段階にわたって糖質を切るので辛口となり、どんな料理にも合うのだという。

とりわけ、「酸化熟成によってブドウを原料とする調味料のようになり、和食でもスティルワイン(酒精強化をしていない、いわゆる一般のワイン)以上の相性を示しますよ」と中瀬氏は教えてくれた。

また、シェリー酒は樽熟成している間、1年に4%程度蒸発するので、液体なのに不思議と水分を感じさせないという。だから、「アモンティリャードはスープにもよく合うんです」(中瀬氏)。

初心者におススメのシェリー酒を中瀬氏に尋ねてみた。「初心者にはアモンティリャードをまず飲んでいただきたい。香り豊かでキレがあり、ギョーザ、パスタ、おでん、市販の弁当など、オールマイティーに合います」ということで、次の二つの銘柄を紹介してもらった。いずれも、小売り価格1500円前後のものだ。

バロン・ミカエラ・アモンティリャード(写真左)とペマルティン・アモンティリャード(同右)。

このほかに、超甘口シェリー酒というものもある。ペドロヒメネス種やモスカテル種というブドウ品種を天日干しして醸造したもので、デザートワインのように楽しむ。さらに、この超甘口シェリー酒と先のオロロソやアモンティリャードを混ぜたミディアム、スイート、ミルク、クリームといったタイプもある。

また、オロロソのコクとボディにアモンティリャードの香りを併せ持つ醸造学的にも希少性が高いパロ・コルタードというタイプもあって、シェリー酒の魅力は尽きない。

シェリー酒の醸造において、最初の樽(ソブレタブラ)で熟成された一番若い発酵液は、熟成後にクリアデラと呼ばれる樽に少量移される。そこで熟成されたものはまた少量、次のクリアデラに移すことを繰り返し、最後にソレラと呼ばれる樽で熟成して瓶詰となる。これをソレラシステムと呼ぶのだが、醸造年度によるばらつきを抑え、品質の安定化に一役買っている。このように手間をかけて、おいしいシェリー酒が造られるのだ。

さて、日本酒との共通点である。ともに酸化熟成を経過すると、糖分がアミノ酸によって化学反応を起こして、紹興酒のようなナッツ香やレーズン香を伴うようになり、酸のキレと芳醇な味わいが楽しめる。それが、和食にも中華にもよく合うゆえん。スティルワインを和食や中華に合わせるのが難しいのとは全く違う。

そして、シェリー酒も日本酒も、その個性は原料の違い以上に醸造所の違いによるところが大きい。ワインは原材料のブドウの品種と土壌が酒質に大きく影響するが、フィノ、マンサニージャ、オロロソ、アモンティリャードといったシェリー酒の主要タイプは、単一のブドウ品種が原料で、酒質には醸造所(ボデガ)の違いの方が大きく左右する。これは日本酒も同じで、蔵の違いが一番大きい。これこそがスティルワインとの大きな違いだ。

もっとも、吟醸酒好きは、フルーティーなスティルワインを好み、シェリー酒は好まないことが多いようだ。

シェリー酒のタイプと日本酒のタイプを対比すると、スッキリ系のフィノやマンサニージャは淡麗辛口の日本酒、コク系のオロロソは熟成純米酒、超甘系のペドロヒメネスはみりんということになろうか。ちなみに、みりんは昔、飲み物だった。

日本酒と共通点が多いシェリー酒だが、日本酒にはない楽しみもある。「ベネンシア」というシェリーバルのパフォーマンスだ。

もともと樽酒の味見をするためのもので、約1メートルの弾力性のある柄杓を用いて曲芸のようにグラスに注ぐ技法には、思わず息を飲む。見て楽しいだけでなく、シェリー酒が空気に触れてまろやかになる効果もあるという。

シェリーバル「バー・クラベル」(東京・銀座)のオーナー、嶋田愛紀さんは、「シェリー酒をもっと多くの人に飲んでもらいたい」と、ベネンシアの技を見せて、お客を楽しませている。「初心者の方はまず、スッキリ系のフィノやマンサニージャを気軽に飲んでみて」と気さくに話してくれた。

日本酒好きはもちろん、好きでなくとも、ぜひ一度シェリー酒の世界をのぞいてほしい。人生の幅が広がることは間違いない。

(芝浦工業大学特任教授 古川修)

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