ライフコラム

子どもの学び

魚のしましま模様はどうやってできるの?

2017/4/15

スーちゃん 春休みに水族館に行ってきたよ。色とりどりの魚が泳いでいて、模様(もよう)がとてもきれいだった。ほとんどがしましまと水玉、網目(あみめ)だね。どうやってこんな模様ができるのだろう。シマウマなども同じしくみなのかな。

■2つの細胞がオセロのように陣取りし描くよ

森羅万象博士より きれいな模様は熱帯魚に多く、いろいろな形があるよ。しましまは体の形をわかりにくくし、敵から逃(に)げるのに便利だという人がいるよ。ただ、すべての魚に当てはまるわけではない。白と黒のしましまの「ゼブラウツボ」という魚は、ほかの魚に襲(おそ)われることはほとんどない。模様がある意味がわからない動物は多いね。

 それにしても、どうやって模様はできるのだろうね。最初に体の色が決まり、後からしましまや水玉を描いたわけではないらしい。いつの間にかできあがるんだ。

 よく見てごらん。どんな魚でも、同じパターンを繰り返しているよ。しましま模様ならば、一定の間を置いて線が並んでいる。水玉模様は、円がきれいに散らばっているね。形はいろいろだけど、どんな魚でも同じルールで模様ができるんだって。そのルールは数字の式で表せるんだ。とても複雑にみえる魚の模様だけど、数字で決まっているなんて面白いね。

 魚に模様ができるナゾを研究している人がいるよ。魚の体には、色をつける細胞(さいぼう)があるそうだ。

 たとえば、黄色とピンクがしましまになった魚を想像してみよう。この魚の体には、黄色になる細胞とピンクになる細胞があるんだって。

 黄色の細胞は(1)近くにあるピンクの細胞を減らす(2)遠くにあるピンクの細胞は増やす――という性質がある。これが模様を決めるルールだよ。

 魚の体では、最初はピンクと黄色の点がバラバラに混じってみえる。はっきりした模様はない。2色が混ざり合って、色も変わっている。

 何かの理由で少しだけ黄色の細胞が真ん中で多かったとしよう。黄色の点が真ん中では増え、近くにあったピンクの点を減らしてしまう。真ん中は黄色の点だらけになる。

 黄色の細胞から離れたところではピンクの細胞が増える。この結果、真ん中より少し遠いところでは、ピンクの点が黄色の点より多くなる。それでも黄色の点が近くにあるとピンクの点が減って、それより遠くでピンクの点が増えて……。いつの間にか黄色とピンクがしましまになるんだ。

 2種類の細胞が押し合いへし合いして模様が決まっているとしたら、なんだか神秘(しんぴ)的だね。黒と白の石を交互(こうご)に並べる「オセロ」と呼ぶゲームを知っているかな。黒と黒の石で白の石をはさむと白を黒に変えられる。たくさんの石が並んでいる様子は白黒の模様のようにみえるよ。魚の体をいろどる模様と似ているね。

 ほかにも、風が吹くと砂の上に現れる模様や、しましまの形をした雲も同じパターンにみえるね。魚の体だけでなく、自然界で見かける模様が共通のルールでできあがっているとしたら、感動(かんどう)するね。

 模様を描くルールは数式で決まっていると話したよね。20世紀に、この数式に気づいた人がいたよ。コンピューターの原型を作った人物として知られる数学者のアラン・チューリングだ。チューリングが考えた数式をコンピューターに入れて魚の模様を計算してみると、タテジマキンチャクダイという魚にあるしましまがきれいに描けたそうだよ。

 計算を進めていくと、成長にともなって形がちょっとずつ変化していく様子も再現できた。同じ数式をもとに数字を少し変えるだけで、水玉やヒョウの体にあるような点もできたんだって。ほかの魚でも、このような数式で模様が決まっているのかもしれないね。

 しましまの模様を持つ生き物はたくさんいるよ。熱帯魚店にいるゼブラフィッシュは、黄色と黒のしまがある。シマウマだってしましまだ。

 魚と馬はまったく違う生き物なのに、模様はほとんど同じだ。ゼブラフィッシュやシマウマ、キリンの模様は、計算上は同じような数式をもとに説明できるそうだよ。

■体の形も数式がつくる?

博士からひとこと 受精卵から分裂を繰り返して、動物の赤ちゃんができる。受精卵は1個の丸い細胞だが、自然と複雑な形ができる。頭に心臓ができたり、胸の部分に脳ができたりはしない。体が正しい形になる現象も数式がかかわっているかもしれないという。
 正しい位置に正しい組織ができるには、それぞれの細胞が自分はいまどこにいるのかを知り、その場所に合った組織に変化しないといけない。全身のうちで自分がどこの部分にあたるのかを把握するのは簡単ではない。
 こうした不思議な現象を解説する1つの考え方に、体にある特定の物質の量で、細胞は自らの場所をとらえているとする見方がある。
 例えば、体の中で物質の濃度が違うとする。濃度が高い部分には頭ができ、中くらいだと胴体、低いと尾に変わっていくという具合だ。こうした物質は複数の種類があるとみられている。

(取材協力=近藤滋・大阪大学教授)

[日本経済新聞夕刊2017年4月8日付]

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