ライフコラム

臼井流最高の話し方

気配りを欠く「言葉の省エネ」は出世や共感を妨げる

2017/4/12

xiangtao / PIXTA

 その場の雰囲気を悪くしたり相手を気落ちさせたりしてしまうのが「マイナス言葉」や「省略言葉」です。あなたも経験がありませんか? こうした言葉を投げかけられたことが。否定的なことばかり言う「マイナス言葉」が口ぐせのようになっている人は結構います。

 会議や打ち合わせなどで誰かが提案をすると、「待っていました」とばかりに「それは難しいでしょう」「リスクが大きいじゃないですか?」などと否定する。そこで、なぜそう考えるのかと理由を尋ねると、「不景気だから」「タイミングが悪い」「うちの(会社)のイメージではない」などと、とってつけたような答えが返ってくる。

 こうしたケースで「それはユニークな発想ですね」「やってみる価値はあるでしょう」「挑戦しましょうよ」などと、100%肯定ではなくても、プラスのイメージを与える言葉を掛けられたら、提案者は勇気をもらえますが、否定的な発言である「マイナス言葉」を返されたら、それだけでやる気がなくなります。最悪の場合、「この人には何を言っても無駄」だと、同僚や部下、仲間とのコミュニュケーションがとれなくなってしまうという事態も考えられます。

 「マイナス言葉」を吐いてしまう人の多くは悪気がありません。本人の性格や育った環境などが影響して、無意識に出てしまうのです。そうしたことがたび重なるうちに周囲のよそよそしさに気づき、「何で私は仲間はずれになるのだろう?」と思う。その原因は自分にあるのに、被害者意識を持つのです。

■否定的な物言いを減らす言い換えテクニック

 「あなたは否定的なことしか言わないから扱いにくい」「その性格、どうにかなりませんか?」などとは、誰も教えてくれません。「マイナス言葉」が身についている人に苦言を呈したら、普段以上に強烈な「マイナス言葉」で返ってくるのは予想できるから言わないのです。

プラナ / PIXTA

 「私に限ってそんな心配はいらない」という人こそ注意です。自信も一歩間違えば、うぬぼれになります。こういう人は「ストレートな物言い」をする傾向にありますから、冷静に客観的に自分の言動を見つめるといいでしょう。

 「空気が悪い」ではなく「空気がよくない」。「この色は嫌い」ではなく「この色は好みではない」。「この仕事は苦手」ではなく「この仕事は得意ではない」。いずれも否定していることに変わりはありませんが、ちょっとした言い換えで印象は和らぎます。

 こうした言葉遣いを意識すると、自然に肯定的な思考になり、受け入れる姿勢が生まれ、「マイナス言葉」は減っていきます。「マイナス言葉」をやる気や元気、勇気を与えるような「プラス言葉」へ一気に変換するのは難しくても、こうした言い換えならば取り入れやすいはずです。まずは「言い換え」に慣れてから、「プラス言葉」に意識を向けるといいでしょう。

■何でも「どうも」で済ませるリスク

 他人から何かをしてもらったときに「どうも」で済ませる人を多く見かけます。以前の本連載でも「どうにもならない、どうも君」という寄稿をしましたが、「どうも君」は増える傾向にあります。

 「どうも」という言葉はあいまいです。「どうもありがとうございました」なのか、「どうも申し訳ありませんでした」なのか、相手の誤解を招く恐れもあります。

 「どうも」のほかに、「臼井さんはクラシック音楽がお好きですよね」と質問をされた場合に「はい、好きです」ではなく、「です」とだけ素っ気なく答える人もいます。あるいは「山田さん、来週のイベントは?」「部長、この書類は?」などと言葉をはしょって、質問をする人がいます。これでは何を聞きたいのか、真意をつかむのが難しくなります。

 「山田さん、来週のイベントには参加するのですか?」かもしれませんし、「山田さん、来週のイベントの場所は●●ですよね」と尋ねているのかもしれません。「部長、この企画書は?」では、答える相手は困ってしまいます。「置き場所」「処理方法」「書き直し」「再考」など、様々な返答が思いあたりますね。

 こうして文章にすると「不自然な言葉遣い」だと、分かりますが、会話ではこうした言葉の省略をすることが本当に多いのです。言葉をきちんと伝え、最後まで言い切ることはマナーであり、相手への思いやりでもあります。無用の誤解を防ぐことにもつながります。

 世の中は省エネが推奨されていますが、言葉遣いを省エネすれば、人間関係は希薄になります。自分の言葉で明確に伝える意識を持って、相手を自分だと思って、丁寧に伝えましょう。それが話し方の基本です。

 次回は「褒めて好かれる人、褒めて嫌われる人」です。「褒め言葉」の扱い方について解説します。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は4月19日の予定です。

臼井由妃
 ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫)
公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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