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エシカル消費で社会貢献 カンボジア女性の自立支援

2017/4/12

「メコンブルー」はカンボジア女性の自立を支援する非営利組織「SWDC」が立ち上げたシルクブランド

 良質な製品の購入により社会貢献に寄与するエシカル消費。「メコンブルー」はカンボジア女性の自立を支援する非営利組織(NPO)「Stung Treng Women's Development Center(SWDC)」が立ち上げたシルクブランドで、同国の最貧困地域に住む女性たちがシルク製品の絹織りや染色に従事している。その代表作であるシルクストールを日本で展開している特定非営利活動法人ポレポレ代表理事の高橋邦之氏にSWDCとの出合いやソーシャルプロダクトの魅力、エシカル消費の今後などについて聞いた。

■商品の付加価値がエシカル消費浸透のカギ

 貧困や人権、環境汚染といった社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスやソーシャルプロダクトが注目を集めている。従来の慈善事業とは異なり、収益を上げて採算性を追求することで、自立的で持続可能な事業活動を目的としている。

 一方、消費側も地球環境に極力負荷をかけない原材料を使った製品や、不当労働や児童労働を認めない企業によって生産された製品などを適正な価格で購入することで社会貢献に寄与するエシカル消費が広がりをみせている。国連では2015年に貧困・飢餓の撲滅と持続可能な消費・生産を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択された。

 エシカル消費が今後も浸透していくには、価格に対してデザインや機能面でプロダクトに魅力や特徴がなければ消費者に受け入れてもらえない。そこで従業員の技能向上を目的とした訓練・教育や、品質改良に向けた研究開発といった取り組みが求められる。

■販路開拓の支援を即断 スタッフの自発性に感銘

――ソーシャルビジネスに取り組むようになったきっかけを教えてください。

高橋 もともと私は輸入業をしていて、2000年からエストニアの高齢女性たちが編んだカーディガンや手袋をネット通販で販売していました。それを10年ほど続けてそろそろ次に何をやろうかと思案していたとき、ネット通販サイトのレコメンドの中にあった「世界を変える人たち」という書籍が偶然目に留まりました。タイトルに引きつけられ読んでみたところ、はじめて「社会起業家」という存在を知りました。

 それまで社会貢献活動というと、特別な人が携わっているものだと思っていたのですが、ビジネスの手法で世の中を良くするというアイデアに衝撃を受けました。「今までの自分のキャリアを生かせるかもしれない」と、米国のシアトルに本部を持つ特定非営利活動法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京に入会したのがきっかけです。

――カンボジアのシルクブランド「メコンブルー」との出合いは。

高橋 11年にポレポレを設立後、アフリカのソーシャルプロダクトを日本で展開するパートナーの支援をしていました。そのころ、社会起業家を育成・支援している加藤徹生さんと知り合う機会がありました。

 彼の著書「辺境から世界を変える」で紹介されているアジアの社会起業家の1人がメコンブルー創業者のヌオン・チャンタさんで、ちょうど日本での販売・流通のパートナーを探しているところでした。丹精込めて織られた製品の素晴らしさに魅せられ、メコンブルーとの協働をお願いしました。

――当時、メコンブルーにはどんな課題があったのですか。

高橋 カンボジアはメコン経済圏に入っていて経済成長しつつありますが、工房のあるストゥントレン州は、その経済発展からも、開発援助からも取り残されている地域でした。製品のクオリティーは高いにもかかわらず外部へのアクセス手段がないため、販売チャネルの開拓が最優先課題でした。

特定非営利活動法人ポレポレの代表理事、高橋邦之さん(右)、左はメコンブルー創業者のヌオン・チャンタさん

――初めて工房に訪問したときの感想をお聞かせください。

高橋 現地で働く女性スタッフの高いオーナーシップに感銘を受けました。彼女たちの多くは小学校も満足に出ていなく、簡単な読み書きすらできない状態で工房に入ってきます。工房には算数と識字教育をする学校が併設されていて、働きながら夜間に勉強できます。学んだ成果がすぐ仕事で表れるので、それが自尊心やモチベーションの向上につながっているようです。そんなスタッフが生き生きと作業する姿を見て、「1人でも多くの日本の人たちにメコンブルーを知ってもらいたい」と強く思いました。

■品質の高さに驚きの声 パートナーと共有も

――現在、横浜の百貨店とネット通販でメコンブルーのシルクストールを販売しています。

高橋 購入者からの反応ですが、「こんなに質のいいものがカンボジアで作られているのか」といった驚きの声を多く聞きます。多彩なカラーバリエーションを取りそろえていて男性も使えるサイズなので、パートナーがそれぞれお気に入りの色を購入した後、交換して付けている方もいるようです。

 また日本ではストールに加えて、昨年からはメコンブルーのシルクを使ったウエディングドレスの受注をはじめており、好評です。

――エシカル消費がこれからも継続していくには何が必要だと思いますか。

高橋 エシカル消費は日々の買い物を楽しみながら世の中を変えられる手段です。一過性のもので終わらせないためには消費者が製品に愛着を感じてもらうよう、どこで、誰が、どのような思いで作ったのかを伝えていく必要があります。それとともに生産国の人々とのつながりを築いていくことも重要だと考えます。

■シルク製作で女性の自立支援

 柔らかく滑らかな手触りと上質な光沢。カンボジアの手織りシルクブランド「メコンブルー」のストールは、クメール文化の伝統技術を受け継ぎながらも現代的なデザインで人気を博している。

 メコンブルーを製作しているのはカンボジアの最貧困地域の1つ、ストゥントレン州の女性たちだ。男性中心の社会観が根強く残るストゥントレンでは、女性は教育を受ける機会がほとんどない。そのため読み書きのできない女性が多く、自ら仕事を選べない社会的弱者に追いやられていた。

 メコンブルー創業者であるヌオン・チャンタさんは幼少のころにカンボジア内戦が勃発し、難民生活を送った。その経験から内戦後の復興支援や末期エイズ患者のホスピスの開設に尽力した。患者の多くは貧しさゆえに十分な教育を受けられず、生計を立てるために性産業に従事していた女性だった。

 「1人でも多くの女性を貧困から救いたい」。ヌオンさんは2001年、ストゥントレンでSWDCを創設。読み書きのできない女性に絹織りのトレーニングとともに識字教育を始めた。

 メコンブルーはこれまでに500人以上の女性とその子どもたちの生活を支える事業に成長した。売り上げの一部は奨学金や昼食代、職業訓練、幼稚園などの運営に使われている。

■ヌオンさんからのメッセージ

 まずはSWDCの成長をサポートしてくださる日本の方々に深く感謝します。

 私たちの16年にわたるSWDCでの活動によって、貧困地域で困難な生活を強いられていた女性たちの人生を変えることができました。15年前は貧しく教育を受けることができなかった女性たちも、今では大変優秀な職人に成長しました。しかし、まだ目標を達成したわけではありません。

 メコンブルーの製品を通して、彼女たちを輝かせ、勇気づけ、そして彼女たちの人生を変えられるということを多くの人に知ってほしいと私たちは願っています。これからも製品の高いクオリティーと、この活動の意義を理解してくださる方を増やしていきたいと考えています。

高橋邦之(たかはし・くにゆき)
特定非営利活動法人 ポレポレ 代表理事
 1973年東京都生まれ。2000年エストニア手工芸品の輸入販売を開始。11年特定非営利活動法人ポレポレを設立。新興国の手工芸品の流通支援、技術協力を通じて、社会的課題の解決に取り組む。13年からSWDCとの協働を開始。

[2017年3月公開の丸の内キャリア塾を再構成]

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