今、新潟ワインがうまい 個性派ワイナリーが切磋琢磨
いま「日本ワイン」が注目されている。
「日本ワイン」とは日本国内で栽培されたブドウを使い、日本国内で醸造されたワインのことだが、数多くのワイナリーがある中でもひときわ注目を集める産地がある。新潟市内の南西部、日本海に面した海に近いエリアに、小規模ながらも個性ある5つのワイナリーが集まる「新潟ワインコースト」だ。
1992年、最初にこの地でワイナリーを創設したのはカーブドッチ・ワイナリーだった。カーブドッチ・ワイナリーはブドウ栽培やワイン醸造の技術だけでなく、ワイナリー創設に必要なノウハウも教えるワイナリー経営塾を主宰。受講者たちが独立して次々とワイナリーを作り、フェルミエ、ドメーヌ・ショオ、カンティーナ・ジーオセット、ルサンクワイナリーが誕生、同地がワイン醸造の集積地になった。
5つのワイナリーが歩いて回れる距離に集まっているのは、実は国内では珍しい。
なぜこの地でおいしいワインができるのか? その秘密は、まず土壌と気候にある。
新潟ワインコーストは日本海から1~2キロ内陸の角田山麓に位置し、砂地で水はけが良い土壌が広がる。肥沃ではないため収穫量は多くないが、その分ブドウの味が凝縮される。
夏は暑いが、朝晩は風が涼しく湿度が低くなる。この気候は、ブドウの育成には好条件だ。1日の寒暖差が大きいと、果物の糖度が上がりやすいからだ。
気候はもちろん、おいしいワインを作るには土地に適した品種のブドウを見つけることも重要だ。
現在、新潟ワインコーストでは約20種類の欧州系のブドウが栽培されている。なかでもスペイン原産の白ワイン品種「アルバリーニョ」は、日本での栽培はまだ珍しい。しかし、同地の土壌に合うことが分かり、この地の適正品種になることを期待し、栽培量を増やしている。
新しい品種の栽培に挑戦してきたことと5軒のワイナリーが栽培や醸造の勉強会を通じて、たがいに技術の向上を図っていることも、おいしいワインができる秘密といえるだろう。
では実際に、土地柄を素直にいかしたワインづくりが魅力の「新潟ワインコースト」のワインを味わってみよう。
数あるワインの中から春におすすめのものを、ルサンクワイナリーの醸造家・阿部隆史さんに教えていただいた。
■ペティアンキャンベル 2016(カーブドッチワイナリー)
イチゴを想わせる華やかな香りのワイン。微発泡で薄にごりの柔らかな飲み心地。
■フェルミエ ロゼ(フェルミエ)
カベルネ種のドライなロゼ。樹脂キャップで開詮・再詮とも容易なので、屋外やアウトドアのシチュエーションにおススメ。
■ハイトゥーコースリー ロゼ 2016(ドメーヌ・ショオ)
アルコール分8%で飲みやすい微炭酸ロゼワイン。品種はキャンベル。
■ヴィーノ・チェラスオーロ ロゼ 2016(カンティーナ・ジーオセット)
トマトのような後口の旨み。アウトドアでの飲食のお供にぴったり。品種はスチューベン。
■カベルネソービニヨン 2015(ルサンクワイナリー)
赤とロゼの間の色、フローラルな香りとカシスを思わせる果実味が特徴。
ルサンクワイナリーのものを味わってみた。春の花を連想させるような軽やかな赤で、フローラルな香りに気持ちも華やぐ。このワインなら桜の花を愛でる気持ちを高めてくれるだろう。
おすすめの5本はいずれも宴を華やかに彩ってくれるはず。大人の花見、今年はこだわりの日本ワインで乾杯しよう。
(日本の旅ライター 吉野りり花)
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