変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

高尾美穂・イーク表参道副院長

高尾美穂・イーク表参道副院長

産婦人科専門医として日々、クリニックの現場に立ち、専門的かつ正しい知識を発信している高尾美穂・イーク表参道副院長。アスリートを支えるスポーツドクター、ヨガ指導者、研究者としての幅広い知見も交え、多彩な選択肢で、多くの女性たちをよりよい明日へ導く日々だ。

大学付属病院などの医療現場で15年以上働いた後、4年ほど前から婦人科クリニック「イーク表参道」で婦人科部門の責任者として診療にあたっています。このほかに、婦人科スポーツドクターとしてプロアスリートたちのメディカル・メンタルサポートをしたり、ヨガ指導者としてマターナル(周産期)ヨガを提供したりしています。常に学会にも参加し研究発表などを行っています。

活動は多岐にわたりますが、あくまでも産婦人科専門医として診療の現場に立つことが私の仕事。週に4日以上はクリニックで患者さんと向き合います。近年は様々なメディアにも登場していますし、パッと見が「よくいる医者」ではないため、違ったとらえ方をされることもありますが、「まともな医者であること」が何より重要だと考え、現場で研さんを重ねています。

医学を語るとき、西洋医学、東洋医学という2つを並列で語ることがありますが、医学の王様は西洋医学。これは、おそらく間違いないこと。世界の先進国が抱えている医療費増加という問題を解決すべく、米国では2000年ごろから毎年300億ドル以上をかけて、西洋医学に代わる代替医療を探し、確かめるための研究をしてきました。そして出た結論は「西洋医学に代わる医療はない」でした。

ただし、西洋医学だけではすべてを解決できないことも確かです。西洋医学を補う、食の選択、運動、睡眠など生活習慣の向上や、カイロプラクティック(整体療術)、ヨガなど数多くの補完医療と呼ぶべきものがあります。選択肢は多く、どれをチョイスすればよいかは、一人ひとり違います。

また、人の心身の具合というものは「絶好調」と「病気の状態」だけではありません。「調子はよくないけれど病名はつかない」というケースが山ほどあります。そういう不調を理解し、共感し、悩みを少なくしたい。医療・スポーツ・ヨガという3つの活動を通して、すべての女性によりよい明日を届けたい。そう思って、産婦人科医をしています。 

信頼される人間になりたい、頼りにされたい

昔から産婦人科医の夢に向かって一直線だったか、というとそうではありません。幼い頃はとにかく体を動かすことが大好きで、兄と遊んだキャッチボールに始まり、球技は大得意。スポーツ全般をまんべんなくやりこなし、山で馬にも乗っていました。その一方で、勉強も好きで成績のいい子供でして(笑)、医学部進学はいわば自然な流れでした。

影響があったとしたら、親戚に医者がいたことと、母がかつて乳がんを患ったことでしょうか。小学4年生の夏休みに突然私一人、青少年活動団体が開催する40日間のロングキャンプに送り出されたのです。それは、母が乳がんで入院することや手術することを幼い私に知らせないための家族の配慮だったのですが、後で事実を知りショックを受けました。

自分だけ子供扱いされている……。子供ながらに落ち込んだことを覚えています。このときの「信頼される人間になりたい、頼りにされたい」という思いが、医者の道を選んだひとつのきっかけではあるかもしれません。

産婦人科医として大学病院に所属し、外来、手術、分娩、研究、後進の育成などに励む中、14年ほど前に出合ったのがヨガです。運動には自信のあった私が、アーサナ(ヨガのポーズ)が思うように取れず、ほかのスポーツと勝手が違うところにおもしろみを感じました。病院の当直室にヨガマットを常備し、深夜の空き時間に廊下で練習していました。

逆立ちしている私の横を、仲間の助産師さんが「また役に立たないことやって~」と笑って通り過ぎている日々でしたが、あるとき「妊婦さんにヨガを教えてあげたら?」と、病院でマタニティーヨガをやることになったのです。それからは、人の役に立つヨガ、人のためになるヨガ、という視点でヨガを考えるようになりました。

その後、素晴らしいヨガの先生との出会いもあり「ヨガとはよりよく今を生きること」という精神的教義にも触れ、米国ロサンゼルスに渡りヨガの実践と学びも深めました。現在、クリニックの待合スペースの一部はヨガスペースとして活用できるようになっています。

健康も妊娠も、思い通りになるものではない

クリニックにはいろいろな女性がやってきます。社会で活躍する女性が増えるとともに結婚・出産年齢も高くなり、不妊の悩みを抱えている女性も少なくありません。管理能力にたけているようないわゆる仕事ができる女性ほど、妊娠も計画的に思い通りになると思ってしまいがちで「○月に妊娠したい」と相談してくる人もいます。

でも、健康も妊娠も、何かをやれば絶対によくなったり実を結んだりするものではありません。単発でどうにかなるものなどなく、極端なことをしても意味はない。日常が大事なのです。「悩みを抱えたから何かをやる」ではなくて「悩みを抱えないためにやっておく」ということに気がつけば、夜早く眠る、1駅分歩く、食事は腹八分目にする、パートナーとの会話を楽しむなど、毎日が変わるはずです。

そもそも自分の体が今どんな状態なのか、興味をもっていない人が多すぎます。まずは、正しい知識を得て、自分で責任をもって選択していく大切さを再認識してほしいです。

さらに、あふれる情報の中から「正しいこと」「ほぼ正しいこと」「おそらく違うだろう」という3つを見抜きましょう。注意すべきは誰が発した情報なのか。誰から、どこから情報を得るのかも自分の選択です。

例えば、体の情報でいうならば、多くの医師が発する解剖学や婦人科の知識といった基礎情報は、前述の選択肢のうちの「正しいこと」です。時代が変わっても変わらない。こういう情報はすべての人が正しく知ったほうがいいと思います。

私は学ぶことが楽しくて仕方ないです。毎日クリニックで多くの患者さんと向き合う現場こそが、学びの場であり、私の活動の源。常に新しい情報を取り入れて、アップデートしていくことを怠らずに研さんを積んでいきたいです。

ここ数年、丸1日予定のない休日は年に1日しかないですが、これからも私に与えられた1日24時間という時間をフル活用して、人の役に立っていきたいと思っています。だって、困っている人がいるのに役に立とうとしないなんて、自分がもったいないじゃないですか。

高尾美穂(たかお・みほ)
イーク表参道副院長
産婦人科専門医、医学博士、婦人科スポーツドクター。東京慈恵会医科大学大学院で医学博士。慈恵医大附属病院産婦人科などを経て、2013年からイーク表参道副院長。

高尾さんの幅広い活動を紹介するホームページはこちら http://www.mihotakao.jp/


高尾さんが副院長を務める「イーク表参道」のホームページはこちら http://www.ihc.or.jp/


[2017年3月9日公開のクラブニッキィの記事を再構成]

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック