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イチからわかる

桜の花はなぜ春になると咲くの?

2017/3/18

■桜の花はなぜ春になると咲くの?

スーちゃん お花見の季節がやってくるね。桜の開花予想が新聞に載っていたよ。桜の花が咲く時期は西日本から関東、東北、北海道へとだんだん北の方に移っていくんだって。桜って、どうして春にいっせいに咲くんだろう。

■花芽は一度眠り、冬の寒さで目覚めるんだ

森羅万象博士より 桜は花が散ってから数カ月たつと、すぐに次の年に花を咲かせる準備を始めるんだ。7~8月には葉っぱの付け根に花芽(はなめ)という小さな芽ができ、秋にはいつでも咲ける準備が整っているよ。

 でも、冬は寒いから咲くのをがまんしているよ。花芽のままで眠りにつき、秋に葉が落ちたあとに冬の寒い空気にさらされると、徐々に眠りから目覚めていく。その後、気温がだんだんと高くなると、花芽が大きくなって花が咲くんだ。それがちょうど春というわけなんだね。桜が咲くには春の暖かさだけでなく、冬の寒さも必要ということなんだ。

 花芽が眠るしくみがどうなっているのか知りたいかな。成長を抑えるホルモンという物質が葉っぱでできて、それが花芽に送られて眠るんだ。花が咲いてしまわないように「待った」をかけるんだ。

 桜は1本の木にたくさんの花芽がついているけど、全部一緒には咲かないよね。花芽のある場所によってホルモンの影響などが変わり、眠りの深さに差が出るからなんだ。冬が暖かすぎると、なかなか眠りから覚めずに、遅れて咲く花芽もあるよ。

 今年の冬は関東から西でいつもの年より暖かかったんだ。寒い日が少なく、花芽が眠りから覚めるのが遅れ気味といわれているんだ。開花時期は少し遅れそうだよ。

 桜の咲く時期は南から北へと移っていくよね。開花が予想される日が同じ場所を結んだ線を「桜前線(ぜんせん)」っていうのを聞いたことがあるかな。天気予報ではよく前線っていう言葉を使うよね。桜前線はこの前線に似ているため、こう呼ばれているんだ。

 昔は、桜前線が5カ月ほどかけて沖縄から北海道へと北上していたとされるんだけど、最近は地球に熱がこもる地球温暖化(おんだんか)現象で様子がちょっと変わってきているんだ。

 福島県など東北より北では、冬はまだこれまで通りの寒さだよ。だから桜前線もふつうに北上していく。

 ところが、関東より西では、冬が暖かくなってきたんだ。桜の花芽は冬の寒さに十分にさらされないと、咲く時期が遅くなってしまうでしょう。九州などでは、どちらかといえば寒い北から咲き始め、だんだんと南に桜前線が進む現象が起きているんだ。例えば、昨年、九州で最初に桜が咲いたのは福岡だったんだ。その後、長崎、鹿児島と桜前線は南へ下っていったんだって。

 地球温暖化の影響がなくても、春に咲く桜が秋に咲いていたという話もたまに聞くよね。季節外れの9月ごろに咲いている桜があったら、よく見てごらん。共通点があるんだ。どの桜にも葉っぱがないんだよ。

 8月ごろに台風が来て葉が落ちてしまったり、桜の葉を好む害虫が全部食べてしまったりすると変なことが起きるんだ。花芽を眠らせるホルモンが葉から十分に届かなくなり、眠りが浅くなるんだ。

 少し涼しくなると冬と勘違いし、その後、気温が異常に高くなると今度は春と間違えて秋でも花を咲かせてしまうんだって。東京では通常、11月ごろまで葉が付いているからね。

 桜の花芽がいつ眠って、いつ目覚めるかが、花が咲く時期に大きく関係しているんだね。おさらいすると、冬の寒さが厳しかったときは、春に暖かい日が続くといつもより早く花が咲くんだ。逆に暖冬(だんとう)で花芽が寒さに十分さらされないときには、暖かくなっても花が咲くのは遅くなるんだよ。

 正月ごろからお花屋さんで、桜の切り花をみかけることがあるよね。あれは「啓翁桜(けいおうざくら)」っていうんだ。山形県でよく作られているよ。

 山形県は秋が早く訪れて気温が下がり、桜の花芽が眠りにつくのが早いんだ。その後の寒さで目覚めるのも早く、温室で温めてやるとつぼみが膨らむんだ。そのときに出荷すると、ちょうど正月の店頭で、咲いている桜を見ることができるんだ。

■開花予想、沖縄と北海道は別品種

博士からひとこと 桜の開花予想に使われているのは、ほとんどがソメイヨシノだ。暖かくてソメイヨシノが咲かない沖縄や奄美地方ではカンヒザクラ、逆に寒くて咲かない北海道の旭川や釧路などの地域ではオオヤマザクラなどで予想している。ソメイヨシノは接ぎ木で作ったクローン(複製)なので、遺伝的にまったく同じだ。このため、主に気温の差が開花時期の違いにつながっている。
 気象庁では1955~95年までは全国にある気象台などが、それぞれ独自の方法で桜の開花を予想していた。花芽の重さを測ったり、気温や降水量を利用した数式などを使ったりして予想する方法があったという。96年からは気象庁が1日の平均気温や予想気温を積算して、それを桜の芽の成長量に換算し、開花を予想する方法に統一した。しかし、民間の気象会社が独自に開花予想を提供するサービスを始めたことから、気象庁は2010年から開花予想の発表をやめた。

(取材協力=森林総合研究所 勝木俊雄チーム長)

[日本経済新聞夕刊2017年3月11日付]

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