マネーコラム

臼井流最高の話し方

「微妙」や「~感」でごまかさない気持ちの伝え方

2017/3/15

kou / PIXTA

 通販やグルメの番組を見聞きしていると、「違和感」を覚えることがあります。たとえば、「フォーマルスーツ」を通販番組で紹介していたとしましょう。そこには「ナビゲーター」と呼ばれる進行役と、その商品の製造や販売にかかわる業者が「ゲスト」として登場し、「商品アドバイザー」が出演して、「フォーマルスーツ」を視聴者に売り込むわけです。高品質で着心地がよく、価格は卸業者を通さない「ダイレクトプライス」だから“お値打ち”である、今ならばプレゼントがついているなどと、商品の魅力をアピールします。そんなとき、頻繁に登場するのが「きちんと感」「素材感」「お得感」「ふんわり感」など、「●●感」という言葉です。

 「きちんと」見えるならば「きちんと」だけでいいですし、「素材」を説明するのならば「この素材は」と、伝えればいい。「お得」であるのならば「お得です」と言い切ればいい。ふんわりしている印象を抱く素材のものならば、「ふんわりしています」と言えばいいでしょう。しかし、「きちんと感」「素材感」「お得感」「ふんわり感」など、やたらと「感」が多いのです。

 「落ち感がすてきでしょう」という会話を初めて耳にしたときには、テレビ画面を見ていなかったせいもあり、「落ち感? 脱げそうなの?」と、最初は理解できませんでした。こうした表現がいつごろから使われ始めたのか分かりませんが、会話にたびたび登場すると、首をかしげるのは、私だけではないでしょう。

 先日、ハンドバッグを紹介している様を見聞きしている際には、違和感を超えて笑いがこみ上げてきました。「お素材は高級エナメルを使用しておりますので、テリ感、つや感、しっとり感が他のお品とは比べようもありません」というナビゲーターに対して、ゲストも「お得感のあるお値段で、これほどきちんと感のあるバッグをお求めできるのは、今しかありません」と続けていました。

■「普通」「微妙」は、意見や感想ではない

 そうした発言を批判するつもりはありませんし、通販番組という背景からすればうなずける部分もあります。しかし、ビジネスの場で、「●●感」を会話の中に多用していたとしたら、あなたの思いは伝わっていない可能性が大きいといえます。その場は「そういうものかな?」と、相手は思うかもしれませんが、後になれば「あの人は何を言いたかったのか?」「あれはどういう意味だろうか?」と、不明瞭な発言に、相手は不安を覚えるでしょう。

 もちろん「●●感」という表現には「季節感」「違和感」「存在感」など、「感」なしでは成立しないものもありますが、「感」をつければ意味が通じるだろうと、あやふやな「感」を使うのは、あなたの発言や印象をぼやけたものにするだけです。

 ビジネスシーンで「●●感」を多用する人は少数ですが、「普通」や「微妙」などを、意見や感想を伝える際に使う人は結構います。これらもある意味で「●●感」に近いのではないでしょうか? しっかりとした意見を持ち合わせていないが、何か言わなければ格好がつかない。場が持たないというようなときに、感想を求められたら「普通にいいです」「普通ですね」とこたえるのでしょう。

 何を指して普通なのか。「普通にいい」とはよいことなのか、それとも「まあこんなものでいいのではないでしょうか?」というニュアンスなのか。言葉を向けられた相手は、戸惑ってしまいます。

Ushico / PIXTA

■「普通においしいです」はなぜ相手を怒らせる?

 友人と先日、小料理屋で会食をしていたときのことです。隣のテーブルには上司と部下と思われる男性客3人が「ふぐちり鍋」を囲んで談笑をしていました。

上司「トラフグは違うだろう、うまいだろう~」

部下「微妙ですね」

上司「微妙ってどういうことか?」(やや怒り気味)

部下「あっ、普通においしいです」

上司「普通においしい? 何だ、それは?」(憤慨している)

部下「ですから普通においしいです」(ほめたつもりなのに、なぜ上司が憤慨しているのか分からない)

上司「連れてくるんじゃなかった」(後悔の表情を浮かべている)

部下「部長、酔っているでしょう、大丈夫ですか?」

 聞き耳を立てていたわけではありませんが、その上司の気持ちは手に取るように分かります。「こんな奴らにふぐちりなんか、振る舞おうと考えた自分が愚かだった」。私ならばそう思います。

 世代間ギャップと言ってしまえばそれまでですが、同様な場面はしばしば見聞きします。「普通」とは、特別変わっていないことや、ごくありふれたものであること。またその様子を意味しますから、「普通においしいです」は、ほめ言葉にはなっていないのです。

 また、「微妙」とは、ひと言では言い尽くせないほどの細かさや複雑さ、少々、ややという意味あいです。最近では、否定的な気分を遠回しにあらわしたり、明言したくないときなどにも使う人もいますから、感想を聞かれて「微妙ですね」といえば、後者の意味だと受け取られる可能性が大です。

 言葉は生(なま)ものだと思いますが、「●●感」や「普通」「微妙」の使い方を見直す必要もあるのではないでしょうか? 「たったひと言」「されどひと言」です。できる限り、相手を心地よくさせる言葉を使いたいものです。

 次回は、「あなたは言葉泥棒になっていませんか?」です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は3月22日の予定です。

臼井由妃(うすい・ゆき)
 ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫)
公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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