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あんこう鍋、シメに焼きそば しょうゆがつなぐ港の味

冬の茨城を味わう(2)

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NIKKEI STYLE

あんこうは茨城を代表する味。「東のアンコウ 西のフグ」と並び称される、白身の高級魚だ。シーズン終盤を迎えたあんこう鍋を味わいに、那珂湊にある人気店「すみよし」を訪れた。

あんこうは深海魚で、普段は砂の下に隠れて、アンテナのような突起でえさをおびき寄せ捕食する。余り泳がず、骨も少ないため体が柔らかく、また体表がぬめぬめしていて、まな板の上ではうまく切れない。そこで「つるし切り」と呼ばれる独特の解体法でさばく。

この日入荷したあんこうは15キロほどのもの。下あごにかぎを引っかけてつるす。小さいものは、口から水を注ぐこともあるというが、これくらいの大きさになると、自らの重みで安定して、包丁がすんなり入っていく。

まずは、突起と「とも」と呼ばれるヒレを外す。

そして口の周りに沿って切り込みを入れると、皮が、まるで着ているものを脱がせるかのようにはがれていく。

「丸裸」になった腹に包丁を入れると、まずお目見えするのが肝臓。あんこうの肝、あんきもだ。あんこうは通年で獲れるが、冬は特に肝が大きくなるため、寒い時期が旬になる。

どんどん包丁を入れていく。えらも切り取る。白身の中にあってえらは鮮やかな赤い色が特徴。あんこうは食べられない部位がほとんどない魚だ。

胃袋も取り出す。肝に負けず劣らず、かなりの大きさ。

「ぬの」と呼ばれる卵巣は、その名の通り薄い膜のよう。小さな卵が無数に見える。

そしてえら周りの軟骨などを外していくと、やっと「だい身」と呼ばれる柳肉が現れる。フグにも似たぷりぷり感が見て取れる。

こうして、ひれ(とも)、皮、肝、えら、胃袋、卵巣(ぬの)、柳肉(だい身)のあんこうの「七つ道具」がそろった。

しかし、下ごしらえはこの後が本番。

体表を覆ったぬめりは、解体中もぬるぬると流れ続けていて、これが臭みの原因になる。解体した後、塩をふったり、熱湯をかけたり、さらには冷水でしごいたり…数時間かけてこのぬめりを徹底して取り払う。

なので「すみよし」では、つるし切りしたあんこうをその場で調理したりはしない。

さぁ、いよいよあんこう鍋の出番だ。事前に下ごしらえしておいたあんこうで鍋を作る。

一番最初に入れるのは肝。続いて先ほどの「七つ道具」を次々と鍋の中に入れていく。すべて入れ終わるころには、鍋の底に沈んでいた肝が、スープの表面に浮き上がってくる。

最後に野菜を入れたら食べごろだ。

まずはだい身を食べてみる。白身で脂肪が少なく繊細な味わい。しかしコラーゲンを多く含むため、ぷりぷりとした食感だ。

一方肝は濃厚な味わい。脂肪の含有量はマグロのトロをはるかにしのぐ。だい身のあっさりとのコントラストがあんこうの魅力でもある。

そしてコラーゲンをたっぷりと。皮やひれ、胃袋などはいずれもぷりっぷり。あんこうならではの食感が楽しめる。

そんな「すみよし」のあんこう鍋のおいしさのカギになっているのは、透明なスープ。

茨城県内では「どぶ汁」と呼ばれる味噌仕立てのあんこう鍋もあるが、そのルーツは「漁師めし」。船上で、捕れたあんこうをその場でさばいて鍋にするため、臭み消しの味噌が不可欠だった。

一方「すみよし」では、時間をかけた下ごしらえで徹底的に臭みを取っているため、かつお出しのあっさりしたスープで、あんこう本来の淡泊な味わいを引き出している。

そのスープの味付けのカギを握っているのが、地元産のしょうゆだ。

実は「すみよし」にはあんこう料理と並ぶ看板メニューがある。焼きそばだ。中でも「しょうゆ焼きそば」の人気が高い。

しょうゆを加えて焼くのではなく、味をつけずに炒めた麺を皿に盛り、好みの量のしょうゆをかけながら食べる。

しょうゆの豊かな香りと輪郭のはっきりとした味は、ソース焼きそばや中華焼きそばでは味わえない、斬新な味覚だ。

那珂湊は漁業のまち。古くから水産加工業者向けに地元でしょうゆが作られていた。食品のプロが使うしょうゆだけに、醸造する側も料理に使う側も、味へのこだわりは強い。

「すみよし」で使うのは、昔ながらの醸造法で作る地元「黒澤醤油店」のしょうゆ。焼きそばにかけるのは、水の代わりに熟成期間を経た生醤油を使って仕込む「再仕込み」と呼ばれる醸造法の「醤蔵(ひしおぐら)」だ。あんこう鍋も焼きそばも黒澤のしょうゆあってこその味なのだ。

そもそも那珂湊の焼きそばは、港で働く労働者たちの空腹を満たすために発達したメニュー。漁業や水産加工業との関わりは深い。

あんこう鍋が味噌味でないのも、焼きそばがソース味でないのも、それは、那珂湊においしいしょうゆがあったから。

どちらもまちのくらしと歴史が作り上げた「地元の味」なのだ。

東京でも大阪でも名古屋でも、もちろんあんこう鍋は食べられる。しかし、わざわざ本場・茨城まで足を運んで食べるあんこう鍋には、また違ったおいしさがあるはずだ。

(渡辺智哉)

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