ヘルシーなのにおなかいっぱい 野菜たっぷり中東料理
「ニューヨークから、ビーガンの取引先が来るんだけど、いいレストラン知らない?」と友人が言う。
ビーガンとは、肉、魚だけでなく、牛乳、卵などの乳製品も食べない菜食主義者のこと。東京では、ビーガンどころか一般的なベジタリアンの店で接待に使えるような店がまだ少なく、苦労しているとのことだった。
そんな「菜食主義先進都市」の米ニューヨークで、健康的な食べ物として流行しているのが中東や地中海沿岸地域の料理「フムス」。ヒヨコ豆のペーストで、薄くて丸いパンの一種であるピタパンなどに付けて食べる。
日本でも3、4年前くらいからフムスが注目され始め、メニューに見かける店が多くなってきた。昨年にはフムスに特化した料理本まで出版されている。
このヒヨコ豆のペースト作りに欠かせないのが「タヒーナ(地域によってタヒーニとも呼ばれる)」だ。中東の白ゴマをペーストにしたもので、最近では、チェーン系食材店でも見かけるようになってきた。
中東の食品輸入を手がけるエム・アンド・ピーに、フムス人気で一般の人の手作りニーズも伸びているのかと聞くと、珍しい商品が売れていた。
「うちでは2、3年前から味わいの異なるチュニジアとレバノンのタヒーナの食べ比べセットを販売しているんです。とてもマニアックな商品なんですが、一般のお客様に人気なんですよ」(同社の小口愛さん)。
よく聞くと、そもそもタヒーナが売れるようになったきっかけは、フムスではないらしい。「タヒーナは、中東の定番料理『ファラフェル』のソースとしても使われます。ファラフェルはヒヨコ豆のコロッケですが、ヘルシーさがうけて近年、東京でこれをメニューに加えるお店が増えています。ファラフェルもフムスも流行のきっかけは、野菜や豆類をよく使うヘルシーな料理として、中東の国レバノンの料理が欧米で注目されたことだと思うんです」。
そこで「健康的なレバノン料理」とはなんぞやを探るべく、横浜市の「アラビア・レストラン アル・アイン」を訪れた。レバノン人オーナーシェフのジアード・カラムさんが腕をふるう店だ。
「レバノンでは肉もよく食べるけれど、野菜もたくさん食べます。朝食はキュウリ、トマト、フェタチーズ(羊や山羊のチーズ)などをオリーブオイルで和えたサラダ、パンとミントティーという組み合わせがポピュラーです。パンは、オリーブオイルとオレガノ、"スマック"を混ぜて作るペーストを付けて食べるんですよ」(ジアードさん)。
スマックというのはザクロから作る調味料のことで強い酸味がある。なるほど、野菜中心でさっぱり、ヘルシーな内容だ。店のメニューで見かけた野菜料理「ファタイエル・サバナー」というホウレンソウのパイをいただくと、もっちりとした生地でスマックの酸味が効いた具がくるまれ、野菜料理なのに満足感がある。
夏には冷やして食べるというトマトベースの野菜スープ「ザルーク」は、ニンジン、ズッキーニ、ヒヨコ豆など具だくさんでボリュームたっぷり。フムスをはじめ、どの料理も健康志向ながら、タヒーナやオリーブオイル使いでコクがあり、しっかりお腹を満たしてくれる。人気のヒケツはそこにあるのかも。
(フリーライター メレンダ千春)
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