浜松ギョウザは円形盛り 真ん中の穴にはモヤシがドン
ギョウザ(1)
最近、エミー隊員を会社で見ない。新しいサイトの立ち上げで忙しいという話は聞いていた。そのサイトを軌道に乗せるのに忙殺されているということも耳にしていた。
それにしても姿を見ない。椅子には上着がかかり、足元には口が開いたままで中身丸見えのバッグがあるのに、どこにもいないことさえ珍しくない。
あるときは会議、あるときは取材、あるときはジャンクフードの買い出しなどで席を外すことはあるだろうが、いなさ過ぎ。
あんまりいないのでデスクに「エミーは本当にいないね。何してるの?」と尋ねた。デスクは答えた。「休暇中です」。いないはずだわ。
そのエミー隊員が久しぶりに出社した。日焼けのせいか鼻の頭が赤くすりむけたみたいになっている。「どこ行ってたの?」「沖縄です」
沖縄に行ったエミー隊員は帰りに那覇空港でお土産をいっぱい買った。中でも会心のお土産は沖縄の食べ物の食品サンプルを使ったキーホルダーだった。一番気に入ったのがチラガー(面皮)。牧志公設市場なんかで見かける豚のお顔のミニチュアである。ラフティーのも買った。ゴーヤーの輪切りもゲットした。ゴーヤーチャンプルーは高かったので買わなかった。出発までの時間を利用して立ち食いの焼きそばを食べた。そして飛行機に乗って気づいた。
「あれー、キーホルダーのお土産がない」
焼きそばを食べたとき、お土産が入ったたくさんの紙袋をカウンターの上に置いていた。ほかの客のお土産も似たような袋に入っていた。
「きっとほかの人が自分のと間違えて持って行ってしまったんだろうと思います。でも持って行った人は家に帰ってチラガー見てびっくりしたでしょうね。あはははは」
どこまでも明るいエミー隊員なのであった。
山口のお父さんお母さん、お嬢さんはこのように元気でやっていますのでご安心ください。
今回からギョウザ。みなさん、ギョウザがお好きなようである。メールが団体で届いている。今週は残念ながら紹介できないメールが続出するであろう。あらかじめごめんね。
北海道関係者からギョウザとカレーの店「みよしの」に関するメールが4通。札幌ではあまりに有名らしい。
お店で食べるメニューの中にギョウザカレーなんかもありますね。
あっそうそう、スープカレーのお店でギョウザを具にしているお店もあるなぁ…すすきのでは「すぐるや」というギョウザのおいしいお店があったり、ワインとギョウザのお店があったり、北海道でもギョウザは人気です(ぺんぱらさん)
ギョウザとカレーの専門店というのはありそうであんまりない。北海道のスガキヤ的存在か。
ぺんぱらさんは先週紹介したちろこさんからのメールにあった北大学生食堂の「冷やしピリカラーメン」をさっそく食べに行ったそうである。北大は食べ物に関する話題の宝庫なのだろうか。今週もあの方からこんなメールが。
行者ニンニクは北海道民ならおなじみの山菜で、ヒトビロ、アイヌネギとも呼ばれます。アリウム属でニンニクやニラのような匂い(硫化アリルでしょうね)がして、ぬたにして食べたりすることが多いそうです…これを研究していた北大農学部のとある先生。匂いを出さずに健康効果を高めた利用法としてギョウザのレシピを開発し、学生に作らせて学祭で売り出すと大人気に。以来それが伝統となり、もはや先生と面識のない学生たちも連綿と、毎年毎年受け継いだレシピで作り続けています。
大学祭の間に売る分の行者ニンニクは、3年生たちが前もって山に狩りに入るそうです。みんなで分担して採集してきた行者ニンニクを、みんなで大量のギョウザに仕立て、学祭目指して作り置きしておくんだとか。昔は、教養部から移行したばかりの新人である3年生たちの、農学部生としての洗礼みたいなもんだったんですね(ちろこさん)
北大の生協には使い捨てジンギスカン鍋がありジンギスカンの肉がありジンギスカンのたれがある。春から初夏にかけて学生諸君は屋外でジンギスカンを食べまくる。そんな話が当サイトに登場したのはいつのことだったであろうか。もう3年もやってると細かいことを忘れている。トシのせい?
デスクうなずいて うん、たぶん。
ギョウザと言えば宇都宮ではなく浜松という人々が存在する。
浜松には多くのギョウザ専門店がありますが一部のお店では注文の方法が、世の中の基準とやや異なっている場合が見受けられるのです。すなわちギョウザ10個を1ユニットとしてその倍数、10個、20個、30個、40個、50個…で注文するシステムが確立しているのです。
例を見てみましょう。のれんをくぐってお客さんがお店に入りました。
「いらっしゃいませ」
「ぎょうざ30個と生ビールね」
こうである。
メニューにはそのほかにもささやかにライスとラーメン程度はありますが頼んではいけません。たちまち行きずりの旅人とばれてしまうでしょう。生ビールを飲んでギョウザを食って、まだ足りないなと思ったら、
「すんませーん。ギョウザ20個追加ねー。ビールもねー」
といくのが紳士のたしなみです。
味はニンニクが少なく、焼きギョウザでも油少なくどんどん食えます。「米などの穀物が統制されていた終戦直後にギョウザが主食の役割を果たした」との論を展開する歴史学者にとって、ここ浜松のギョウザはまさにその主張を裏付けるに足る"生きた戦後"とも言えるでしょう(立川の鈴木さん)
家ではクーラーなしの生活を押し通している浜松のMartinさんも「浜松には日本一うまいギョウザがある」と主張する一人。今回はその写真を送っていただいた。うまそう。
デスク質問 この丸くギョウザを皿に盛るスタイルって浜松流? 東京では見かけないんですけど。東京では横長の皿に5個なり10個なりを1列または2列で盛る。大皿も並行に盛るのが一般的。浜松はたいがい円形で、真ん中の空間にモヤシがのるようなイメージがあるのですが――。
野瀬 確かに円形配列は珍しい。
コーラの四角、丸マークと味の違い実験は満を持して挙行する。しばしお時間を。
名古屋。
手羽ギョウザは、ご想像のとおり「皮が手羽先の揚げギョウザ」です。手羽先の骨を抜くとちょうど袋状になるので、そこにギョウザの具を詰めて揚げてあるものがポピュラーです。味付けはお店によって(1)甘め(2)唐辛子系ピリ辛(3)コショー辛に分かれています。好みが分かれるところですが、私は(3)が好きです。名古屋発の某居酒屋チェーンにもありますので、東京でもご賞味いただけるかと存じます(ねいてぃぶなごやんさん)
最近、日経本社から歩いて行けるところに名古屋から「世界の山ちゃん」が進出してきた。デスクと行く約束をしている。エミー隊員とベティー隊員も誘おうと思っている。あっそうだ。エミー隊員、屋形船クルーズ計画がうまくいかなかったら、山ちゃんツアーにしたらどう? 手羽先早食い競争とかできるよ。確か、ここにも手羽ギョウザがあったと思う。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
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