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「SMAP×SMAP」のフィナーレを飾った言葉

夜遅めに帰宅すると妻が涙ぐんでいた。テレビでは「SMAP×SMAP」最終回のエンドロールが流れている。「私の青春だった……」って、年齢的にも嘘でしょ? そんな突っ込みを入れると、妻の機嫌を損ね面倒なことになるから、そのまましばらく黙って見ていた。

世代を超えた「SMAPありがとう」のファクスで埋め尽くされたスタジオの真ん中にぽつんと立ったボード。カメラがズームするとそこには「たくさんの『ありがとう』を、ありがとうございました」という言葉が。番組は、それで終わった。

番組を20年続けたメンバーと、番組スタッフからの最後のメッセージ。「シンプルでさりげないひと言」だからこそ、心に残った。

昔から「さようならの『さ』は、さりげなさの『さ』」といわれるように、くどくどしい言葉は別れに似合わない。「『ありがとう』を、ありがとうございました」の文字が実にすがすがしく見えたから思わずメモした。

もともとひどい悪筆の上に、走り書きだから、自分で書いたはずのメモながら、結局後で見ても判読不能で程なくゴミ箱へ直行することが多いが、何とか読めたメモが年末にあとふたつあった。

安倍首相の「持ちネタ」となった家庭円満策

ひとつは、ロシアのプーチン大統領との会談で、思ったほどの成果を上げられなかった安倍晋三首相が「意外に元気な様子」で登場した夜のニュース番組での発言。

「領土問題」の議論を早々に終え、司会者は「夫婦円満のコツ」を首相に尋ねているところだった。「え? 北方(ホッポー)問題じゃなくて、夫(オットー)問題?」。出来の悪いしゃれのようだが、これが、意外に面白かった!(走り書きのメモからの引用ゆえ、実際とは異なる場合も多々ありえます)。

司会者「(昭恵)夫人との仲、実際は、いかがなんですか?」

耳の聞こえが優れない私には一瞬、夫人(フジン)がプーチンと聞こえたりして、質問の「真の狙い」は、大統領との「本当の関係」を鋭く直撃したのではないかと、テレビに見入った。

安倍首相「そりゃあ、時には意見が合わずケンカだってしますよ。しかしですね、私はいつも私の方が折れるようにしているんです。我が家には、昔から家訓がありましてね。安倍家の幸福は、妻への降伏」

思わぬダジャレにスタジオに笑いが起きた。

その一方で、安倍家を日本国、妻をプーチン大統領に置き換えようとする「深読み好き」な一部の視聴者はこのやり取りに耳をそばだてた、かもしれない。

安倍首相「日本国は意見が合わないとき、いったんは相手国に折れて、戦略として降伏したように見せるが、最終的には幸福という果実を手に入れる」

そんな決意を胸に秘めているからこそ首相は「意外に元気で余裕の笑顔」なのではないか。まあ、深読みも過ぎると、妄想となってしまいそうだが。

ともあれ「安倍家の家訓」だけは、きっちりメモしておいた。

「逃げ恥」で石田ゆり子さんが発した逆襲の一言

そしてもうひとつの「メモ」はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)の最終回から。石田ゆり子さん演じる49歳・独身のキャリアウーマンが、25歳の恋敵(内田理央さんが好演)からこっぴどい屈辱的な発言をされたときの返し言葉だった。

内田理央「いい歳をして17歳も年下の男(大谷亮平さん)に手を出すなんて恥を知れ、彼に必要なのは私のような若い娘よ」

ネットを見れば「逃げ恥・名セリフ集」はあちらこちらにあり、私のいい加減な「間違いだらけの走り書き」など「今さらバカじゃね?」と一笑に付されることと知りながら「間違いにこそ私のその時の受け止め方が混じっている」と開き直ってそのままにする。

石田ゆり子「あなたは随分、若いということに価値を置いているようだけど、あなたが、価値がないと切り捨てたものは、この先、あなたが向かっていく未来でもあるのよ」

老いを蔑(さげす)む若い世代のおごりをさらりといさめる石田さんの凜(りん)とした表情とその言葉に、ジンときた。

「若者の負担を軽減するため年寄りの年金を減らすべきだ」「医療費負担も増額すべきだ」VS「年寄りいじめだ!」という昨今の「熱い議論」にさえ、一石を投じることにもつながるのではないか?(つながらないか)。

ともかく、こんな私のようなオヤジまでもが「なーるほど」と感じ入ってしまったぐらいだから女性の反響は大変だったらしい。

日刊大衆はじめ各種ネット記事によると、このセリフが発せられた瞬間。SNS上では石田ゆり子さんと同年代と思われる女性たちの熱狂が吹き荒れたそうだ。

「若いからって威張るんじゃないわよ!」「そうよ! 恋愛に、歳なんて関係ない!」「私もまだまだ頑張れるって思った」「元気と勇気をもらった」――。

某社の若い女性編集担当に「逃げ恥の石田ゆり子のセリフ、感動的だったねえ」と振ったら「そうですかあ?」と気のない返事だった。

彼女「あれは、50になっても美しく魅力的な石田さんが言うから説得力があるんで、未来の私が同じことを言ったら誰も相手にしてくれなさそう。美女が向かう先の未来は明るそうだけど、私の未来はどうかなあって、逆に落ち込んじゃいました」

梶原「へえ、面白いね」

彼女「面白くありません(怒)」

とりあえず、彼女の言葉も走り書きした。

梶原しげるの「しゃべりテク」」は木曜更新です。次回は2017年1月26日の予定です。
梶原 しげる(かじわら・しげる)
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーになる。92年からフリーになり、司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員を担当。著書に『すべらない敬語』など。最新刊に『まずは「ドジな話」をしなさい』(サンマーク出版)がある。

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