秋の味、新栗 ほんのり自然な甘さ、しっとりほくほく
秋の味覚、栗。都道府県別で全国生産量ナンバーワンの茨城県でも、特に栗づくりが盛んな茨城県笠間市を訪ねた。
まずは、栗の生産から販売、焼き栗まで一貫して手掛ける「小澤栗園」の畑へ。整然、かつ広々とした風景は、山の斜面の栗林のイメージを払しょくする、独特の美しさがある。枝をできるだけ広げ、太陽光をまんべんなく当てるため、オフシーズンもせん定など手入れを欠かさないという。
天塩にかけた栗は焼き栗に。密封した窯で焼くと、栗から出た水分が水蒸気になり、圧力釜のようになる。焼き上がりに窯から噴き出す蒸気は、さながら蒸気機関車のよう。しっとりと甘い焼き栗になる。
特大サイズで1キロ4,000円超と高価だが、それでもひっきりなしに焼き栗を求める人たちが訪れるのは、価格に見合った、いやそれ以上のプレミアムな味わいを知っているからだ。
笠間には知る人ぞ知る、行列が絶えないかき氷屋がある。「雪みるく」は、看板のないお店。オープン2年目にもかかわらず、そのおいしさは口コミで広がり、事前に整理券を手に入れなければ食べられないほどの人気ぶりだ。
かき氷といえば真夏だが、そこは「栗の笠間」。この季節には栗のかき氷が登場する。新栗を使ったかき氷は1日10食限定。トッピングされたゆで栗も、実は氷の中に隠れている裏ごしした栗も、いずれも栗そのものの甘さが生かしたほのかな甘さ。左党をも引き付ける絶妙の甘さ加減だ。
もう少し甘さがほしいという向きには、マロンショコラを。チョコレートの分だけ、甘味が加わる。とはいえ、食後にお茶がほしくならない程度の甘さだ。
食事として栗を味わいたいなら、マロンポーク(栗豚)がおすすめ。
栗の収穫は、地面に落ちたものを連日拾うのが基本。天候不良で栗拾いができないときなどは、どうしても出荷に適さない栗が出てしまう。そんな栗を飼料にした豚肉がマロンポークだ。
「グラウンドワーク笠間」では栗豚を使ったとんかつとメンチかつが食べられる。柔らかいロースかつ、ジューシーなメンチかつ、ほんのり甘さのある味わいでご飯が進む。
笠間といえばいなり寿司。笠間いなり寿司いな吉会は、B-1グランプリにも出展するなど、いなり寿司でまちおこしに取り組む。地元を代表する栗も、当然いなり寿司になる。
今週末、10月1日(土)2日(日)には、JR常磐線岩間駅近くの市民センターいわまで「かさま新栗まつり」が開催される。栗のいなり寿司とかき氷は同会場でも食べられる。あわせて稲荷神社参拝や笠間焼のギャラリー巡りもいいだろう。都心からなら、電車でも車でも2時間とかからない笠間。秋の日帰り観光にいかがだろうか。
(渡辺智哉)
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