お好み焼きの正しい切り方 三角ピザスタイルは邪道?
たこ焼き・お好み鉄板系(4)
「尾西食品」という会社にお邪魔して「アルファ米」の話を聞いてきた。印象に残ったのは尾西洋次社長の「お茶を注ぐと面白いですよ」という言葉だった。
アルファ米は一度炊いたご飯を熱風で乾燥させたもので、お湯や水を注ぐと「炊けたご飯」に戻る。お茶でも味噌汁でも、要は水分であればいいわけだ。お茶で戻すとお茶味のご飯になるし、味噌汁なら味噌味のご飯ができる。尾西社長は「コーラで戻してカレーをかけるとうまい」などとおっしゃる。
デスク尻込み うーん、コーラ&カレーミックス味のご飯かぁ。
エミー隊員興味津々 コーラ好きかつカレー好きのエミーはかなり気になります。
阪神大震災のとき、救助隊員たちは焼酎で戻したアルファ米を食べて寒さに耐えながら救出活動にあたったという。何でも芋焼酎が合うのだそうだ。内部にたっぷりの芋焼酎を吸い込んだ米粒。考えてみると、うまいかもしれない。にしても、これは一種の秘話ではないか。
デスク眼がキラキラ これはぜひ味わってみたいものです。
エミー隊員残念 私はお酒飲めないから残念…。お、おじさんたちの目がきらめいてる!!
いくつかのサンプルをいただいてきたので、いろいろ試してみようと思う。
愛媛や徳島の一部に存在する「ジューシーライス」、すなわちみかんジュースで炊いたご飯などは、オレンジジュースを注ぐだけでできるはずである。やってみるべし。
N谷園のお茶漬けの素をお湯で溶いてアルファ米に注げば、水分なきお茶漬けが完成するはずである。
ビールも良かろう。日本酒も良かろう。野菜ジュースも良かろう。ヨーグルトも良かろう。やってみた結果は次回以降紹介する。
何のためにそんなことをするのかよくわからないが、成り行きというものである。
アルファ米はスーパーでは売っていない。自治体の防災倉庫にある。しかしそこから勝手に持ってくるわけにはいかないので、もし入手したければ登山用具店、デパートの旅行用品売り場などに行くべし。東急ハンズにもあるそうだ。
今週は海外情報から入る。
そうです。マーライオンさんだけでなく、私のもとに届くメールの多くが「おばちゃんの思い出」に触れておられます。ババヘラもそうですが、おばちゃんて何か安心できるんですよね。と書いたところで、ずーっと以前に広島からいただいたメールを思い出しました。そのメールには「広島でおいしそうなお好み焼きの店があるんですが、母親がいつも子供をどやしながら焼いているので怖くて入れません」と書いてありました。
昔々1980年代中ごろ、オランダに住んでたころはよく食べていました。友人が日本から訪ねて来た場合は「オランダたこ焼き」と言って食べさせたもんです。たいてい「いやー、いやー?いやー!!」と言って食べていました(シンガポールの星のあいすさん)
「いやー、いやー?いやー!!」というのは驚きが喜びに変わったということですか。それともただ本当に「いや」だったんでしょうか。
そこで私は、関西人というルーツを捨て去っても、「お好み焼き・たこ焼きオランダ発祥仮説」をここに打ち立てたいと思います! 東インド会社華やかなりしころ、長崎・出島に降り立った船員が伝えたか、幕末の混乱期にオランダに留学した志士がポッフェルチェに涙し、日本に作り方を持ち帰ったということは考えられないでしょうか? きっと、お好み焼き・たこ焼きは洋食第1号だったに違いありません!!(アムステルダムのばふんさん)
ボファチェorポッフェルチェ、どちらでもいいが「オランダたこ焼き」に関する新説が登場した。大阪の会津屋危うし! それにしてもオランダのたこ焼きが作り方まで日本と同じとは驚きである。
ソース焼きそば以外の焼きそば。
あくまで東京の話だが、焼きそばには2系統ある。ソース焼きそばと「上海焼きそば」である。上海焼きそばが上海にあるかどうかは知らないが、これは塩味で上に野菜や魚介類がのっている。五目焼きそばという名前で出ていることもある。
醤油味の焼きそばを私は知らない。非ソース系塩味の焼きそばに隠し味的に醤油が使われていることはあっても、醤油を前面に出した物件に出くわしたことがないのである。
大阪の「ぼてぢゅう」のメニューに「ぶつ切りタコの和風にんにく焼きそば(しょうゆ味)」というのがある。わざわざ「和風」と書き「しょうゆ味」とことわっているところをみると、一般的ではないことを示しているように思える。が、予断は危険である。全国から醤油味焼きそば情報を待つ。
チンロンさんが体験された塩味焼きそばと東京の中華の店にある塩味の焼きそばとは似ているけれど違うものではないだろうか。カップ麺の「焼きそば 塩」もまた中華の焼きそばとは別物である。
「たべもの起源事典」「近代日本食文化年表」とも焼きそばに関する記述がない。記録が残っていない証左である。発祥の物語のみならず地域分布なども未解明なままと思われる。例えば東京ではソース味と塩味とどちらが優勢か。生活感覚だけで言うと塩味が強いような気がする。当サイトでどこまで迫れるか。頑張ってみよう。
東京を代表してデスク乱入 確かにソース味は鉄板焼き屋さんと露天限定という感じですね。何より油っこい。あんかけ系が一般的かもしれません。ちなみに揚げ麺は「固焼きそば」と呼びます。
普通はエイという魚はおしっこをしないため体にアンモニアが溜まっており臭くて食べないのだそうですが、このお店で食べたものは全然臭くなく美味しくいただきました……広島県の三次では普通にエイを食べるのだそうです(夢の途中さん)
というような特殊物件の中に思わず地域性がのぞく場合もあって面白いが、私の本当の関心は東と西の鉄板系コナモンの本質的な違いにある。例えばこんなメール。
大阪に住んでいたとき「あの店のたこ焼きはホンマ、出しが効いててうまいわ」という会話を何度も耳にした。「あそこのお好みナ、ええ昆布出し使こたはるわ」とも言う。大阪ではたこ焼きもお好み焼きも小麦粉を溶くとき、出し汁を使う。客ははふはふ言って食べながらしっかりと出しを吟味している。
明石の卵焼き(明石焼き)も出し汁に浸して食べる。
しかし、東京では水で溶き、その代わりにたこ焼きの中にあられや切りイカや紅ショウガなどを入れて味を加える。外見は同じでも本当は相当に違う食べ物ではないかと思っているのである。
広島では出しを使うのだろうか。ほかの地域はどうなっているのだろうか。名古屋のキャベツ入りたこ焼きには恐らく出しは入っていないと思う。たこ焼きが一種の出しのうまみを味わう食べ物なら、中に出しの味を邪魔する具材を入れる発想は出てこないのではないか、というのが根拠である。
関西の人は「東京のたこ焼きやお好み焼きはうまくない」とよく言う。それは「東京のうどんはまずい」と言うのに似て、根っこは「出し」にあると私は考えているのである。
この辺りについて皆さんのご意見をうかがいたい。
ここでデスク乱入 確かにコナモンに出しを使った記憶はございません。
釣り鐘型たこ焼きは存外の強さを見せている。あっちこっちにあるぞー。
あとうちの母親が新しいもん好きなので、明石風とかいって冷凍たこ焼きを揚げたのに出しをかけて食べたりしていました(京都出身 ブルックリン在住さん)
京都にも! しかもキャベツ入り!!
岐阜、名古屋にもありました。現在はどうでしょう。
トキハは大分を代表する百貨店です。そこのたこ焼きが釣り鐘型だったということは、しかも30年前という時代を考えると大分へ大阪型球形たこ焼きが入って来る前に釣り鐘型が存在した可能性があります。
関西の人にホットケーキミックスのたこ焼きを出したら「まずい」と言われても仕方がありません。
出水は鶴の飛来地として有名です。私は昔「白鳥の飛来地」と書いて訂正を出したことがあります。情けねー。
さあ、どんどん行ってみよう。まずは富士宮やきそば学会からのメール。なんちゅうてもNPO法人なので「IT推進担当」までいるのである。
市内のスーパーで普通に売っている「肉かす」です。豚の背油を揚げた残り物です。揚げた油はラードになります。市内の肉屋ではラードより肉かすの方が売れるため、ラードは不人気で売れ残るそうです。見た目は「かっぱえびせん」状態で細かく天かす状態に刻んで焼きそば、お好み焼き、野菜炒めなどに入れます。市内では肉かす・豚かすと呼ばれています、
富士宮の小室市長がヘラを持って「富士宮やきそば音頭」を踊っています。市民~市長まで焼きそば大好きです。
コンビニなどで売られている「富士宮・太田・横手」の3種類のカップやきそば麺に記している「三国同麺」の協定書です。富士宮市内にて3市長集まりました。
富士宮市内では、お好み焼きに焼きそばを入れたものを「時雨やき」と言いますが他ではあまり言わないようです。モダン焼きと言います? お好み焼きそば? は地方によって言い方が違うのですか?(富士宮やきそば学会IT推進担当 渡辺さん)
ありがとうございました。
「時雨やき」は初耳です。どうして「時雨」なんでしょうか。むしろ教えていただきたいと思います。
ところで、富士宮って「渡辺」という名字が多いのでしょうか。「やきそば」絡みだけで3人目の渡辺さんです。
デスク意味なく乱入 僕は富士宮じゃないよぉ。
野瀬 ホント、意味ない。君は千葉でしょ、千葉のワタナベでしょ。
神戸・元町付近で13-4年前に出合った物件ですが、たこ焼きの屋台のメニューに「ぼっかけ」の文字が……すでに「ぼっかけうどん」は体験済みだったのですが、たこ焼きで「ぼっかけ」って? と不思議に思い注文してみると……牛モツ入りうどんつゆに、たこ焼きの浮いた物件でした(甲府市のかんたさん)
そうだ、その物件は確かにどこかで見ています。大阪の天神さんだったか。記憶ははっきりしませんが、見たことは確かです。九州ではありません。本州のどこか。
一銭洋食、ちょぼ焼き、お好み焼きはどう切るべきか、広島と関西のお好み焼きはどっちがうまいかなど、小競り合いに発展しかねないテーマも含めてメールが大量に残った。次回、異例の「その5」に突入して紹介する。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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