豚まん 「西の肉まん」から「高級肉まん」へ昇格?
中華まん(2)
長岡で私は、心揺さぶられる物件に遭遇した。
「ちゃんぽんラーメン」
ぶるぶるわなわな。
九州人にとって「そばうどん」がないように「雑炊のおにぎり」がないように「焼いた煮魚」がないように「ちゃんぽんラーメン」はないはずなのである。でもここにあるのである。あるものは仕方ないが、文句を言うつもりは毛ほどもないが、食べてみたい気がしないでもないが、でも……どうして? どうしてなの? どうして「ちゃんぽん」が「ラーメン」なの?
長崎でおぎゃーと産まれたチャンポンは新潟県まで旅するうちにラーメンになってしまっていた。グレたのか成長したのかは知らないけれど「食文化は伝播の過程で変容する」んだよね。こんなに変容しちゃったんだよねー。
気を取り直して向かった先が「フレンド」の本部であった。国道8号線沿いの店は普通の店舗のほかにドライブスルーにもなっていて繁盛していた。新潟市で展開する「みかづき」チェーンの「イタリアン」と同じ食べ物が長岡にもあって、フレンドの各店でゲットできる。ソース焼きそばにパスタソースをのせた物件である。
みかづきのものは太麺でもちもちした食感が印象的だったが、フレンドの方は比較的軟らかい。キャベツ、モヤシ、ニンジンとともに主張しないソース味でまとめられている。パスタソースはコーン入り。最初は酸味が足りないかなあと思ったが食べ進むうちにスパイスの刺激がじんわりと広がってきた。
みかづきとは微妙に違う味の構成になっている。
店内にあったポスターによると、フレンドチェーンは幼稚園や小学校の行事を対象にイタリアンやギョウザ、かき氷の出張販売もやっているらしい。秋田のばばへらが行事があるところに出没するように、長岡のイタリアンも学校や公園にスポスポ出没しているのだろうか。
このイタリアンに入っているキャベツを食べながら思い出したのが、東京で出くわしたメニューである。
「キャ別」
どうしてこう書かなければいけなかったのだろうと思いながらシャッターを切ったのである。「キャ」と何が「別」なのと考えてしまうではないか。まあいいけど。
食べ方としては
1まず下の薄紙をとる。ここで液体の吸収を阻止する薄皮がはがれる。
2ポン酢に浸す。
3真ん中から二つに割る。
4切断面に対し垂直にかぶりつく。
ただ、横浜中華街の肉まんや角煮まんなどには何もつけません。ポン酢や酢醤油を必要としないくらい味が濃厚なので(pantopopさん)
よーし。100万都市北九州市も酢醤油で決定です。福岡は酢醤油ですが、九州全体がそうなのでしょうか。お隣の山口はどうでしょう。
横浜中華街のことが出てきた。関連メールを2通。
などと考え始めると夜も寝られなくて、かわりに昼間が眠くてしょうがないのですが、実際はどうなんでしょうね(みなみ@神奈川県さん)
私も横浜中華街でまんじゅうを買って歩きながら食べたことがあります。つらかった。つけるものが何もないんだもん。「酢醤油は落ちていないか。ついでにお金でも落ちてはいないか」と下ばかり見て歩いておりました。しかし、どちらも落ちておらず、酢醤油は我慢しました。
デスクまた乱入 中華街で「歩き食べ」と聞いては、黙っていられません。昔、中華街は「食事しに行く所」でしたから、肉まんだのゴマ団子だの、そのほか訳の分からないものを食べながら歩くなんて人はいなかった。中華まんは、冷蔵してあるのをおみやげとして売っているくらいでした。なのに今では、あっちでもこっちでもセイロが湯気をたてて、お客を呼んでいます。「別に店に入らなくても」と考える観光客が増えたからですね。あれだけ混んでいると店を決めるのもひと苦労だし、「歩き食べはお行儀悪い」という人もいなくなったし。
で、「どうしても中華まんには何かつけたい」という方は、店の人と一瞬目を合わせた後、慌てたように目を伏せながら「つけるあれを…」と言ってみましょう。ほとんどの店では「つけるって、日記ですか?」とけげんな顔をされます。が、なかには辺りに鋭く目を配りながら、秘密のあれを出してくれる店員さんがいるかも。
野瀬 いない。黙って日記帳が出てくる。
神戸の町中に「豚まん」がウリの店がある。ガラス張り素通しの厨房で中国人らしいコックさんが豚まんをどこどこ作っているのが見える。せいろでどんどん蒸し上がっていく様子が見える。買った豚まんを店の前のベンチで食べられる。そこには小袋に入ったソース、醤油、辛子などが置いてあった。「2度づけお断り」のソースパッドがあったらすごくうれしかっただろう。
神田のガード下に関西風串揚げを出す店があって、そこにも「2度づけお断り」のソースパッドがある。でも東京の人は正しいやり方を知らないので串をソースに全没させ、2度づけを回避しようと健気に努力している。
あれはですね、必ずついてくるキャ別じゃなくてキャベツがあるでしょ? そのキャベツの中からスプーンに近い形の1枚を選び、それでソースを自分の小皿に移すのである。小皿なら何度づけしても店の人ににらまれることはないのである。裏技ってやつ。
従来「西の豚まん・東の肉まん」などと言われてきていますが、やや状況が変わりつつあるように感じています。昨年秋に調べた「使い分け」のある例(漢字表記等間違いがあるかもしれませんがご了承を)。
ファミリーマートでは、「本格こだわり豚まん」(160円)と「オリジナル肉まん」(88円)。ヤマザキでは「手包み豚まん」(150円)と「肉まん」(100円)。
一方、「使い分け」のない例として、ローソンでは「吟上肉まん」(160円)、「特選肉まん」(130円)、「肉まん」(100円)。サンクスでは「本格中華手造肉饅」(150円)と「肉まん」(98円)。関西資本系のローソンで「豚まん」を使っていない点が、興味深く感じられます。「共通語では『肉まん』」という意識が、逆に強く働いたのでしょうか?
またMM線開通で盛り上がっている横浜中華街でも、「豚まん」と称して皮がふっかふか、厚めのもの(コンビニの冷凍物とは一線を画している)をよく売っているように見受けます。「あとから入ってきた言葉は、高級感を漂わせるときがある」というように一般化できるかもしれません(NHKの塩田さん)
私も最近の横浜中華街のテレビ画面とか雑誌の特集とかを見ながら「豚まん」表記の多さが気になっていましたが、なるほど「豚まん」は「肉まん」より高級イメージですか。関東のコンビニにも「豚まん」は進出とは、何となくめでたい。関西方面の方、お喜びください。551が東京に進出する日も近いかもしれません。
ということは551の豚まんを買った人が乗ってきた電車の中は、そのにおいでいっぱいになるということでもありましょう。あまりに強烈かつうまそうなにおいに「駆け込み乗車と豚まんの持ち込みはおやめください」なんてアナウンスが流れたりして。
大阪と言えばこの方。
一般的に蓬莱の551が有名ですが551は胸焼けがします。蓬莱は蓬莱でも551ではない蓬莱物とかかくれ名物豚まんは色々ありますので、ぜひともウスターソースで召し上がってみてはいかがでしょう?(女優の三林京子さん)
三林さんは豚まんの薄皮をはいで、そこからソースを注入する派ですか。それとも豚まんをまっぷたつに割って、皿になみなみと注いだソースに圧着吸収させる派ですか。天満橋の松坂屋があったころ、地下1階の蓬莱で観察したのですが、注入派と圧着派が拮抗しておりました。
こんな味で楽しんでおられる方も。
XO醤、一時爆発的にはやりましたね。でも今では冷蔵庫に埋もれているお宅もあるかしれません。一度冷蔵庫の隅をあさってみてください。出てきたら肉まんで試してください。大阪のソースに勝てるでしょうか。
豚まん、肉まんに何をつけるかではなく、そもそも何もつけない派が当然いる。
ところが最近ある所で中華まんを出された。肉まん(と言っていた)だった。食べ始めてしばらくして三重県出身のその家の人が慌てて醤油とお酢をもってこられた。が、一緒に食べていた福島県、栃木県出身の人たちも私も誰も何もつけないで食べた……別の機会には長崎のブタの角煮を挟んだ中華まんが出てきたが、先ほどの方がまたまた慌てて醤油とお酢、練り辛子を持ってこられた。が、角煮が柔らかくおいしく煮込んであったせいか、何、コレって感じで誰も何もつけずに食べた。私にとって中華まんに何かをつけて食べるということ自体驚きだった(広島県人@三茶さん)
無理にとは言いませんが、一度酢醤油を試して……。
その他ネタ。
余談ですがこの「たけのこ」はクマの大好物で、毎年たけのこ採りに行ったヒトが何人が必ず襲われます。それでもたけのこ採り人、たけのこ採りを至上のヨロコビとする人々は、クマの恐怖よりもたけのこの魅力の方が大きいらしく、入山料1,000円を払って(山の中を取り立て人が巡回しているのです)たけのこを採りに行っています。一昨年はたけのこ60kg!を背負った老人が崖からころがり落ちて両足を骨折するという笑えない事故も起きています……採ったたけのこは地元の市で売ったり、知り合いに分けたり自分で食べたりしますが、一番の楽しみは「それで自家製のカンヅメを作ること」だそうです。カンヅメにしたたけのこは、正月などに煮付けにして供されます(秋田県 主婦 電改め銀河さん)
HNを変更されたのは私が拙著の中で似ているけど違う字で紹介してしまったからです。ごめんなさい。メールをコピーせずに一部打ち直していたので読み違ったようです。歯も悪いが目も悪い。
ところで秋田のたけのこは小さくてかわいくて軟らかそうですね。命懸けで採りに行くくらいですから、よほどおいしいのでしょう。春になったら食べてみたいなあ。
孟宗竹のたけのこも採れるのでしょうが、ちっこいたけのこを偏愛するのもまた方言かもしれません。
チャンポンをラーメンと呼んでいる店があるくらいですから、世の中何があっても驚いてはいられません。でも問題はお父さんが「うどん」を念頭に置いて「そばを作ってくれ」と言い、お母さんはその声に「そば」が頭に浮かんで「そば」を作った場合、どんな問題が起きるかという問題です。
お馬さん情報。久留米の百武さんから「久留米の有名な焼き肉店でレバ刺しを注文すると馬レバが出てきます」、シンガポールの星のあいすさんと高知のNAKATANIさんから「中国では馬は食べない」、ニュージーランドのYUKESさんから「NZの彼氏は馬は絶対に食べない。NZ人の同僚も食べない。でもおフランス人の同僚は生でも食べると軽く答えた」という内容のメールをいただいた。
そうです。イタリアに新潟の焼きそばイタリアンがないのは有名な話です。ナポリにスパゲティナポリタンがないのもよく知られたことです。九州にチャンポンラーメンがないのも有名な話です。あったらいかーん。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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