豚の骨付きカルビ したたる脂、ビールの供に新しい風
グルメのまち 福岡・久留米をゆく(4)
やきとり、ギョウザでビール、屋台の後は、シメにとんこつラーメン…伝統的な「飲んべえのはしご酒」に、今、久留米で新風が吹いている。急速に人気を高めている「骨付きカルビ」だ。
かつてはやきとりの1メニュー的な扱いだったが、提供する店が増え、今や久留米の夜を代表するご当地グルメのひとつになりつつある。
焼肉店で誕生したメニューだが、肉は牛ではなく豚。テーブルではなく、厨房で焼く。たれに漬け込んだ肉を焼き網にのせると、したたる脂で焼き台は瞬く間に煙に包まれる。
やきとり同様、キャベツと一緒に皿に盛る。辛さ控えめの韓国唐辛子をたっぷり添えて、手づかみでかぶりつく。
口の中にあふれる脂とたれが渾然一体となったうまみ…。それをビールで洗い流したら、またガブり。ボリューム満点で、ジョッキ1杯ではとても食べきれない。
新興勢力の一方で、今なお屋台人気が根強い九州でも、その人気に陰りが出始めている。
久留米のメインストリート・明治通りの歩道は車がすれ違えるほど広い。そこには屋台用の上下水道が整備され、電源も引かれている。夜になると屋台が並ぶのだ。
小頭町公園前の人気屋台「武ちゃん」は、ちゃんぽんが看板メニュー。強い火力で具を一気にいためるのがおいしさの秘訣で、屋台が火事になってしまうのでは思うほど、盛大に炎を上げて調理する。
すりおろした芋をホットケーキのように鉄板焼きにする山芋ステーキなどつまみメニューも豊富。
冬になれば、屋台に横付けされたテーブルに布団がかけられ、こたつ席になる。春菊のおでんを肴に焼酎のお湯割りをあおれば、体の芯まで暖まる。
しかし、有名なうなぎ専門屋台が店を閉じるなど、久留米の屋台は寂しくなりつつある。ぜひとも守っていってほしいと願う一方、「骨付きカルビ」には、とんこつラーメン同様、久留米を代表する全国区の人気メニューに育ってほしいものだ。
(渡辺智哉)
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