つくねの誘惑 肉汁じゅわ、ナンコツこりっ、香るネギ
つくねは自由だ。
そもそもマナーやルールなどあまり必要としない焼き鳥の中にあって、つくねほど自由を謳歌している串はあるまい。
せせり、砂肝、ねぎまなど他の部位は、下ごしらえの仕方や串の刺し方など各店舗の工夫はあっても、見た目にさほどの違いはない。
ところがつくねはどうだ。共通しているのは「ひき肉である」ということだけ。それ以外はカタチも食感も味わいも、まったくのフリーダムなんである。
ではつくねとはいったい何か。その名前は「手でこねてかたちを作る、まとめる、丸める」という意味の「つくねる(捏ねる)」からきている。
土をつくねれば土器が、粉をつくねればうどんができる。つくね芋は、まるで手でつくねたようなそのかたちから名付けられた。つまり肉をこねて整形したら、つくねを名乗っても許されるのだ。
つくねというと、3つの団子が串に刺さった状態を思い浮かべる人が多いかもしれない。コンビニやデパ地下で買えるのもだいたいがこれ。まさに日本つくねのスタンダード形といえるが、同じように見えてその内容は様々。
ひとつが赤ちゃんのこぶしくらいありそうな重量級団子もあれば、サクサク3本くらいペロリといけてしまうそら豆サイズもある。かたちもまん丸だったり、平べったかったりと色々である。
肉汁派なら、棒状つくねを選びたい。
肉汁が閉じ込められやすい形状のため、よくよく注意してかじらないと大変なことになる。特に生からじっくり焼き上げるタイプは危険だ。
同じ棒状といってもよく見ると、金の延べ棒型やアメリカンドッグ型、五平餅型などいろいろあるのが楽しい。
満足度で選ぶなら、円板型もいい。串には刺さってないが、これもまたつくねである。
まるでハンバーグのように見えても、コリコリしたナンコツや、ショウガやネギの風味が確かなつくね感を醸し出す。
ニラやシソ、チーズなど味わいも色々。
極めてレアではあるが、冷たいつくねや生つくねも存在する。このバリエーションの多さが、つくねの人気のほどを表しているだろう。
(食ライター じろまるいずみ)
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