とんこつラーメン発祥物語 創作で誕生、失敗で定番に
グルメのまち 福岡・久留米をゆく(1)
福岡県久留米市。県内では福岡市、北九州市に次ぐ規模を誇る筑後の中心都市だ。ブリヂストンはじめゴム産業で栄え、青木繁、坂本繁二郎、古賀春江ら近代日本美術を代表する洋画家を輩出、近年では、作曲家・中村八大や松田聖子、チェッカーズの藤井兄弟らの出身地としても知られる。
実は久留米、「とんこつラーメン発祥の地」でもある。
1937(昭和12)年に屋台「南京千両」が、関東のラーメンと長崎ちゃんぽんの豚骨出しのスープを融合させて創業。この創作ラーメンが人気を呼び、やがて周辺都市へと広がっていく。
広まる過程で、たまたま火加減を誤り、白濁させてしまった「失敗作」が、その後のとんこつラーメンのスタンダードになる。
とんこつラーメンというと濃厚・どろどろのイメージだが、久留米ではあっさり系が人気。「食堂系」と呼ばれる、店名に「食堂」が入った店にそれが多い。
代表格といえるのが「沖食堂」。あっさりしたスープはうまみが強く、最後の一滴まで飲み干したくなる。丼の底に姿を現す粉々になった豚骨の残骸が、うまさの証だ。
豆ごはんのおにぎりは、定番のサイドメニュー。シンプルな塩味が、あっさりのスープによく合う。
もちろん、濃厚なスープもある。九州の大幹線・国道3号線沿いに店を構える「国道系」と呼ばれる店だ。
24時間営業で、昼夜問わずハンドルを握るトラックドライバーの栄養補給の使命を担う。「丸星中華そばセンター」や県境を越えた佐賀・基山にある「丸幸ラーメンセンター」は、いずれも国道沿いに広大な駐車場を持つ。
自動販売機でチケットを買えば、トッピングなどを腹具合に応じてアレンジできる。久留米ラーメンでは一般的でない替え玉も「国道系」では可能だ。
「食堂系」「国道系」以外にも多くの人気店がしのぎを削っていて、久留米ラーメンのレベルは高い。やきとり、ギョウザ、屋台など、地元ならではのグルメをはしごしたシメに、ラーメンをすするのも、久留米の醍醐味といえるだろう。
(渡辺智哉)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界