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毎日でも飽きない、御飯は日本人の魂 御飯、汁、香物

京都「木乃婦」3代目若主人 高橋拓児

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NIKKEI STYLE

御飯って不思議だと思いませんか?

そばやうどんが毎食続いたら飽きてしまいますが、白御飯だったら毎日飽きることなく、食せるのではないでしょうか。最近では、玄米御飯や麦を白米に入れている人や、五穀米などを食している方も増えてきたように思います。ですが、ほとんどの方は白米でしょう。

毎食御飯を食べても飽きない日本人

毎日同じ味を食べ、そして、私はコシヒカリがよいとか、いや私はミルキークイーンだとか、そうではないひとめぼれだとか、細かい味の違いを感じとり、それぞれ自分の好きな米の品種があります。さらに、産地はやれ新潟だ、富山だ、丹後だと言い、挙げ句の果てには、新潟の南魚沼の十日町地区などとまで、細かく指定しだします。こだわる人たちは、無農薬・減農薬で、天日干しが一番などと、製法も追求する始末です。ほかの食材では考えられないようなこだわりようです。

炊飯器についても、電子ジャーながら職人の黒打ち釜とか、200℃の高温の蒸気を当てて仕上げるだとかさまざまな機能が付加され、それに何万円も払うという状況になっています。そして、それで美味しく炊けたときには「やっぱり全然違う! 外は硬くて中は柔らかく、とても甘い!!」とたいへん感激します。パンやパスタでは、あまりこのようなことはないのではないでしょうか。ほかの国の人から見るとまさに不思議な食習慣でしょう。

世界でも米を主食にしている国はありますが、そこまでこだわっているのでしょうか。日本人と米の関係を探っていきましょう。

米はなぜ、日本人の食卓と精神に深く定着していったのか

日本人の主食は雑食から米食、玄米食から白米食、蒸飯から炊飯へと長い時代をかけて変化を遂げてきました。ここで米の調理法の変遷についてご紹介しましょう。

縄文時代より土器が使われるようになると、煮炊きが始まりました。やがてカメと蒸し器のようなコシという調理道具を竈に置いて、米を蒸して飯が作られるようになります。

弥生時代になると、すでに炊き干し法も生み出されていたと考えられていますが、湯取り法で姫飯と呼ばれる硬く煮た粥も作られました。これは現在のように炊いた飯のようなものです。

古墳時代には糯米、または粳米を蒸したものである強飯が食べられるようになりました。また、強飯を乾燥させた乾飯という保存食も生まれ、水や湯で戻して食べていました。時代はくだって平安時代には水飯や湯飯という、強飯に水や湯をかけた飯もありました。

長い時代にわたって米を常食できたのは貴族や僧侶、武士のみで、庶民は雑穀を混ぜたものを常食していました。しかし、鎌倉時代になると荘園制のもとで農業が発達した結果、米の収穫量が増え、食事は米食という観念も確立されていきました。

鎌倉時代および室町時代は米の精米も行われていましたが、多くは現在の白米のように完全に精米されてはおらず、黒米と呼ばれる玄米または半搗米の状態でした。また、姫飯の常食化が進んでいくにつれ、強飯は儀式のための食事となっていきました。

安土桃山時代になると、それまでの玄米食に代わって白米食がいよいよ定着していき、江戸時代になると主食は白米、精白米が増えていきました。また炊いた米を乾燥させた保存食の糒などもありましたが、これは粗挽きにされ道明寺粉として菓子に使われるようになりました。

江戸時代には米を炊飯する「炊き干し法」が確立して「始めひょろひょろ、中パッパッ、……赤子泣くとも蓋とるな」という加熱のコツについての歌が生まれるほどになります。これは現代から見ても理にかなった調理法です。

なぜ米は日本人の生活に、これほど深く定着しているのでしょうか。

この特異なまでの執着は、エネルギー源として炭水化物が必要であったからというような理由からではなく、日本人が米に対して持つ、絶対的な揺るぎない価値観の産物です。

米は古く縄文時代の頃から、日本人の食生活に組みこまれてきました。平安時代の荘園制に始まり2世紀あまり前の江戸時代にいたるまで、領主や大名が人々に課した年貢は、絹などで納められることもありましたが、たいていは米によって支払われました。日本人は長く領主、あるいは国への税金を米で支払ってきたのです。

つまり米の栽培・貢納は、日本という独立した国家を形成するためのたいへん重要な基層施策であり、これが日本人を協調性のある民族に育てあげたと言えると思います。それと同時に、長く続く伝統を大切にし、それを確実に守り伝えていくという民族性が徐々に創りあげられていったのです。お米は、続けていくことの大切さを教えてくれる大切な日本人の魂なのです。

だからこそ、米の種類・品質・産地・栽培方法・風味・炊飯・茶碗・箸等の細部までこだわりが生まれました。その小さな違いが、日本人のそれぞれの個性・人格に現れ、日本人全体の骨格となり民族性となっているように、私は思います。

文化とは一代で完成し終わることなどなく、世代を超えて長期的に育まれていくものです。さらに言えば、自分の人生は自分の生を満喫するだけのためにあるものではなく、祖父母・父母が後世に伝えたがっていた想いを受け継ぎ、それを自身で体得して自分の人生に映し出し、それを自分の子どもに伝え、孫を見守り、その意思を次の代へとつないでいくためのものでもあります。平凡ではありますがなかなかできない、できないけれどもそうして文化が守られていくと、心からそう思います。

米は、そのような心をつないでくれるものだと思います。日本人の魂が御飯という形のあるものに姿を変えて、日本人の心の奥底まで深く深く浸透しているのです。脈々と続くこの文化を考えると、米のひとつぶひとつぶでさえ、粗末にすることはできません。

[「10品でわかる日本料理」(日本経済新聞出版社)から抜粋]

高橋拓児(たかはし・たくじ)

1968年京都生まれ。大学卒業後5年間「東京吉兆」での修業の後、実家である京都の老舗料理店「木乃婦(きのぶ)」の3代目若主人に。シニアソムリエ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。

木乃婦HP=http://www.kinobu.co.jp/

10品でわかる日本料理

著者 : 高橋拓児
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,620円 (税込み)

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