VAIOが格安ノートパソコン 15インチ画面で8万円以下
戸田覚の最新デジタル機器レビュー
高級モバイルノートの印象が強いパソコンメーカーVAIO(長野県安曇野市)だが、これまでも15インチクラスのスタンダードモデルをリリースしてきた。とはいえ、やはり少々割高感があった。最近はHPやレノボ、デルなど海外勢のパソコンが非常に安く、「VAIOは欲しいけど高い」と思っている方も多いだろう。
そうしたところに今回「VAIO FL15(以下、VAIO FL)」が投入された。画面サイズはスタンダードな15.6インチで、価格はなんと7万9200円からだ。もちろん税込み価格なので、とても割安に感じる。非常に興味深いモデルなので詳しくレビューしていこう。
VAIOらしいデザインと軽量ボディー
VAIO FLは、15.6インチのスタンダードなノートパソコンだ。パソコンのなかでも、最も売れているカテゴリーで、基本的には持ち運ぶのではなく、机に据え置いて使うタイプになる。自宅や会社でメインマシンとして使うのに向く。
このサイズの製品は各メーカーからリリースされており、手ごろな価格のモデルから高性能・高価格モデルまで幅広い。そうしたなかでVAIO FLの特徴は、スリムでスタイリッシュなことだろう。DVDなどの光学ドライブを省くことで、本体を厚さを20.5ミリと薄型に仕上げている。重さも大画面ノートとしては、比較的軽量な1.85キロに抑えた。外に持ち出すのには向かないが、家の中や会社内で移動しながら使うには十分だ。
本体の形状もVAIOらしい。他のVAIOシリーズと同じく、ディスプレーを開くとキーボードの後部がせり上がる。手首が打ちやすい角度になってタイピングできる。
メインマシンとして不足ない拡張性
拡張性は普通に使うには十分だろう。USB-A端子を2つ、USB-C端子を1つ、HDMI端子、ヘッドフォン端子、microSDカードスロットを備えている。前記のように光学ドライブは搭載しない。
このサイズのノートは、以前はさまざまな端子を「満載」するのが普通だったが、最近は少し抑え気味になってきた。多くの周辺機器がワイヤレスで使えるようになったので、端子数はこの程度で不満はないだろう。
価格性能比の高いAMD製CPUを搭載
気になるのが性能だが、CPU(中央演算処理装置)は米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)の「Ryzen 3 4300U」だ。VAIOとしては初めてだが、Ryzenは最近の格安モデルでは当たり前のように採用されている。AMDのRyzenは価格の割に性能が高いこともあり、最近評価が急上昇している。
実際に使ってみても、「遅い」と感じることはほとんどないだろう。ベンチマークテストのスコアを見ると、米Intel(インテル)の第8世代CPU「Core i5」と同程度のパフォーマンスとみてよさそうだ。価格を考えると性能は文句なしだ。同じくインテルのCeleronを搭載している格安モデルよりは、パフォーマンスが高く、長い期間快適に使えるはずだ。なお、Windows 11へのアップグレードにも対応する。
メモリーは8ギガバイト(ギガは10億、GB)、ストレージは256GBのSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)だ。こちらはやや妥協している部分だが、動画編集などをしなければ不足を感じることはないだろう。ストレージ容量が足りなければ、マイクロソフトのOneDrive」などのクラウドストレージと併用すればよい。
キー配列が少し惜しい
キーボードはサイズが大きく打ちやすいが、ストロークが若干浅い。また、矢印キーが下がっていない配列なのがちょっと残念だ。キーボードの下辺が一直線になる見た目に美しいデザインなのだが、Excelなどで矢印キーを多用するとちょっと打ちづらい。
タッチパッドは大型で、左右のクリックボタンを備える。使い勝手が良く好ましい。
大きなディスプレーを備えた使い勝手の良いモデルが欲しいが、性能はホドホドで構わない――VAIO FLはそうしたライトユースのユーザーに適した製品だ。価格はかなり割安に感じる。
もちろん探せば似たような性能でより安い製品もあるだろうが、VAIOというブランドの価値を考えると十分魅力的だ。デザインも上々なので、「安っぽいパソコンを使っている」という印象はない。これが、VAIO FLの最大の強みだろう。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は150点以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
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