ミニ四駆、元少年が「レーサー」復帰 大会白熱
バーに全長140メートルのコース
14日午後7時、18席あるバー「Hideaway garage(ハイドアウェイ ガレージ)」(東京・杉並)は開店から約1時間で満席になった。同店は店内の中心に全長約140メートルのミニ四駆のコースを設置。来店客は2千円を支払えば焼酎やウイスキーなどが飲み放題な上、ミニ四駆を好きなだけ走らせることができる。
タイヤやモーターなどミニ四駆の関連パーツも販売しているほか、ミニ四駆を組み立てるのに必要な工具なども無料で貸し出しており、手ぶらで訪れても楽しむことができる。同店の吉村龍也オーナーによると「休日だけではなく、平日でも連日ほぼ満席」となるほど盛況だ。愛好者たちが酒を飲みながら、ミニ四駆の話題で盛り上がる。
同日、友人と訪れていた東京都品川区の男性会社員(26)はすでにタイヤやローラーなど改造費に5千円以上を投じたといい、「小学生時代とは違って、社会人でお金に余裕もあるので、昔買えなかったパーツなどついつい衝動買いをしてしまう」とすっかり童心に返っていた。
ミニ四駆はプラモデル大手のタミヤ(静岡市)が1982年に発売した電池で走るモーター付きのプラモデル。モーターと単3電池2本を取り付けて走らせ、速さを競う。車体に穴を開けて軽くしたり、強力なモーターをつけたり、コースに合わせてタイヤを交換したりと約400種類以上の部品からスピードを上げるために自分なりの改造ができるのが特徴だ。
一台600円からと低価格な点も消費者に受け入れられ、ミニ四駆をテーマにした漫画やアニメなどが人気を集めた80年代後半や90年代後半には一部の学校で持ち込みが禁止されるなど社会現象を巻き起こした。
13年ぶりに全国大会復活
再ブレイクのきっかけは2012年に全国大会であるジャパンカップを13年ぶりに復活させ、大人でも参加できる「オープンクラス」を設けたことだ。
かつて小学生としてブームを経験した20~30代の消費者が参加できるようになったことで人気が再燃。同大会の参加者は13年に2万人と前年から倍増し、14年も2万5千人程度の参加者を見込む。
また1月からは小学3年生以下の子どもを対象にした「ファミリークラス」を新設。これまではミニ四駆を参加者が自分で作ることが条件だったが、同クラスでは親と一緒に作っても大会に参加できるようにした。「自分の子どもと一緒に親子でミニ四駆を楽しんでもらう」(営業部催事課の満園紀尚主任)のが狙いだ。
22日、東京都品川区で開かれた全国大会の予選会「ミニ四駆ジャパンカップ2014 東京大会」には2千人を超える参加者が集合した。小学校3年生の長男(9)と一緒に参加した埼玉県東松山市の男性会社員(36)は「子どもと一緒に、ミニ四駆の改造を考えるのは楽しい。前回は予選落ちだったので、今回は予選突破を目指したい」と意気込んでいた。
80年代、90年代に次ぐ「第3次ブーム」の勢い
また商店街にある玩具店などを対象にミニ四駆の大会を開催することができるタミヤの加盟店「ミニ四駆ステーション」の店舗数も約400店と12年から2倍以上に増加。気軽に競技に参加できる環境が整ったことも人気を後押しする。
タミヤによると、ミニ四駆関連の売上高は13年度は前年比6割増。14年度に入っても同50~60%増と前年を大きく上回っており、80年代や90年代に次ぐ「第3次ブーム」が巻き起こる可能性もある。
低迷期を脱して再び脚光を浴び始めたミニ四駆。友人と一緒に夢中になってスピードを競った小学生時代を思い出しながら、レースの世界に再び足を踏み入れる「ミニ四駆レーサー」たちは今後も増えそうだ。(篠原英樹)
[日経MJ2014年6月25日掲載]
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